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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 4章 『行く先を阻む包囲網』
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第185話 浅井・朝倉と俺の弟子たち

 俺たち織田軍は室町幕府を滅ぼした後すぐに近江に出陣、3万の大軍で浅井氏の居城である小谷城を取り囲んだ。


「浅井の武将が次々と降伏してきているみたいだな。もう小谷城には5000くらいしかいないんじゃないか?」

「そうだな。これなら問題無く落とせそうだ」


 とは言っても小谷城は堅城だ。総攻撃を仕掛けてもそう簡単にはいかないだろう。


「もし総攻撃になって突入することになったら俺たちが先行することになるよな?」

「まあ、他に小谷城の内部を知ってるやつなんていないしな」


 川中島に旅行に行った際に小谷城に利家が捕えられた話はここを囲む前に信長に話してある。なぜ黙っていたと非常に怒られた。だが市ちゃんの婚約の時も含めて2度城に入った事のある俺は突入する第一候補って訳だ。


「市ちゃん……そういえば市ちゃんはどうなるんだ?」


 考え事の最中に名前が出て来たから思い至ったが、市ちゃんは今も小谷城の中にいるはずだ。信長様だって血を分けた兄妹を殺すほどの鬼ではないと思う。信行は歯向かったから例外だろう。信之と違って信長と市ちゃんは普通の兄妹関係を築いていたはずだ。


「主人の妹をちゃん付けで呼ぶな、お前は礼儀を弁えた方がいいと思うぞ。お前信長様にすらたまに敬語忘れてるし……でも確かに心配だな。誰かが交渉して開戦前に城から出すんじゃないか?」

「だといいけどな」


「報告です! 朝倉義景率いる2万の軍が小谷城救援のため接近中! 坂井大助殿、前田利家殿は軍議のためすぐに信長様本陣に来るようにと」

「了解!」


 やっぱり来たか、というのが正直な感想だった。浅井朝倉は堅い同盟で結ばれている。浅井が滅ぼされそうになっているのを朝倉が黙って見ているとは思っていなかった。


「でも朝倉義景本人がお出ましとはな」

「ああ。朝倉も姉川で有力な武将を多く失っている。今俺たちは幕府を滅ぼして勢いがあるし対抗できる武将がいないんじゃないか?」


 朝倉家で俺たちが危険視している武将は朝倉義景、朝倉景鏡、真柄直隆、斎藤龍興の4人。このうち真柄直隆は姉川で戦死している。残りの3人が全員出て来ているとなると相当しんどい展開になる。


「知っての通り朝倉が浅井を助けに来た。朝倉は田上山に陣取り、俺たちが小谷城に攻め入った隙に俺たちの後方を攻めるつもりだと思われる。つまり、俺たちは安易に城攻めに出れなくなった」


 仮に軍を分けて1万で小谷城を攻め、2万で朝倉の相手をするとしよう。最速でも小谷城を落とすには数日かかる。その間、2万の朝倉から城攻めの軍を守ることは難しい。そもそも1万で落とせるかどうかすら怪しい。信長の言う通り、今小谷城の城攻めは無理だ。


「ひとまず小谷城と田上山の中間にある山田山に陣取り浅井朝倉双方の様子を伺う。それと同時に大嶽砦を落とし、小谷城を孤立させる」

「大嶽砦攻略中に浅井か朝倉が攻めて来たらどう致しましょう?」

「全軍で打って出て、迎え打つ。野戦なら勝ち目は大いにある」

「御意」


 大嶽砦を落とせたらそれでいいし、敵が砦を助けようと出て来たらその敵を潰せばいいと。どっちに転んでも利がある賢い選択だ。家臣団から異論は出ない。


「丹波長秀、佐久間信盛、其方らに大嶽砦の攻略を命ずる。残りは山田山に本陣を移すぞ」

「ハハッ!」


 役割分担が決定し、家臣団が動き出した。

 

 丹波・佐久間両隊は大嶽砦を囲んだ。浅井も朝倉も織田も動かない。丹波・佐久間両隊も囲むだけで積極的に砦に攻撃しているわけではない。状況は膠着した。

 信長がなぜ砦を落とさないのかと問いただした文を送ると丹波長秀からはちゃんと落とすので黙って見てろ、浅井朝倉がここで出て来てくれた方が好都合だろ、と言う事が遠回しに書かれた書状が届いていた。

 そして、5日が経過した。その日は大雨だった。


「信長様! 長秀様から伝言です! 朝倉軍は今夜必ず撤退するから追撃戦の準備をされるよう、と!」

「今夜必ず、朝倉が撤退、だと? 長秀、何を考えておる……」


 俺にもさっぱりだ。大嶽砦は確かに朝倉の対織田軍の最前線で重要拠点だが落としただけで朝倉軍が撤退することにはならないだろう。


「さっぱりわかりませんが長秀殿は何かするつもりなのでしょう。ここは言われた通りにすべきかと」

「明智殿に賛成だ。長秀の実力は疑う余地がない」


 明智光秀、柴田勝家という重臣2人がそう言ったことで信長も長秀の言う通りにすると決定した。


「追撃部隊の第一陣は坂井大助と羽柴秀吉、二陣は柴田勝家と滝川一益だ。三陣は俺が率いる、光秀と1万はここに残り、小谷城を見張れ」

「御意」


 追撃戦か、本当にそうなるんだとしたら長秀殿はここで朝倉を徹底的に叩いておくつもりのようだ。それこそ再起不能になるほどに。どこまで追うんだろう、まさか越前まで行くのか。そんなことを考えつつ、軍議の机にある地図を睨みつけていると信長から声がかかった。


「大助、お前は三方ヶ原の合戦で隊の半分ほどが戦死し、特に近接戦闘向けの兵と隊長が足りないと言っていたな」

「はい。兵の方はなんとかなっても隊長の方は急には見つかりません」

「だろうな。だがそれでは困るだろうと思ってな、……入れ!」


 信長の命令で入って来たのは俺もよく見知った顔、っていうか弟子。森長可、蒲生氏郷、そして織田信忠。


「こいつらなら多少お前の隊の面々とも面識があるだろう?」

「そうですが……流石に奇妙丸、じゃなくて信忠様を俺の指揮下に置くのは……」


 いくら俺が敬語がすっぽ抜けたりするようないい加減な家臣でも上下関係を理解していないわけではない。信忠は弟子とはいえ俺より格上、そんなのが隊の中にいたらやりずらいことこの上ない。


「わかっている。そもそも信忠の初陣はまだだ。今は合戦に連れて行って勉強させているだけだ。見学として、お前の本陣に置いておいてくれればいい。きっと何か得るものがあるだろう」


 面倒くせぇぇぇ! 万が一信忠様に怪我なんてさせたら怒られるだけじゃ済まない。最悪切腹だよ。それに俺は第一陣だから敵と真っ先にぶつかる場所だ。危険度も高い。


「あの、第二陣の一益殿か勝家殿にお任せしては?」

「一益は賭け事なんかを教え込みそうだし、勝家は真剣になると怖い顔で無言になる。教えるという意味では向かないだろう」

「では信長様の近くにいた方が……利家もいますし」

「敵と戦わないところにいても意味がないだろう」

「サルは……あれは武将としてはヒヨコも同然だからダメか……」

「ああ。それに信忠も大助の所がいいと言っているし、俺もお前に預けるのが一番信頼できる」


 そう言われたら断れねえよ、ずるいじゃん。俺は信忠のことは諦めて森長可と蒲生氏郷に目を向ける。


「2人の実力は俺もよく知ってる。頼りにしてるぞ」

「はい!」

「はい! オレが朝倉を滅ぼしてやる!」


 そうだった。長可は浅井朝倉を滅ぼすために槍や剣の腕を鍛えてたんだった。これの手綱を俺が扱えるだろうか、信忠様を守りながら。

 なんかすごい不安になって来た。この隊、大丈夫だよね?


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