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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 4章 『行く先を阻む包囲網』
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第184話 一つの時代の終わり

 二条御所が落ちるのに時間はかからなかった。明智光秀、柴田勝家が取り囲むと中にいた敵はすぐに降伏した。まあ絶対勝てないし正しい判断だと思う。

 だがこれでついに、残す城は本当に槙島城だけ。足利義昭はもう後がない。


「行くぞ、槙島城に向けて全軍出陣! 足利義昭を捕らえよ!」


 1573年7月17日、信長は二条御所を出陣し、翌日には平等院に布陣した。佐久間信盛、稲葉義道らが率いる別動隊も瀬田に布陣した。準備は整った。


「第一陣、渡河せよ! 信盛らにも合図を出せ!」


 柴田勝家隊が川を渡っていく。反対からも佐久間信盛が動いたのが見える。それに対し敵の足軽が出てきて川を渡らせまいと弓を構えた。


「大助ッ!」

「わかってます! 鉄砲隊構え! 撃てッ!!」


 対岸の敵兵を俺の鉄砲隊が撃ち抜いた。この距離は鉄砲の距離だ。これが俺の役目。味方の渡河の援護だ。

 俺の援護の甲斐もあって柴田勝家隊は無事に対岸に渡りきる。続いて利家とサルが川に入る。今度は対岸を勝家隊が守っているので安全だ。第三陣は俺と丹波長秀隊、これで城攻めに必要な兵力は槙島に上陸した。


「始めろぉ!」

「撃てェ!」


 直接城攻めの指揮を取るのは長秀だ。その指示に従い、坂井大助隊の鉄砲が火を吹いた。敵前線がパニックになり、織田軍が一気に攻めかかった。そうして前線がどんどん城に近づいていく。そしてとうとう敵が城までひっ込んだ。


「ここからが大変だな。この城は相当厄介だぞ」

「大丈夫です、大助殿。城攻めは致しません。利家殿に合図を」

「何をするつもりだ、長秀殿?」

「簡単です。敵が城に篭っているのなら、追い出せばいいんですよ」


 利家隊が弓を構える。あれは……火矢か! 火矢を撃ち込まれた櫓から一気に炎が燃え上がる。内部はパニックになっているようだ。


「火攻め……これなら確かに敵は出てくるか降伏するしかない」


 やる事がエグい。これが織田家の筆頭家老、丹羽長秀。これで文官仕事もこなせるんだから信長に重宝されるのも理解できる。


「さ、大助殿の出番ですよ」

「え? このままほっとけば勝てるだろう? 今更俺が出張ることはないだろ」

「信長様の指示をお忘れですか? 将軍・足利義昭を捕らえよ、と仰っていました。万が一焼け死なれては困ります。それに将軍を殺せば各国の大名から顰蹙を買いそうですから。特に毛利や上杉が反織田包囲網に加われば、私たちになす術はありません」


 いや、言ってることはわかるよ? ちゃんと筋も通ってるし将軍に死なれるのは困るってのも理解できるんだけど、だからと言って俺を燃え盛る城内に入れるのは流石に酷いんじゃない? 俺だって焼かれたら死ぬからね? 


「ま、半年分の遅れを取り戻さないといけないしな」

「それに三方ヶ原の敗戦もありますから。ここらでいい所見せた方がいいと思いますよ」

「はぁ、わかったよ。俺の隊は常道に任せる。氷雨、これ預かっておいてくれ」

「ん、お任され」


 俺は被っていた兜と鎧の垂の部分を氷雨に預ける。潜入なら身軽な方がいい。ショットガンも置いていこう。リボルバーがちゃんと動く事を確認する。軽くジャンプなんかして体も問題なく動く事を確認した。


「じゃあ行ってくる」


 俺は陣を飛び出し、守りが薄い川沿いの城壁を飛び越える。目撃者を始末し、そのうちの1人が被っていた傘兜を拝借する。これで見た目はほぼ足利軍、城内でも人の目を気にする事なく動き回れる。俺は足利義昭の捜索を開始した。


 足利義昭がいたのは二階建ての本丸の最奥の間だった。そこから燃え盛る櫓や三の丸を確認し、力無く項垂れていた。


「お久しぶりです。将軍様」

「もうここまで来たか……それにしても相手が悪い。其方でなければ抵抗しようと意気込む所なのだがな」


 傘兜を投げ捨てた俺の顔を見てそうこぼす足利義昭。俺も有名になったもんだね。


「無念、無念だ。私の代で幕府が滅ぶ。兄上や父上に合わせる顔がない」


 俺に言えることはない。室町幕府は滅び、信長の治める新しい国ができる。


「あの世で父上や兄上に詫びるとしよう。そう考えれば剣術を極めた其方が来たのは僥倖だったかもしれんな。来い、腹を切る。介錯を頼む。私の首を持っていって手柄にすればいい」

「待て! 俺は殺しにきたわけじゃない! 信長様も将軍様を殺すつもりはない!」

「源氏の嫡流にして武家の棟梁、私にもその誇りがある。生き恥を晒すつもりはない」


 鎧を外し、腰から短刀を鞘ごと抜いた。ここで腹を切るつもりらしい。そんなことはさせない。


「将軍様、ご無礼を」

「何を!?」


 俺は短刀を奪い、足利義昭を縛り上げる。口も縄で塞いだ。抵抗はさせない。このままこいつを信長の元へ連れて行くとともに、城内の敵兵を投降させる。

 抵抗するのを諦めた足利義昭を伴って城門を目指す。すれ違う敵兵は驚いて俺に武器を向けるが俺が足利義昭の首に刀を突きつけると皆武器を落とした。


「戦は終わりだ! まだ抵抗する者がいれば将軍の首が飛ぶと心得よ!」


「開門! 開門!」


 槙島城の城門が開く。俺は矢が飛んでこない事を確認すると城を出て、信長の元へ向かった。


「よくやった。大助。……公方様、あなたは俺があなたを将軍にした恩も忘れ、各国の大名に俺を討つように御命令なさった。その罪に罰を与えなくてはなりません」


 口を縛られている足利義昭に返事はできない。


「あなたには京を去っていただきます」


 信長が足利義昭に下した罰は、追放。足利義昭は槙島城を明け渡し、翌日には京都を出て行った。

 

 つまりここに237年間続いた室町時代は終焉を迎えたのである。


「元凶は断った。後は一つずつ潰せばいい。お前たち、すぐに京を発つ! まずは浅井を討つ!! 全軍ついて来い!!」


 休む暇もなく、織田軍は平等院を出陣する。信長包囲網を打開するため、敵を一人一人倒していく。最初は俺たちを裏切った浅井長政だ。

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