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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第一部 2章 『尾張統一と桶狭間』
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第55話 浮野の戦い (8)

 敵の背を討つべく、俺と大吾、そしてその兵たちが必死に馬を走らせる。

「殿!! 左方より軍が!!」

「え!? いや、あれは敵じゃない。右翼の一益殿だ。ちょっと行ってくる」

 そう言って左方から近づいてくる一益隊の方へ馬を逸らす。それとほぼ同時にあっちからも一騎出てきた。

「一益殿!!」

「大助殿!!ご無事でしたか」

「ええ、まさかそっちも敵軍に突撃するとは」

「それが最善手だと思ったのです。ですが両翼とも出てしまっては長秀殿の負担が大きすぎる。ちゃんと連絡すべきでしたね」

「ええ、実際そのせいでああなっていますし」

 信長本陣の方を見る。敵に襲われ、乱戦になっているようだ。

「ええ、私たちの失態です。結果的に本陣を薄くして叩くと言う敵の策に嵌ったようなものですから」

「ですが収穫もある。でしょう?」

「ええ、ハイリスクハイリターンです。私の方は敵将は取れませんでしたが」

この場合のリスクは本陣を薄くすること。リターンは敵将の首だ。

 っていうかハイリスクハイリターンって・・・・・・、そういえばギャンブラーだとか言ってたな。

「こっちは取りました。それより早くリスクの方を助けに行きましょう」

「ええ、では軍を合流させて突っ込みましょう」

「了解です。先頭は俺がやります」

「私も前に出ます。強い人を前に固めて後ろが続きやすくしましょう」

「了解です」

 俺は一度軍に戻ると大吾に指示を出す。

「大吾、これからあの軍と合流する!! できるだけ強いやつを前に出してくれ!!」

「おう!任せとけ!」

 坂井大助隊と滝川一益隊は信長救出のため連合軍となって敵の後方から攻めかかる。

「ちなみに織田信賢はどのあたりにいるんでしょうか?」

「そうですね、おそらく第三陣の中央か、もしくは第一陣の先頭のどちらかでしょう。こればかりは武将の特性によりますからね。中で指揮を取るか、先頭に立って戦うか。私は織田信賢に会ったことがないのでわかりません」

「そうですか、できれば第三陣にいてくれると楽ですね。勢いのあるまま突っ込んで討ち取れたらそこで勝利が確定する」

「ええ、ですが1番は信長様の救出です。その事を努努ゆめゆめ忘れないよう」

「もちろんです」

「さあ、もうそろそろです。準備はいいですか?」

「おう!」


「接敵します!!」

 正面で盾を構えている敵に向けて引き金を引いた。

パァァァーーーン!!

「いまだ!突き崩せッ!!」

 俺が銃で撃ってできた穴を一益が矛を振るって大きく広げる。そこに俺と一益の連合軍が雪崩れ込んだ。


 ___________________________________


「信長様!! 敵の後方で砂煙が!!」

 再び戦闘開始してからすこし経った頃、信長のもとに一つの吉報が届く。

「あれは、大助か!!」

「一益殿もいるようですね」

 それは坂井大助、滝川一益が敵の後方を攻撃し始めた合図だった。

「やっときたか! お前ら!! もう少しだけ持ち堪えろ!! すぐに大助と一益が来てくれる!!」

 そう兵たちに檄を飛ばしながら敵を斬る信長。だが大将自ら戦ってる時点で相当追い詰められているのは言うまでもない。

「殿は下がってください!!」

「ここは僕たちが!!」

「駄目だ!! ここで俺が下がったら士気が落ちる」

「士気よりも、殿の御身の方が大事です!! 下がってください!!」

「黙れ!! 俺は戦うぞ!! お前らは黙って俺について来い!! 今から俺たちは大助たちの方向へ前進する!!」

「え!? ここで待つのでは駄目なのですか?」

「このままでは俺たちは大助たちが来るまで耐えられん。いち早く合流せねば」

 利家は考える。確かにこの状況は厳しいが、前は敵だらけ。前進する危険度はここに留まる比ではない。ならここで信長様だけを死ぬ気で守った方が良いのではないか。

 だが信長様は俺に黙ってついて来いといった。主について行くのは家臣の役目。それに俺は信長様に一生ついて行くと決めたではないか。結論は出た。覚悟を決めて残り少なくなった自分の隊に指示を出す。

「利家隊!! 信長様に続け!! 俺達で信長様をお守りする!!」

 それに続き橋本一巴、森可成も同様の指示を出す。皆、覚悟は決まったようだ。

「旗を掲げろ!! あるだけ全部だ!!」

 織田家の家紋である織田瓜の旗を掲げる。大助が見つけられるように。

「行くぞ!! 突撃だ!!」

「「おおおぉぉぉ!!」」

 信長の指示でわずか数百の信長本軍が突撃を開始する。その少なくも、圧倒的な存在感を放つ軍はいわば戦場の”主役”のような輝きで信賢軍の奥に切り込んでいった。


______________________________________


「そろそろ、行くかのう」

「はっ。して、どちらの味方をされるのですかな?」

「……信長につくしかあるまい。信安は追い出され、盛豊は討たれた。あれでは織田伊勢守家は立ち行かん。信賢もバカやりおったのう。伊勢守家は信安がおったから成り立っておったというのに」

「信賢殿がこの戦いで信長殿を討って尾張を手に入れる可能性は?」

「ない。たとえ信長を討ったとしても弾正忠家には信行がおる。それに……」

「それに?」

「信長はそう簡単に討たれん。あやつはうつけだなんだと騒がれておるが正真正銘のバケモノじゃ。その証拠にあの信秀が信行という優秀な息子もおる中で信長を嫡男から変えようとしなかった」

「なるほど」

「じゃが」

「?」

「あやつはまだ化けてはおらん。今ならまだ討てる。この戦で信長は勝つが、その軍力は大きく削れることになる。そして信長が弱ったその時こそが一世一代の好機じゃ」

「つまり?」

「この儂!! 織田信清が尾張を取る!! 信長よ、首を洗って待っておれ!! がっはっは!!」

 犬山城主、織田信清。この男と1000の軍勢が浮野の戦いに乱入する。

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