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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 2章 『尾張国を飛び出して』
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第81話 尾張帰還と4人の友情

 信玄と政虎の一騎打ちを見届け満足した俺たちは尾張への帰路についた。ルートは来た道同様、メンバーが4人増えていること以外何も変わったことはない。

 帰り道の話題はもっぱら川中島の戦いのことだ。俺のスパイの話、妻女山での上杉軍の人たちと話したこと。利家は俺がスパイ任務を行っている間、上杉の武将たちに稽古をつけてもらっていたらしい。戦闘面では北条高広や宇佐美定満、本庄繁長、村上義清など。戦略面では柿崎景家や北条高広。北条高広とはだいぶ仲良くなったらしい。また、政虎もたまに稽古に参加していろいろと教えてくれたらしい。だが、戦闘面でも戦略面も敵わないと感じたと言っていた。


 日本海沿いを進み、行くときに利家が問題を起こした近江の浅井本拠地・小谷も今回は特に問題を起こすことなく通過した。そして大垣を抜けて実に3週間ぶりに尾張に帰ってきた。


「何だか町が騒がしいですね」

「だな、何かあったのかな?」

 

 清洲の町は何やら騒がしい様子。何かあったのだろうか。

 そんなことを考えていると城の方から滝川一益が馬に乗って走ってくる。


「大助殿! 利家殿! 戻られたと聞いて……!」

「一益殿!! 何やら騒がしい様子ですが?」

「はい。今、三河の松平元康が清洲城に来ているのです」

「竹千代が!?」

「ああ、お二人は元康殿とお知り合いでしたな。何やら元康殿は織田との同盟を望んでいるようですよ」

「そういえば桶狭間の戦いの後に竹千代が今川から独立したという報告は入っていたが……そうか、こう動くか」

「同盟か。いいじゃん! またあの頃みたいに4人で話せるかも。とりあえず行こうぜ! 利家!」

「ああ、竹千代はどんな風に成長しているかな?」

「楽しみだな。ということで俺たちちょっと城に行ってくるよ。祈は4人を連れて屋敷に先に戻っててくれるか? そいつらは彦三郎に俺が連れてきたって言えば何とかなると思う」

「わかりました。祈にお任せください」


 俺と利家は10年以上ぶりに会う友達との再会に心躍らせ、清洲城に小走りで向かった。



「では、細かいことは後々決めるとしよう。元康殿」

「はい、信長殿」

「竹千代はここですか!?」

「おい待て大助!! 居たとしてもいきなりは……」

「「「あ」」」


 信長と元康の同盟についての話がひと段落着いたのと同時に障子が開き、大助と利家の二人が会議室に乱入してくる。


「おい! お前ら! 会議中だぞ!!」

「「すみません」」


 当然のように信長に怒られた。部屋にいたのは信長と成長した竹千代、のはず。ちょっと雰囲気が変わったかな。12年ぶりだから当然だが。


「まあまあ、今ちょうどひと段落したところですし。千代松に利家、だよね? 久しぶり」

「竹千代、だよな?」

「もう違うよ。今は松平元康って名乗ってる。改めてよろしくね。二人とも」

「俺も今は坂井大助って名乗ってる。よろしく、元康」

「バカか!! 元康殿はもう立派な三河の大名だぞ!! 俺達よりも偉いんだ。ちゃんと頭下げろ!!」


 利家に強引に頭を下げさせられる。そうなのか、まあ信長に服従じゃなくて対等な同盟を結びに来たんだからそりゃあそうだよね。


「い、いや、いいよそんなの。また普通に話そう」

「ほら、竹千代、じゃなくて元康もそう言ってるし」

「で、でもなぁ……」

「いいじゃん。元康がいいって言ってんだから。友達との会話に敬語とか取り入れてたら変な距離空いちゃうぞ」

「……だな。改めてよろしく、元康」

「うん! よろしくね、二人とも」


 何年たっても俺たちの友情は変わらない。それを実感した瞬間だった。

 その後は信長も交えて4人で話をした。話すのはもっぱら昔のこと。俺に初めて会ったとき、小屋に入ろうとしたらいきなり爆発して驚いたとか、一緒に一巴先生に銃を習ったこととか。他にも沼の水全部抜いた話とか真冬の川遊びとかとにかくたくさんだ。話したいことはいくらでもあった。俺たちは太陽が西に沈み、空が完全に真っ暗になるまで思い出話に花を咲かせた。


「あー! すごい楽しかった! こんなのは久しぶりだよ」


 信長と利家は疲れていびきをかいて寝てしまった。俺と元康はここで寝るわけにはいかないので城を出ようと立ち上がったところで、元康が伸びをしながらそう言った。


「俺もだ。いろいろ懐かしいな」

「だね。でも話してる限り大助はあんま変わってないね」

「そうか?」

「そうだよ、銃が大好きな所とか特にね」

「それは多分一生変わんないよ。元康は結構変わったよな」

「そう?」

「ああ、昔は会話が成り立たないことも多かったけど今はそんなことも無いし、なんというか……接しやすくなった」

 

 一言で言うと陰キャって感じが薄れた。


「今川の人質の時に太源雪斎っていう人がいてね。その人が言ってたんだ。「声に不安が乗るとその不安がそれを聞いた人にも伝播する。逆に自信や余裕があればそれが声に乗り、伝播する」ってね。だから余裕と自信のある武将になれるように頑張ったんだ。いや、演じているっていう方が近いかも」

「なるほどね、それで今は三河一国を治める大名か~!」

「ふふん、そうだよ? 結構頑張ったんだ」

「すごいな、元康は」


 心の底からの言葉だった。長い人質生活、大変な思いをして生きてきたのだろう。苦労しただろう。それが元康にどんな影響を与えたのだろうか。少なくとも尾張で一緒に暮らした2年間が元康にとって苦痛でなかったと信じたい。


「大助もだよ。伊賀の忍びの里で修業してきたんでしょ? きっと今、剣で試合したら負けちゃうな」

「そういえばリベンジしないとだったな」

「ふふっ、そうだね。今度やろう」

「じゃあ明日にでも……」

「いや、明日は大助にあわせたい人がいるんだ」


 あわせたい人? 誰だろう。全く心当たりがないが。


「誰?」

「それはあってからのお楽しみ」

 



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