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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 4章 『行く先を阻む包囲網』
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第182話 岐阜への帰還と隊の今後

 越中を出発して一週間、俺達はついに美濃へ帰還した。およそ半年ぶりの帰還である。


「旦那、ご無事でしたか!」

「おかえりなさいませ、旦那様、奥方様、葵丸様」


 顕蔵とお宮が出迎えてくれる。

 約半年空いたってのに家は綺麗に保たれていた。


「留守番御苦労だった、二人とも。俺はこれから城に行って信長様に帰還の報告をする。お宮は俺が戻って来るまでに俺の部隊の各隊長たちをここに呼んでおいてくれ。顕蔵は俺の銃のメンテナンスを頼む」


 2人は揃って「かしこまりました」と請け負ってくれる。俺は旅装から正装に着替えて岐阜城に向かった。


「遅い。いくらなんでも戻って来るのが遅すぎるぞ、大助」


 半年ぶりに会った信長は俺が入って来るなりそう不機嫌そうに文句を言った。俺がいない間相当大変だったらしい。信長だけでなく周りの家臣団にも疲労の色が窺える。家臣団の人数もかなり減っていて、今もどこかで戦だったりで忙しいのだろう。


「申し訳ありません」

「まあ、無事に戻って来たならいい。この半年間の報告を聞こうか」

「わかりました。えーと、三方ヶ原の合戦の事はどこまで把握していますか?」

「城外で戦い、武田に敗れたことくらいだな。合戦の内容やどうして城外で戦うことになったかは信盛に聞いている」

「では敗れた後、俺が殿として武田本陣に突撃したところからお話しさせて頂きます」


 本陣に突撃して囚われた事、そのまま武田領の信濃に連れて行かれた事、武田信玄を暗殺しに行って失敗した事などなど順々に話していく。


「そうか、武田信玄は病か。それで撤退したのだな」

「そうですね。武田軍においては武田信玄という存在が大きすぎますから。これから後継の武田勝頼がどう信玄亡き後の武田をまとめていくのか、それによって武田の脅威度が大きく変わって来るでしょう」

「あぁ。……ちょっと待て、信玄亡き後、だと?」

「ん? ええ」

「つまり、武田信玄は死んだのか?」

「はい」


 信長が固まってしまった。武田信玄が死んだって情報はまだ伝わってないのか。そういえば上杉輝虎も知らなかったぽいし、武田が上手く情報封鎖してるのかな。 

 俺がそんな事を考えている間に信長の表情が目まぐるしく変化する。最終的には何か含みのある笑みになった。


「そんな大事なことはもっと早く教えろ! 代替わりでバタバタしてるだろう武田がすぐに攻めてくることはない! 京の光秀に使いを出せ、まずは室町幕府を滅ぼす。その後は浅井、朝倉だ! 戦の準備をしろ!」

「ハッ!」


 家臣団が一気に動き出す。信長もさっきより活き活きとしてるように見える。


「じゃあ俺も……」

「待て。お前はまだなにか情報を持っていそうだ。武田の捕虜になってから上杉領で何をしてきたのかまですべて話せ」


 なんか圧を感じる。まあ別にやましいことがあるわけではないし、正直に話すことにしよう。


「えーと深志城から脱出した後は犀川沿いに北上して行ったんだけど川中島をどうやって抜けるか考えてる時に深志城からの追っ手に見つかっちゃってさ、成り行きで川中島で武田軍と戦うことになって……」

「ちょっと待て!? 川中島で武田軍と交戦しただと!?」

「うん、高坂昌信と馬場信春。二人とも重症だからしばらく動けないと思う。あとちょっとで討ち取れそうだったんだけど……」


 あそこで2人を討ち取れれば武田軍の戦力は大きく低下し、家康と一緒に遠江・駿河の対武田戦線で一気に押し返すこともできたかもしれない。ごめんごめん、しくじった、と謝ると信長と利家は変な顔をしていた。


「上杉領に入ったら上杉輝虎さまが出迎えてくれて……」

「おい待て、なぜお前を上杉輝虎が自ら出迎えるんだ!?」


 わけがわからん、といったような様子の信長。まあその件に関して俺もよくわかんない。祈が強引に説得して連れて来たみたいだったけど。


「で、その後は上杉軍と一緒に越中の松倉城を攻めに行った」

「おい! なぜ上杉軍の城攻めにお前が出ることになる!?」

「なぜか同盟の条件に入っていたらしくて……」


 信長も俺も意味が分からない。いったい祈はどんな交渉をしたんだ。


「それで上杉軍を率いて松倉城主を討ち取って、褒美に刀と馬を貰った」

「ちょっと待て! それは上杉軍が越中をほぼ制圧したということか!?」

「そういうことだけど?」

「この大うつけが! ただでさえ驚異の上杉の支配領域を広げやがって!」


 怒鳴られた。なんで?


「ちょっと待て、上杉とは同盟で……」

「アホタレ。俺たちの目的はなんだ?」

「天下統一?」

「そうだ。天下統一、つまりこの国のすべてを俺たちが支配するということ」


 何を当然のことを言っているのかと思った。だが数瞬遅れて信長の言いたいことを悟る。


「上杉もそのうち戦う相手だからその勢力を伸ばさせるな、ってことですか?」

「そうだ。ヘマをしてくれたな」


 上杉はただでさえ天下を目指す織田に対する大きな障壁のひとつ。関東の北条、甲信駿の武田に対する強力な牽制として同盟しただけでいずれは戦うことになる。その勢力をむやみに広げるのはよくないってことね。


「大変申し訳ありませんでした」

「全くだ。刀と馬で手懐けられやがって。……まあ、いい。大助にはこれから馬車馬のように戦ってもらう」


 待遇改悪の予感。でも天下取りはこれからが佳境だし、俺に限った話じゃないはず。がんばろう。


「お前も京へ向かう準備をしろ。まずは槙島城だ」

「ハハッ」


 こうして信長との面会は終了。次は俺の隊との話し合いだ。


「我が主、ご無事でしたか!」

「おかえりなさいませ、あるじ様」


 彦三郎と氷雨が俺を出迎える。久しぶりに見る隊長たちの顔。かなり心配をかけてしまったらしい。俺が数か月も戻らなかったから、俺が死んだんじゃないかって何度も話し合いが行われたらしい。でも氷雨や天弥が絶対にないと否定して、もう少し待とう、と隊長たちを説得したらしい。その隊長も2人、欠けてしまった。


「大吾、悠賀……」


 俺の言葉に他の隊長たちが目を伏せる。俺も目を瞑って静かに二人の冥福を祈る。

 俺が無理な突撃をしたから、2人は死んだ。最後尾で応戦しながら逃げるだけならこんなことにはならなかったはずだ。信玄を討てるかわからなかったのに、賭けに出た。もちろん勝算あってのことだったし、こんなことは結果論だから言っても仕方ないのだが。全部わかった上でそれでも、後悔はある。


「我が主、こういうこともあります。戦ですから」

「わかってる。でも俺は隊長だからな。二度とこうならないように、ちゃんと失ったもののことを刻み付けるんだ。そうしないと、ダメなんだ」


 この反省を次に生かす。そうでないとあの二人と他に死んでいった兵が報われない。



「あの二人がいなくなったのは正直、大きいな。大吾の突破力、破壊力、悠賀の器用な立ち回りと戦術眼。どっちも俺たちに不可欠だった」


 そしてあの二人の穴を埋められる奴が隊にはいない。いたらとっくに副隊長くらいにはしてる。


「信長様に頼んで誰か隊に入れてもらうか……? でもなぁ、いきなり余所者が隊長ってのも隊内で問題が起きそうだし」


 知らん奴がいきなり上司って言われても下の者はそう簡単には納得してくれない。戦場では命を預けるんだ。今までの隊長との違いだって当然あるだろうし、それで隊の中で諍いが起きることもあるだろう。


「特に大吾は結成当時からの隊長で、隊内での信頼が厚かったですからね」


 そんな簡単に結論の出る問題じゃない。ひとまずほぼ壊滅状態の2番隊、4番隊、5番隊を秀隆の下で一時的に一つの隊として編成することで決定した。でも役割の違う3隊を無理やりまとめることになったため、正直、うまく機能はしないだろう。


「新隊長の選出は急務だな。ひとまず次の槙島城攻めは1番隊、6番隊を主力に構成しよう」


 そう決定し、会議は終わる。俺は大吾や悠賀のこと、隊の今後のこと、次の戦のことなんかで全然考えがまとまらず、その日は半年ぶりの我が家の布団なのにもかかわらず、なかなか寝付けなかった。



 




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