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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第一部 1章 『少年期千代松の修行編』
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第24話 俊足と最年少の上忍

 ついに始まった大忍術体育祭・トーナメント。

 俺は問題なく一回戦を突破。丹波も相手がお色気の術を使わなかったため無事一回戦を突破。もみじはシード。

 二回戦。俺の相手はいつぞやの橘先輩の対戦相手だった方。超近距離タイプだったが近づいてくるときに狙撃して終了。問題は丹波ともみじの方だった。


 丹波の二回戦の相手は橘先輩。学校一の俊足を持つ彼だ。彼は今年卒業でこの大会で活躍すれば戦国武将の専属忍者になれるかもしれないのだ。彼にとってこの大会はとても重要なものだ。丹波も上忍として負けるわけにはいかない。

 そんな互いに負けられない身内戦が始まった。



「はじめっ!!」


 橘先輩が開始と同時に自慢の俊足であっという間に距離を詰める。そして丹波と刀を打ち合う。だがすぐに丹波の後ろへジャンプで移動。すぐに丹波が振り返り刀を構える。そこに橘先輩が棒手裏剣を放つ。丹波はそれを刀ではじこうとする。その時だった。丹波の背中に棒手裏剣が二本突き刺さっている。


「は?」


 つい声が出た。いつ投げた?まったくわからなかった。だが俺の驚きはそれだけでは終わらない。次は丹波の肩に棒手裏剣が突き刺さる。結果、前方から飛んできた棒手裏剣も弾き切れず頬に傷をつけた。


「ちーくん、今の見えた?」

「いや、わかんなかった。たぶん最初走ったときに投げたんだろうけど、どんな鍛え方したら投げた棒手裏剣より速く走れんだろうな」

「ほんとに超人ね。このままじゃ丹波君は」

「負けるだろうな。何もできずに」


 俺の嘘偽りない本音だった。丹波の実力を誰よりも高く見積もっている、この俺のだ。

 丹波が刺さった棒手裏剣を手早く抜く。その時には橘先輩はもう自分の間合いに丹波をとらえていた。


「もらった」

「まじかよっ」


 橘先輩が小さくつぶやいて剣を振るい、丹波がそれに悪態をつく。

 丹波が斬られた。そう見えた。だが切れたのは木の棒。変わり身の術だ。


「はぁーっ、斬られたと思った」

「俺もだ」


 もみじの感想に短く同意する。

 丹波は木の上に退避している。そこで吹き矢で橘先輩を狙う。


「いや、それは悪手だろ」

「え?」

「橘先輩の足の速さならすぐにあの位置まで到達できるし、吹き矢も相当あてずらいはずだ」

「あ、そっか」


 俺の思った通り、丹波のいる木に全力疾走している橘先輩に丹波の吹き矢は当たらない。

 そして橘先輩がもうすぐ木に到達するというその時、橘先輩がこけた。足元を見るとロープで罠が張ってある。そしてその倒れる先にはまきびし(踏んだら痛い罠)がまかれている。丹波は自分に走ってくることを見越してここに罠を張っておいたのだ。


「とんでもねぇ奴だな」

「ほんとにね」


 橘先輩はまきびしをみて慌てて剣を地面に突き刺し、まきびしに刺さることを回避する。だがその隙を百地丹波が見逃すはずがなかった。ロープで素早く橘先輩を拘束した。


「勝者・百地丹波!!」


 オオオオォォォ!!と歓声が響く。



「お疲れさん」


 戻ってきた丹波に声をかける。


「ああ、いってぇー。あの棒手裏剣やばかったわ」

「ね。橘先輩、実戦だとあんな風に戦うんだ」


 そこに橘先輩が入ってくる。


「いや、あれは前と上と後ろから同時に飛んで来たら映えるかなーって思ってやっただけだよ。今日は見に来てる人もいるからね」


 なるほどね。見に来てる人を意識してのあれだったのか。確かにあれなら負けても欲しいという人はいるかもしれない。策士だ。


「丹波君、僕の完敗だ。まさかあのタイミングで罠を張ってくるとは」

「いえ、先輩もすごく強かったです。背中に棒手裏剣が刺さったときは驚きました」


 そう言い、二人は固い握手を交わした。



「じゃ、次あたしだから行ってくんね」

「おう、頑張れよ」

「ありがと、ちーくん。丹波君はなんかないの?」

「あ、が、頑張れ」

「お前の応援なんていらねえよ」


 えー!?言わせておいて!?

 丹波もちょっとしょんぼりしている。

 もみじは笑顔で会場へ走って行った。

 もみじの対戦相手は北の里のくのいちだ。それだけならもみじなら大丈夫だと思い、気にしないのだが名前が気になっていたのだ。


「丹波、もみじの相手、知ってる?」

「ん?あ! 服部さくら……服部!! こいつ! 北のもう一人の上忍の娘!」

「あー、やっぱり?どんな戦いすんの?」

「さあ、知らね?この大会でも最年少だし」


 まあそれはそうか。


「もみじ勝てるかな?」

「うーんどうだろ?あいつはお前には劣るけど中忍の中でも強い方だから一方的にボコられるってことはないと思うけど……相手が上忍だとするとさすがに厳しいな。あの年で上忍になれてるかは微妙なとこだな」


 ちなみに上忍は上忍の家系に生まれたからなれるわけではなく中忍を圧倒できるほどの実力にならないとなれないのだ。丹波が上忍になったのは10歳とかだったから、あいつが上忍だったら当時の丹波と遜色ない実力ということになる。その場合、もみじでは厳しいな。



「はじめっ!!」


 もみじはアクロバティックな動きで服部さくらに近づいていく。さくらの方は…さくらの方ももみじ同様にアクロバティックな動きでもみじに近づいていく。そして二人は開始地点の中間でぶつかった。もみじは愛用の短刀で襲い掛かる。対するさくらは……素手!?


「なめやがってっ!!」


 もみじの短刀がさくらの首筋に突き立てられる。捉えた、と思った。さくらはその短刀を指で挟んで止めている。


「は?」

「……っ!?」


 つい間抜けな声が出た。丹波も息をのむ。


「君、力入れすぎ」


 さくらはそうつぶやくと手早く短刀を取り上げ、後ろへ放り投げる。


「えっ!?」


 そのままさくらはもみじの手を掴み、そのまま捻り上げる。


「あ、いたたたたたっ!?」


 そして柔道の要領で投げ飛ばした。

 もみじは一回転して着地、すぐに後ろに跳び距離をとる。

 さくらは再び身軽な動きで距離を詰めていく。もみじはそれを迎え撃とうと構える。だがその時には既にさくらはもみじの背後をとっていた。さくらが足をはらい、体勢を崩したもみじに腕を振り下ろしてもみじを地面にたたきつけた。


「勝者・服部さくら!!」


 オオオオォォォ!!!


「あいつ、あれが最速じゃなかったのか」


 丹波がそうつぶやく。最後、さくらが距離を詰めるとき、一番最初とは比べ物にならないスピードだった。あれはおそらく最初に遅いスピードを全速力だと思わせて油断を誘い、最後に本当の全速力で仕留める。そういう作戦だったのだ。結果、もみじは見事に相手の力量を測り間違え、敗北した。


「あいつ、強いな」

「だな」

「千代松、次あいつだろ?勝てんのか?」


 正直、厳しい。あのアクロバティックな動きに銃をあてるのは難しい。近距離戦では勝ち目がないのは言うまでもない。


「つーかあいつは丹波でも怪しいんじゃないか?」

「ああ、場合によっては負けるかもな」


 真っ向勝負は明らかに不利。どうやって勝とうか?対策考えとかないと。

 俺とさくらの試合はあと3試合後。



 結局、何も思いつかなかった。そんな都合よく攻略法なんて出てこないよね。

 その状態で俺は今、服部さくらと向かい合っている。


「それでは3回戦第1試合、南の里、中忍・坂井千代松VS北の里、上忍・服部さくら!!はじめっ!!」


 さくらがもみじの時同様アクロバティックな動きで突っ込んでくる。

 俺は大きく後ろに下がりながら大量の煙玉を地面にたたきつける。

 戦場が煙に包まれる。勝負は煙の中。

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