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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 4章 『行く先を阻む包囲網』
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第158話 対武田の準備とショットガン

 軍議が終わったのち、俺は家に帰って祈と葵丸に報告した。


「武田と戦になる。俺はその織田軍の大将として2万人を率いて遠江の浜松城に行く」

「武田と……大丈夫ですか?」


 俺と一緒に武田の戦の強さを川中島で見ている祈が俺に心配そうな目を向けてくる。


「わからない。勝つつもりで行くけど今までで一番厳しい戦いになるのは間違いないと思う」

「そ、そんな……」

「父上、負けちゃう?」


 祈と葵丸の不安そうな表情。安心させるために俺は無理に笑顔を作って、


「大丈夫だよ。俺は勝つ。俺より強い奴はこの時代にほぼいない」


 実際は俺一人強くても戦に勝てるわけではないが、葵丸を安心させるためにはこのくらいのことは言う。祈は気づいているだろうが俺の意志を理解したのか何も言うことはない。


「でもさっき言った通り厳しい戦いになる。そこで俺が勝つために祈と葵丸に頼みたいことがあるんだ」

「頼みたいこと、ですか?」

「ああ。武田と戦になったら織田は相当厳しい状況になる。はっきり言って俺たちが勝つには俺たち以外に1万以上の援軍が到着したタイミングで決戦を仕掛けるしかない。そこで信玄を討ち取れることが出来ればそれで終わりだけどそれが無理で体制を立て直されたら長期戦になる。信玄が体制を立て直し戦を継続するんじゃなくてその場で撤退を判断させるために必要なことだ」


 上杉との同盟。それが成せるかが今回のカギだ。その任務の大使は利家。その利家に祈と葵丸を同行させる。祈は上杉輝虎と仲が良かったみたいだし適任だろう。祈は越後に行きたがっていたし。


「祈と葵丸は利家に同行して越後国に行ってくれ。上杉輝虎に交渉して織田と上杉の同盟が成立するように頑張ってほしい。帰る時は俺が迎えに行くからゆっくり越後国を堪能していてくれて構わない」

「それは……」

「任せて、父上!!」


 祈が何かを言う前に葵丸が元気よく返事をする。祈のことはあえてスルーして俺は葵丸の頭を撫でる。


「祈、葵丸のこと、任せるぞ」

「……はい。旦那様、ご武運を」

「ああ。ちゃんと勝つから安心しろ。そうだ、この手紙を上杉輝虎に渡しておいてくれ。大事な手紙なんだ」


 俺はそこそこ厚い手紙を祈に手渡す。


「わかりました。必ず渡します」


 心強い返事をくれた。これで祈と葵丸は大丈夫。続いて俺は顕蔵の所へ向かう。


「顕蔵、俺は来週からかなり大きな戦に行くことになった。祈と葵丸も家を空ける。お宮と一緒に俺たちがいない間、家を任せていいか?」

「それは構いませんが……もしかして勝ち目薄いんですかい?」

「……なんでそう思う?」

「こんなに深刻な顔で言いに来るなんて初めてですから。それに奥方たちを逃がすなんて、相当なことなのでは?」

「……お見通しか。でも俺は負けるとは思ってない。当然勝ちに行く。でも今回は相手がかなりの強敵なんだ。俺たちが負けてもし岐阜まで攻め込まれたとき、祈と葵丸は織田の有力武将の家族ってことでひどい目にあう可能性がないわけじゃない。だから逃がした。顕蔵とお宮はそんなことにはならないと考えている。だから残そうと思ったんだが、怒ってるか?」

「いえ、旦那の言ってることは間違ってない。俺たちはここで旦那の帰りを待っていることにする」

「ああ、すまんな。任せたぞ」


 俺の意図をここまで正確に汲み取ってくれる奴はなかなかいない。祈を逃がしたところまでお見通しか。


「ああ、俺の方からも用があった」

「ん? なんだ?」

「旦那が戦に行く前に完成しやした。例のブツ、散弾銃」

「マジかよ!? 早く見せてくれ!!」


 ショットガンが完成した!? これはテンションも上がるというものである。俺は顕蔵を急かす。

 顕蔵は奥の箱の中から白い布に包まれた細長いものを取り出す。そしてそれを丁寧な手つきで俺に手渡す。


「開けてみてくだせえ」

「おう」


 俺がそっと白い布をめくると木と鉄で覆われたカッコいい銃身が露わになる。


「お、お、おおおぉぉぉ……」


 思わず声が漏れる。俺がユナにもらった設計図はイタリアのフランキ社が開発したSAS12というポンプアクション式ショットガンだ。全長は1メートル強、装弾数は8発。ゲームなんかでよく見るSPAS12からセミオート機能を取り除いたものだ。本当はSPAS12を使いたかったのだがさすがにセミオート機能は難しそうだったので諦めたのだ。それに比べてメンテナンスもしやすく扱いやすいポンプアクションショットガンは明らかにこの時代に合っていた。

 そもそもショットガンがこの時代に合ってないっていうことは俺も理解しているけど作ってしまったものは仕方ないよね。


「う、撃ってみていいか?」

「もちろん。試射の時点では問題なく使えやした。弾はこちらのものを」


 顕蔵に手渡された弾を持ち外に出る。俺の家にはちゃんと銃の練習場も完備されているのだ。いつもリボルバーで練習している的にむけてショットガンを構えてレバーを引く。


 そして引き金を引き絞った。


 パァァ―ーーン!!


 心地よい銃声が耳に響き、散弾が的に向けて発射され、木でできた的が粉々に砕け散った。


「すっげえ……」


 無意識に漏れた声だった。初めて撃つ、本物のショットガン。撃ち込まれたことはあるけど。


 威力は十分以上、装弾数もリボルバーより多い8発だ。火縄銃とほぼ同じサイズでこれならばもう火縄銃を持つ理由はないな。ゲームだと近距離用のショットガンだが有効射程は50メートルほどある中距離武器だ。むしろこの時代だと刀や槍の方が近距離なら強いしな。


「素晴らしい出来だ。本当によくやってくれた。ありがとう」

「本当に大変でしたよ。でもそれ以上に楽しかったですから」

「そうか。じゃあ次はどんな銃を作ってもらおうかな」

「え”ッ!?」

「ははっ、冗談だよ。それは戦から帰ってきたらだな。しばらくお休みだ。そうだ、特別ボーナスも用意してあるから、あとで渡すよ」


 ちゃんとこの日のために顕蔵へ渡すボーナスは用意してある。飯の時にあらためて感謝と共に渡そう。


 ショットガンに浮かれ切っていた俺は隊の皆との会議があったことを思いだし慌てて家を出る。


「彦三郎、大吾、常道、秀隆、悠賀、長利。今回は1から6番隊全隊で出陣する。無論、隊員も全員だ。相手は武田信玄、徳川家康殿と一緒に浜松城での籠城戦になる。食料も多めに用意しておけ」


 隊長たちは頼もしくうなずいてくれる。


「それと今回、俺は浜松城に向かう織田軍全軍の大将として2万の兵を率いることになる。俺の隊にずっといるわけにはいかなくなる。俺がいないときは常道が指揮を取り、彦三郎と悠賀が支えてやってくれ」

「はい!!」

「2万ですか、大軍ですね。責任重大ですよ」

「ついに万の軍を率いることが出来るところまで成長したということです。大膳様をお喜びになるでしょう」


 彦三郎と悠賀の言葉に俺は父上の言葉を思い出す。父上の死ぬ間際の最後の言葉、俺は誰もが認める正しく強い武将になれているだろうか。


「出陣は一週間後だ。それまでに用意や家族との別れを済ませておけ。解散だ」

「「ハッ!!」」


 これで俺のやることはだいたい終わった。あとは銃のメンテナンスやショットガンの使用感を確かめながら出陣の準備を整えよう。







 


 



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