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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 4章 『行く先を阻む包囲網』
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第163話 山県昌景と魚鱗の陣

「ハァッ!!」

「なんの!!」


 俺と敵将・山県昌景の刀が激しくぶつかり合い、火花を散らす。剣の技術ではこちらの方が上、だがその大きな肉体から生み出されるパワーで押し負けている。俺だってかなり筋肉はあるはずなのに、あっちの方が明らかにパワーがある。格闘技で体重ごとに階級分けがある理由がよくわかるな。


 そしてそれより問題なのは俺の方の兵が押し負けていること。もともと家康と俺がいたところに俺の兵は500しかいなかった。襲ってきた敵は3000ほど、兵力差があるのに加え、敵は赤備えの精兵ときた。厄介だ。


「我が主、お待たせいたしました!!」

「行くぞォ!!」

「彦三郎、大吾、長利!! よく来てくれた!! この敵将は俺が相手をする。お前たちは敵兵を押し返せ、俺の所に近づけるなよ!!」

「お任せあれ!!」

 

 丁度いいタイミングで俺の隊が合流してくれた。あっちはあの3人に任せておけば大丈夫。兵力差も埋まった。あとは俺がこの敵将を討てばいいだけだ。


「じゃあそろそろ、本気を出すかな」


 俺は腰からリボルバーを抜く。


「今だ、撃てッ!!」


 山県昌景の号令と共に俺に大量の矢が飛来する。とっさにリボルバーをその場に落とし、刀で矢を弾く。


「坂井大助が奇妙な銃を使うというのは聞いていた。悪いが対策させてもらったぞ」

「そうか。対策されるほど有名になってるとは驚きだよ」


 馬の足元に落ちたリボルバーを拾うのは厳しそうだ。それに仮に拾ってもまた弓隊に撃たれるだけだしね。


「彦三郎、あそこの林に弓隊が潜んでいる。数は多くない。全員撃ち殺せ」

「ハ!!」

「氷雨、アレ、持ってきてるか?」

「ん、これ」

「よし、ありがとう。じゃあそこのリボルバー拾って保管しておいて。大事なものだから頼むよ」

「ん、頑張って」


 そう言って氷雨はリボルバーを拾って戦場を駆けていく。

 その様子を見届けると俺は赤い甲冑の大男に向きなおる。


「悪いな、待ってもらって」

「ふん、それよりなんだ? その銃は?」

「ああ、俺の専属鍛冶師が作ってくれた、最新作だ。お前はその実験台な」


 さあ、ショットガンのお披露目といこうか。俺はショットガンのレバーを引いて狙いを定める。

 そして重い引き金を引き絞った。


 パァァ―ーーン!!


 銃声が戦場に響き渡るのと同時に山県昌景の左腕が吹き飛んだ。


「ッ!? ぐ、な、何をした……!?」

「銃を一発撃っただけだよ。ただし散弾をな」


 ショットガン、日本語で言うと散弾銃。有効射程距離は50メートルの主に近距離用の銃だ。発砲すると小さな弾がたくさん発射され一定範囲内に均等に散らばり着弾する。現代では狩猟などにも使われる、殺傷能力が高い銃だ。


「次で終わりだ」


 再びレバーを引き、狙いを定める。


「クソォ、ここまでか……」


 右手で千切れかけの左手を抑える山県昌景も現代兵器の前に勝てないことを悟ったらしい。俺は頭に狙いを定め、引き金を……


「昌景殿ォォ!!」

「ッ!? 誰だ!!」


 引き金を引こうとした直前、武田の将がこの一騎打ちの場に乱入してくる。俺はとっさにショットガンでその将の刀を受ける。続いてショットガンをその将に向けようとするがリボルバーと違い銃身が1メートル以上あるショットガンはこの距離で刀と戦うのは無理だった。防御で手いっぱいだ。近距離用と言ってもそれは銃の中での話、刀と戦うことなど想定されていない。


 だがなんとかわずかに距離が取れたタイミングで一発撃つ。ろくに狙いを定められなかったため当てることは出来なかったがあとから来た武将にもこの銃の恐ろしさを知ってもらうことは出来たようだ。連撃が止まった。その隙を見てショットガンをしまい、刀を抜く。

 

「若!! その男、織田の坂井大助だ!!」

「なんだと!? 織田家最強と言われる……昌景殿がこれだけやられるのもうなずける」

「ご紹介どうも。俺が坂井大助だ。お前は?」

「僕は次期武田家当主!! 武田勝頼だ!! 僕がお前を討ち父上に僕のことを認めさせてやる!!」

 

 武田勝頼、珍しく俺ですら名前が知ってるやつが出てきたぞ。こりゃあ大物だ。こんな若造一人仕留めるだけできっと大手柄になるな。明らかに山県昌景よりも格下。手負いの山県昌景と二人まとめて討ってこの戦の流れをこっちにもっていく。


「行くぞ!!」

「若、来ますぞ!!」

「ああ、わかってる。昌景殿……全軍、退くぞ!!」

「え?」

「はぁ!?」


 仕切り直して今から2対1の戦いが始まる、という雰囲気だったのに武田勝頼は山県昌景とその兵士ともども逃げていく。

 俺の下した判断は当然、追撃だ。


「追うぞ!! ここでせめて山県昌景だけでも討つ!!」


 だがその俺を止める者が1人。彦三郎だ。


「なりません、我が主!! 家康様は敵を追い返したら中央守備に入るようにと」

「状況次第だろ。ここで敵将の首を一つとる方が絶対にデカい」

「いえ、もう武田も徳川も陣形が出来上がりつつあります。追撃をかければ敵中に孤立して我らが討たれます!!」


 敵将の首取りたかったがこうなっては仕方ない。

 前哨戦は終わりだ。


「常道と悠賀が陣を作っています。そこへ向かいましょう」

 

 俺たちが陣に戻るともうほぼ徳川の鶴翼の陣は完成していた。


「何で鶴翼? 鶴翼ってのは兵数が多い方が包囲するために使う陣形だろ?」

「敵は魚鱗の陣ですね。これもまた少し妙というか……」

「魚鱗は兵が少ない方が敵中を突破したり敵将を討って一発逆転を狙う陣だ。何か妙だな」


 まあ家康にも何かしら考えがあるのだろう。俺たちは鶴翼の中心、家康の前。鶴翼は両翼に兵力が分散し中央が弱くなるため、真ん中に強部隊である俺たちを置いて中央の守りを固めたのだろう。


「いよいよ本格的に始まるな」

「ええ、大吾も張り切っております」

「だろうな、あいつは。ここはたぶん一番厳しい戦いになる。敵の魚鱗の陣の中心部がここに来るからな。その点、大吾が張り切ってるなら頼もしい」

「ですね」


 そう彦三郎と笑いあった。大吾はそんなことを話しているとは知らずに一番前で腕をぐるぐる回したり、ジャンプしたりして待ちきれない様子だ。

 

 その様子を見てまた彦三郎と目を合わせ、笑いあった。




「この戦で徳川家康を討ち、遠江・三河を手に入れる!! 準備は良いか、頼もしき我が仲間たちよ!!」

「「オオオオォォォ!!」」

「頼りにしておるぞ、我が親友たちよ!!」

「「ハハッ!!」」


 武田信玄の激、それが武田軍全体の士気を爆発させる。


「全軍、突撃じゃあ!!」

「「オオオオォォォ!!」」


 信玄が軍配を振り、命令する。

 最強の武田騎馬隊が徳川家康に向かって一斉に駆け出した。


 


 

 




 




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