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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 4章 『行く先を阻む包囲網』
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第179話 恩返しと越中国

「久しいな。坂井大助」


 久しぶりに会った上杉輝虎は相変わらず格好良くて、美しい女性だった。なんというか、年を重ねたからこその格好良さがある。だが彼女がなぜ信濃との国境付近なんて対武田の最前線に居るのか。


「お久しぶりです。輝虎様。どうして、こんな前線に?」

「お前が川中島という重要な場所で大暴れするからだろう。狼煙がたくさん上がっていたから、定満に見に行かせてみれば、お前がいると聞いたから祈と一緒に迎えに来たのだ」


 ということらしい。まあ上杉としても信濃で騒ぎが起きれば警戒するのは当然のことだろう。


「まあ、わざわざ私がここまで来る必要はなかったのだがな。お前の嫁と息子がどうしてもと言うから仕方なくついてきたのよ」

「それは御苦労をおかけしました。あと越後で祈を保護してくれて、本当にありがとうございました」

「ああ。お前には恩があったからな。私は受けた恩は返す主義だ」


 思った通りの反応だ。むしろそれを利用しようとした節もあるのだが。武田に攻め込まれる可能性のあった織田領より越後の方が安全だったからな。俺の家族を預けておくに丁度よかったのだ。


「それよりあの手紙、祈はすごく怒っていたぞ」

「あー、祈に見せてしまいましたか? そりゃあ俺も死ぬつもりで行ったわけじゃありませんし、実際死んでないですがね……でも万が一ってことがあるじゃないですか。実際、何度も死にかけましたし。その時に祈と葵丸だけは何としても生き延びて欲しくて……」

「その気持ちもわかるがな……」

「あ!! あの遺言状、見せてませんよね?」

「安心しろ。それだけは死守した」

「よかった。あれ、燃やしておいてください」

「ん? いいのか?」

「ええ。またこういう機会があれば新しく書きます」


 言いたいことも変わっているだろうしね。


「それより、お前はこれから一週間私の配下となる」

「は?」

「同盟の条件でな。祈が同盟の交渉の最中にやたらとお前の話をするからな。気になってそういう条件を出したのだ」

「なん、だと……?」


 すぐに岐阜に戻ろうと思ってたのに。祈め、俺を売ったのか。いや、おかげで越後に逃げてこられたんだ、文句は言うまい。

 

「で、何をさせるんですか?」

「簡単だ。武田が起こした越中の反乱、その首領格である椎名康胤の守る松倉城を落とし、越中を平定せよ」

「馬鹿野郎!! 一国を一週間で平定しろってか!! 無理だよ!!」

 

 ついタメ語どころか暴言が出ちまったがそんなことはどうでもいい。それだけ輝虎はアホなことを言っている。たった一週間で越中一国を平定? 越中は一揆なんかでただでさえ不安定な地域なのに。


「安心しろ。もう残りは松倉城だけだ。それも景綱が包囲している。大助はその軍に入り、松倉城を落としてもらう」

 

 もう下地は出来てるってことか。その最後の一押しに俺を使うってことね。それなら納得だ。馬鹿って言ってごめんよ。


「出陣は明日だ。それまではじっくり休め。ここには温泉もある」

「そうさせてもらうよ」



 翌日、俺は上杉軍の一員として春日山城を出陣。越中国に向かった。


「旦那様と一緒に行軍なんて初めてでわくわくします」

「父上の戦うとこ、見れる?」

「はい、きっと見れますよ。旦那様は強いですから」


 今回は祈と葵丸も一緒だ。俺は反対したのだが祈がしばらく俺と離れたくないというので仕方なく連れてきた。そんな可愛いこと言われたら連れて来るしかないじゃんよ。それに越中からそのまま岐阜に帰った方が二度手間にならなくていいっていうのも理由の一つ。それに今回は攻城戦だからこっちの本陣で待機する分には大して危険はないだろうと考えてのことだ。


「そうだ。昨日聞こうと思っていたのだが、武田軍の内情はどうだった?」

「さすがの一言に尽きますね。あれほどしっかり統制された軍を見たことがありません」

「だろうな。武田の強さはそこにある。それをまとめ上げる信玄がどれだけすごいのかよく分かっただろう?」

「敵なのに随分と褒めるんですね」

「褒めているわけではないが、認めているのは確かだ。因縁の相手であるからな」

「ま、もう死にましたがね」


 俺があっさりとした口調でそう告げると、輝虎が驚きのあまり馬から落ちそうになっていた。

 

「なんだと!? 信玄が死んだ!? それは間違いないのであろうな!!」

「え、えぇ。上杉でもこの情報は掴めてなかったんですか?」

「ああ。何故か情報封鎖がいつにもまして厳しいとは思っていたが、そういうことか」

「この情報掴んでいないんだったら情報料取ればよかった……」


 こんな雑に情報撒いてたら丹波に忍者失格だって怒られちゃうぜ。俺上忍なのに。


「ま、祈保護してもらったしいっか。サービスってことで」

「その礼は今からの城攻めだ。この情報の礼はまたしよう。私は受けた恩は返す主義だ」


 そういえばこういう人だった。輝虎のこういう所好感度高い。


「その話はまたあとにしよう。もうそろそろ着くぞ」


 見えてきた。今回の標的。椎名康胤の治める松倉城。ここを落として越中国を平定するのが今回の上杉軍の任務だ。その一助となるのが俺の役目。俺だって祈を保護してもらった恩は返したい。俺だって上杉輝虎ほどじゃないがそうところでしっかりやるのは大事だと思うしね。


「これより松倉城攻略の軍議を始める!! その前に紹介しておこう。この者は坂井大助、この前同盟した織田の将で援軍として救援に駆けつけてくれた。知っている者も多いと思うが織田信長が誇る最強の武力だ。大助、頼りにしているぞ」

「ハ!! 足手纏いにならないよう、励みます」


 織田との同盟を理由に参戦したと家臣たちに告げる輝虎。細部は違うけど家臣たちにとって納得しやすい話にしたかったのだろう。


 その日の軍議では各将の配置などが決まり、開戦は翌日となった。俺も夜のうちに陣を張り、与えられた上杉兵とすり合わせを行った。やっぱり彦三郎や大吾のようには上手く指示が伝わらないこともあるだろうが、仕方ない。急造の軍だしね。


 ……隊の皆も心配してるだろうな。出来るだけ早く終わらせてさっさと岐阜に帰ろう。


 そう改めて心に決め、俺は明日の戦に備えて布団に入った。

遅くなりました!!

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