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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 4章 『行く先を阻む包囲網』
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第178話 俺VS武田の川中島と再会

「”去龍之槍”!!」

「”一刀両断”!!」


 天真正伝香取神道流の槍術使いである馬場信春と陰流の剣術使いである高坂昌信。

 まずはリーチの長い槍、つまり馬場信春を倒したいが高坂昌信にうまく邪魔される。逆も同じことだ。厄介なコンビだぜ。


「”電光之槍”!!」

「くッ!? ”天之巻切”!!」

「”乱剣”!!」


 俺が信春の槍に対応すると昌信が俺の知らない陰流の技で俺の隙をつきに来る。俺は陰流についてそこまで詳しいわけじゃない。むしろ基礎の素振りや基本の型しか知らない。知ってる奥義なんて精々片手で数えられるほどだ。

 知らない技の対処は難しい。でもそれだけだ。ちゃんとその刀の動きを見極めれば、対処できる。鹿島新當流に対処できない攻撃はない。


「”乱之太刀”!!」 

「”下段之鎗合”」

「”上霞”!!」

「”二刀打物”」

「”八神之太刀”!!」


 凄まじい技の応酬。戦況は五分。だが単純に俺の方が技を使う回数が2倍。俺も体力には自信があるがいくら何でもこの状況が続けば俺の方が先に体力が尽きる。だからこの五分の状況からもうひと踏ん張りして俺が有利な状況まで持っていく。短期決戦だ。そこに勝機が生まれる。そこにしか勝機はない。


「天真正伝香取神道流・極意七條”遠山之太刀”!!」


 天真正伝香取神道流の奥義でまずは高坂昌信に肉薄する。


「な!? 信春!!」

「わかってる!! ”突留之槍”!!」

「甘いな」


 昌信は完全に防御の姿勢、今、この一瞬だけは俺と信春の一対一。この僅かな時間で信春を討ち取る。そのつもりで攻撃を躱し、リボルバーを抜く。


「しまッ!?」

「もう遅い」


 パァァーーン!! 


 弾丸は信春の鎧の脇腹あたりに命中する。だが俺の攻撃は終わらない。ここで確実に仕留める。


「”突留”!!」


 俺の神速の突きが信春の首を貫く、はずだった。だがさすがの反応速度で俺の突きは首の一部を切り裂くだけにとどまった。だがそれでも重症であることには間違いない。殺すことは出来なかったが


「よくも!!」

「次はお前だ!!」


 俺は返す刀で昌信の首を落としにかかる。その攻撃は受け止められたが、その後の勝負は一方的だった。信春が戦線離脱した後、俺とタイマンで戦うことになった昌信は頑張った。昌信は武田家内でも有数の実力者だ。その実力をいかんなく発揮し、ものすごく頑張った。

 だがさすがに実力差があった。三方ヶ原の時も武田勝頼とコンビで、今も信春とコンビで戦っていたのだ。昌信が手練れとはいえ、さすがにタイマンで俺の相手をするのは荷が重かった。


「”薙之太刀”!!」

「くっ!! ”相雷とっ……」


 これまでものすごく頑張ってきた昌信がついに崩れた。陰流の奥義で俺の攻撃を受けようとしたがついに限界が来たようだ。不完全な形で俺の攻撃を受け、気を失いそうになったが何とか持ちこたえたようだ。


「もう限界だ!! その者から殿を離せ!!」

「わ、私はまだ……」

「これ以上は危険です!! いいから殿を連れていけ!!」


 昌信が家臣に連れられて下がっていく。でもせっかく追い詰めたんだ。はいそうですかと逃がすわけにはいかない。信長か輝虎殿への手土産に武田四天王の首一つくらいあってもいいだろうし。


「待てっ!!」

「ダメだッ!! その者を行かせるな!!」

「殿を守れェ!!」


 昌信の家来2人が肉の壁となり昌信を守る。二人は俺の斬撃の餌食になったが彼らは役割を果たしたと言えるだろう。何故なら俺と昌信の間に次の人が割り込む時間を稼いだのだから。


「ちっ、邪魔だ!!」

「殿を守る盾になれ!!」

「早く殿を逃がせ!!」


 敵兵が次々と俺と昌信の間に入り、死んでいく。その間に昌信はどんどん離れていく。


「クッソ……仕方ないか」


 俺の目的はここで高坂昌信を討つことじゃない。ここを突破して上杉領まで逃げることだ。今敵の意識が俺を討つことから高坂昌信を守ることに移っている。今なら突破できる。


 俺は馬の尻を軽くたたく。再び馬が勢いよく駆けだした。前方の敵がかなり減っている。わずかな敵を刀で薙ぎ払い、敵の包囲から脱する。このまま馬で引き離す。追いついた敵がいたなら斬り捨てる。

 そうして、俺は川中島を抜けることに成功した。


「マジで疲れた」


 俺は今、湖の上に浮かぶ小島にある神社の階段で休んでいる。装備は外して、湖を渡る前にあった小さな村で買った握り飯を頬張る。異常なほどにすっぱすぎる梅干しの塩分が染み渡る。


「マジでしつこすぎるんだって。あいつら……」


 敵将二人を降した後も敵兵は死に物狂いで追いかけてきた。俺は全力で逃げ、それでも撒けない奴は全員殺した。だが敵兵は簡易的な狼煙のようなものを持っていて、それで俺に殺される前に俺の位置を味方に教えるのだ。それを数回、あるいは数十回繰り返した。


「あの狼煙……便利だな。俺の軍にも導入してもいいかも。いちいち使者を出すのは面倒だし」


 火薬に何か混ぜているのだろうか。とにかく小さな衝撃でも発火、発煙するようになっていたようだった。俺は文系学生だったからな……そういうのには詳しくない。


「そんなことはまず無事に帰ってからだな」


 ここからあと数キロ北上すればもう越後に入る。じゃあなぜこんな観光地に寄り道しているのかというと。


「最後の難関だな」


 ここは川中島の戦いの時、上杉軍が通った道だ。当然ながら武田にとっても上杉にとっても重要な場所。国境付近には上杉軍も武田軍も多少なりとも駐屯している。武田は川中島の海津城に多くの兵がいるため多くはないが、問題は上杉軍だ。武田領から俺のような怪しい奴が来たら通してくれないだろう。あっさり通してくれたら、それはもう職務放棄と言っていいだろう。俺は別にそれでもいいんだがね。


「ま、行ってみるしかないか」


 武田軍の駐屯する場所は迂回できる。だが上杉の方はそうはいかない。でも戦いになることはないようにするつもりだし、ちゃんと話し合うことにしよう。


 その日はさっきおにぎりを買った村で一泊し、翌朝、俺は越後と信濃の国境にたどり着いた。上杉軍が駐屯していると思われる砦がやっと明確に見えてきたころだった。


「旦那様……!!」

「父上!!」

「え? 祈? 葵丸?」


 そこにいるはずがない2人がいた。思わず二度見し、目をこすってみても2人は確かにそこにいた。

 何故2人がそこに、と考える間もなく葵丸が俺の胸に飛び込んでくる。一瞬遅れて祈も。


「よく、ご無事で……!!」

「父上、会いたかった!!」

「ああ。二人とも、俺も、会いたかった……!!」


 自然と涙があふれだす。だいたい5か月ぶりの再会だ。いろんなところがボロボロだが、一応五体満足で再会できた。ここ5か月ずっと大変すぎる日々だったが、それが報われた。会っただけで、そう思えた。


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