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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第一部 1章 『少年期千代松の修行編』
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第31話 また会う時は

別れのシーンはそう長引かせるつもりはなかったのですが1話分になってしまいました…

 翌日、早朝に村の入り口にたくさんの人が集まっていた。

「みんな、見送りありがとな」

 そう、俺と祈の見送りだ。丹波をはじめとした学校の仲間たちの他に里長の百地政永、さらには北の里の服部さくら、藤林保正まで来てくれていた。正直、北の上忍二人が来てくれたのは意外だった。

「お前たちも来てくれてたんだな。保正、さくら」

「ああ、俺はお前に言いたいことがあってきた」

「ん?なんだ?」

「今回は負けたけど次は負けねぇ!次に伊賀に来た時には俺が勝つから覚えとけよ?」

「ああ、またやろう!!」

「わたしも、またあなたと戦いたい。それまで負けたらだめ」

「ああ、任せろ」

「うん」


 保正と拳を軽くぶつけ合い、さくらは微笑んでうなずいた。



 次に話しかけてきたのは里長だった。


「千代松、どうじゃった?伊賀での生活は?」

「はい、おかげさまで大きく成長できた、たいへん充実した3年間でした」

「そうかそうか!お主のおかげで丹波も他の皆も大きく成長できた。儂も感謝しておるぞ」

「それはお互い様です。本当に3年間ありがとうございました!!」

「うむ。尾張でも達者でな」

「はい、里長もお元気で!」


「もみじ」


 俺は見送りに来てくれたのに目を合わせてくれないもみじに声をかける。

「ごめんな。あんな曖昧なことしか言えなくて。戻ってきたとき、お前の気持ちが変わってなかったら、その時は…」

「うん、わかってる。あたしはこの国で待ってる。ずっと、ずっと。だから絶対、帰ってきてね・・・!」

「あぁ!約束だ」

「約束・・・破ったら・・・」

「なんでも・・・」


 なんでもする。その言葉をさえぎってもみじは


「殺す」


 なんて物騒なことを・・・! 


「ああ、いいぜ?まあ、そうはならないだろうがな。信じて待っとけ」

「もちろん、あたしはちーくんを信じる」

 もみじは俺と目を合わせはっきりとそう言った。



「丹波、お前のおかげで俺はこの3年間楽しかった。ありがとな」

「ち、千代松」

「思えば俺は来た初日、お前にボコされて、お前に絶対勝とうと努力して、そのおかげで強くなった。お前と戦い続けて、でもなかなか勝てなくてもっと努力して、努力して、努力して、なのにお前はどんどん強くなって、憎たらしいと思った時もあったよ」

「うっ・・・」


 なんだよ丹波?男泣きか?でもやめないぜ?


「努力する天才。こんな厄介な奴はいないぜ?倒す相手がお前でマジで最悪で、最高だったよ」

「…っ、うぅ…」

「本当に、ありがとうな」

「っ……、ぅ……」

「あ、そうだ。お前に渡すものがある」

「ぇ?」

「これ、多分いつか役に立つと思う。受け取ってくれよ」


 そう言って俺が差し出したのはリボルバー型の拳銃。きっと丹波を守ってくれる。


「毎日練習しないといざって時に当たらないからちゃんとやれよ?」

「あぁ、ありがとう。千代松…!」

「あと…」


 俺は丹波を手招きしてヒソヒソ声で話す。

(もみじを、頼んだぞ…!)

 丹波は一瞬目を見開き、次の瞬間には顔を赤くする。

(お前っ!!なんでっ!?)

(バレバレなんだよ、お前は。ちなみに俺が次伊賀に来た時、お前がもみじを手に入れてなかったら俺がもみじを貰うからな。それまでには勇気出せよ。裏でコソコソやってるだけじゃもみじは手に入んねーぞ)

(っ!?な、なんでお前がもみじを手に入れられる前提なんだ!?)

(さぁな)

(おい!まじで…)


「あんたたちいつまでコソコソ話してんの!」

「「ふぁッ!?」」


 もみじの声に俺たちは二人揃って素っ頓狂な声を上げる。


「い、いやなんでもない」

「ああ、なんでもない!」

「ふーん」


 慌てて否定する男子二人に呆れたような目をするもみじ。

 もみじは続けて祈に声をかける。


「祈ちゃん。ちーくんのこと、よろしくね」

「もみじ様に言われるまでもありません」

「そう。ちなみに祈ちゃんは側室とかは許せる感じ?」

「・・・っ!?それはどういう??」

「答えて」

「…ご主人様が私を忘れなければ」

「そっか」


 もみじはそれを聞いて微笑んだ。これ丹波ほんとに大丈夫か?


「じゃあ、また会おうね!祈ちゃん!!」

「ちょ、さっきのはどういう??」

「秘密っ」


「丹波、頑張れよ」

「ああ」


 俺と丹波が腕をぶつけ合う。こういうの男の友情っぽくていいよね。


「あ、そうだ!剣聖!あいつしばらく俺のうちに住むみたいだからよろしく。あいつ面倒くさい奴だけどすげえやつだから」

「ほっほ、そう言ってもらえるのは嬉しいが儂はもう伊賀を発つぞ?」

「「え?」」

「京の室町将軍様に召集されてのう。儂も東海道までそなたらと行こうと思っておるがどうじゃ?」

「いや、それはいいんだけど」


 丹波も


「俺らも別にこいつがいてもあんま嬉しくないし別に連れてっていいよ」

「な!?」


 伊賀での自分の扱いがひどすぎる剣聖が変な声を上げる。


「着いてくるのでしたら薬味と雑草の区別くらいはつくようになったんですよね?」


 祈があの事件を掘り返す。


「な!?儂を雑用に使う気か!?」


 なんか聞いたことある台詞だな。



「じゃあそろそろ行くか」

「ああ」

「うむ」


 予定外の人員が一人増えたが問題ないだろう。馬にまたがり、3年過ごした里を振り返る。


「丹波!、もみじ!」

「千代松!、祈!」

「「「「またな!」」」」

 こうして俺たちは伊賀国・忍の里から旅立った。

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