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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 5章 『天下覇道』

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第239話 城の外と内の親友たち

 柏原城では伊賀勢が激しい抵抗を見せていた。百地丹波、植田光次という南の里の実力者たちがその実力をいかんなく発揮し、北の里から合流した服部保朝・藤林保正らも織田軍を激しく攻撃した。攻めていた筒井順慶・浅野長政は一時包囲を解かなければならない程、攻めあぐねていた。浅野長政は自らも負傷し、戦線復帰は厳しい。


 そんな中、服部保朝ら北の忍者衆が柏原城に到着した日から遅れること3日、ついに坂井大助が率いる3万の織田軍が到着した。さらに織田信雄の本軍も加わり4万の織田軍が柏原城を包囲する。

 


「これが正真正銘、最後の戦だ」


 柏原城を攻める各将が集まる軍議の場で俺はそう宣言する。ここを落とせば伊賀勢にもう拠点はなく、それは織田に抵抗する術が無くなることを意味している。


「この戦で伊賀勢を皆殺しにしてやりましょう!」

「信雄様のおっしゃる通り!」


 第一次天正伊賀の乱で伊賀勢に苦汁をなめさせられた信雄とこの前夜襲を受けた蒲生氏郷が伊賀勢の殲滅を主張する。だが俺にそんなつもりはない。


「俺は伊賀勢が降伏を申し出るなら受け入れるつもりだ」

「何故ですか、師匠!」

「何故って、無駄に戦ってこっちの犠牲を増やすことはないだろ? それにこの戦が終われば伊賀国は織田領だ。後々治めることになる国の民に恨まれるようなことはなるべくしない方がいい。反乱を起こされたら厄介だからな」


 さらに俺は投降兵と非戦闘員に危害を与えることの禁止を厳命する。拷問なんてしたところでどうせ伊賀者は何も話さない。時間の無駄だ。


「相手は後がない。死に物狂いで必死に防衛するはずだ。闇雲に戦えば撃退される。相手の誘いに乗るな。包囲を一切崩すなよ。時間をかけて丁寧に、なるべく犠牲を出さずに城を落とす! いいな?」

「「ハ!」」


 柏原城には非戦闘員も入っていると聞く。兵糧が先に尽きるのは伊賀勢だ。なんならこっちは伊勢や大和から新たに補給することもできる。伊賀勢は度々城から出てこちらにちょっかいをかけてくるだろうが、そんなものに乗ってやる必要はない。この戦はもう詰んでいる。


「では各々方、抜かりなく!」

「「おう!!」」


 俺がそう軍議を締めくくる。各将は持ち場に戻っていく。

 


「丹波……」


 俺は大量に松明がたかれた山上の城を見上げる。夜なのにもかかわらず柏原城は赤く光っている。そしてそこで抵抗を続ける親友の姿を想像し、彼が放った言葉を思い返す。


「俺は里長だ。伊賀の民を守る義務がある」

「俺はこの国を守り抜く」


「ここで死ぬつもりじゃないだろうな……」


 俺は何度も降伏を勧めた。全てはこんなことにならないようにする為だった。それを全て丹波は伊賀のためと断ってきた。ここで丹波たちが徹底抗戦するなら織田はそれに応じるしかない。その結果、伊賀勢は全滅することになる。ここで丹波たち伊賀忍者衆が全滅するのが伊賀のためなのか? 丹波が何を考えているのか俺にはわからない。

 ただ俺にできることは諦めずに降伏を勧める手紙を送り続けることだけ。信長様は俺が必ずとりなして見せる。だから丹波、早く降伏しろ。死ぬな。



「ちーくんはなんて?」

「城内の戦闘員、非戦闘員、指揮官にかかわらず全員の命を助けるから城を明け渡して降伏しろってさ」


 寝所で千代松、坂井大助からの手紙を開いた丹波はもみじにそう答える。なんで手紙を見るのが寝所かというと、広間では徹底抗戦派の意見が強く降伏なんて以ての外とうるさい連中がいるのだ。


「まだ降伏する気はないの? ちーくんならあたしたちの事、悪いようにはしないと思うけど」

「そんなことはわかってる。千代松は誰よりも織田と伊賀の間を何とかしようとしてきた。信用できないわけがない」


 その申し出を全て断ってきたのは丹波自身だ。そのうちに織田はどんどん強大化し、とても伊賀勢では太刀打ちできない程になってしまった。他国からの依頼が受けられなくなることを恐れた丹波の判断ミスだ。そして今はもう他国からの依頼とかそんなことを言っている場合ではない。どうやって伊賀衆を生かすか、それだけを考えなくてはならない。そしてその目的は織田へ降伏すれば達成される。


「でもそれに反対してんのが……」

「政永様、だもんね……」


 丹波が言いよどんだ言葉をもみじが代弁する。そう、それが問題なのだ。降伏に強く反対しているのは百地政永。丹波の父にして元里長。引退したとはいえ未だに多少の影響力は残しているうえに、丹波も父親であるが故にあまり強く出れない。実に厄介だ。


「だがそれは俺が何とかしないといけない問題だ」

「……丹波自身の意志はもう降伏で固まってるの?」

「もみじは、反対か?」

「ううん、あたしは丹波の考えを尊重するよ」


 質問返しという形の肯定をもみじは否定しない。もちろん国が滅ぶ事に思うところはある。だがそれ以上に丹波がどんな人生を歩むことになってももみじは共に生き、支える覚悟がある。


「でも北の里長殿たちもどちらかと言えば徹底抗戦派みたいだし、説得は大変そうだね」

「あぁ、そうだな……」


 先の難題に少し表情が硬くなる丹波。この連日の戦闘と城内での議論で疲れも溜まっているのか、珍しくわかりやすく表情に出ている。そんな夫をもみじはぎゅっと抱きしめる。

 丹波の表情が少し和らぐ。


「ありがとな、もみじ」

「これがあたしの最重要任務だから! 欲しかったら可愛い鳥とかも出しましょうか? 癒されますよ~」

「いらねぇよ! お前は寝間着からでも鳥が出るのか!?」

「あたしに不可能はないのだ! タネも仕掛けもありませーん」


 ふざけた口調で手からどんどん小鳥を出すもみじを何とか止める丹波。一瞬いい雰囲気だったのが台無しだ。でも疲れは増したが気分はちょっと晴れた。その感謝の言葉をもみじに伝えれば調子に乗って今度は何が出てくるかわからない。丹波は優しくもみじの髪をなでる。それだけでもみじは満足そうに笑った。



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