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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 3章 『天下に向けての第一歩』
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第142話 志賀の陣と延暦寺

「そういえば本願寺の方はどうだ?」

「あっちとは一時休戦中だ。あそこは河川に囲まれた天然の要塞だからな。あれを落とすには時間も兵力もかなりいるだろう、ということで先に浅井朝倉をという判断だな」


 京都に向かって進軍する浅井・朝倉軍を止めるための戦の進軍中の会話である。

 会話に出てきた本願寺というのは大阪にある浄土真宗、最近のトレンドで言えば一向宗の本山である石山本願寺のことである。それが一向宗門徒を率いて信長に歯向かっている。そのせいで長島一向一揆が明確に敵に回るなど最近の信長の悩みの種であった。


「全く、なんで武器持つんだよ一向門徒は。滝に打たれてお経読んでろよ。世の中の平穏を祈っててくれよ……!! 武器持つことねえだろ……」

「まあまあ……わかるけど」


 俺をなだめながらも同意の意を示す利家。二人揃ってため息をついた。


「報告です!! 浅井・朝倉勢は比叡山に入りました!!」

「比叡山? 延暦寺か?」

「はい。比叡山の僧たちが浅井・朝倉勢を招き入れたようです」


 さすがに天台宗総本山には信長も手を出しずらい。勝ち目薄と見た浅井・朝倉が逃げ込むには絶好の場所だ。


「で、信長様は?」

「すぐに浅井・朝倉を引き渡すようにと文を送っていますが返事はありません」

「面倒くさいことになったな」


 俺と利家はまたそろってため息をついた。



 翌日、俺たちは浅井・朝倉と戦闘があった宇佐山城に入った。森可成が死んだ場所である。可成たちの奮戦で落城は免れていたのである。


 可成含め戦死した織田軍の兵士を弔ったのち、城内で軍議をした。

 軍議ではもう一度文を送ってみて様子見ということにまとまった。で、問題はその手紙の内容だが……見せたほうが速いかな。


・信長の味方に付くなら信長領内にある延暦寺支配地を返還、安堵する。

・信長の味方に付かないなら浅井・朝倉にも味方せず、俺たちの邪魔するな。

・この2つに逆らうならば寺ごと山をすべて焼き払う。


 もう完全に脅しだよね。山ごと焼き払うってどうなんだろう。聞いたことないぞ。もし俺がこんなこと言われたら慌てて信長に土下座して安堵してもらうけどね。


 だがそうはならなかった。この手紙も延暦寺は無視。さらに以前信長が滅ぼした六角氏が反乱を起こし、南方の三好三人衆も兵をあげた。石山本願寺も長島一向一揆に働きかけ、信長の弟・織田信興が討たれた。ここぞとばかりに周辺勢力が一気に信長に牙をむいたのである。


「クソッ!!」


 信長は怒りに任せて床をたたく。ここまで周辺勢力が敵に回ってしまえばここで浅井・朝倉を討つのは困難。それどころか信長の近畿の勢力圏を失うことになる。


「やむを得ん。今すぐ朝廷と幕府に使者を送れ。浅井・朝倉との休戦の調停をお願いする」


 ということで俺たちは比叡山から岐阜へ撤退、その後浅井・朝倉も比叡山を下山した。志賀の陣と呼ばれるこの戦は引き分けという形で幕を閉じた。

 


 だが当然これで終わる信長ではない。岐阜に戻った後、近江佐和山城を占領し、いくつか小規模な戦を繰り返して尾張・美濃・近江の敵勢力を打倒して回った。だがこの戦の中で美濃三人衆の氏家直元が討ち死にした。


 そんなこんなで時はあっという間に流れ翌年の9月12日。浅井・朝倉との連戦ののち、ついに織田軍は比叡山を包囲した。

 以前と同様の内容の手紙を比叡山に送り付けたがやはり無視。さらに延暦寺の僧たちの不誠実な行動、対応について言及する手紙を送ったがこれも無視。


「待ってください、信長様!! 山ごと寺を焼き払うなど!!」

「どうかご再考を!!」


 明智光秀、佐久間信盛が信長に嘆願する。だが信長の冷たい目に変化はない。


「黙れ。あれのせいで可成も直元も死んだのだ。俺たちに害をなす存在はすべて滅ぼす」

「ですがッ、あそこには多くの民間人も!!」


 光秀はさらに食い下がるも信長は相手にしない。


「関係ない。あそこにいるのはすべて敵だ。皆殺しにしろ」

「そんなッ!! ご再考を」

「うるさい。今回の戦はお前から始めろ。お前は日吉神社から火を放て。誇り高き一番槍だ」


 光秀は悔しそうに唇をかんだ。そんな光秀を気にする様子もなく信長は陣幕を出て行った。


「やるしか、ないのか……」


 光秀のそんな声が陣幕に響いた。これは光秀に限らずここにいる家臣団みんなの総意でもあった。

 だが浅井・朝倉を匿い、数千の僧兵を擁する比叡山延暦寺を放置はできないというのもまた、光秀含めた家臣団の総意であった。


 俺の配置は日吉神社を攻める明智光秀の後方。光秀隊が抜かれた場合や比叡山の僧兵なんかが光秀隊の目を掻い潜って逃げてきた場合、対応する立場だ。かなり楽な仕事だ。俺たちはもっと前線で戦う部隊なんだけどな。


 そのさらに後方。織田軍総本陣。


「これが俺の為すべきこと。この先に俺の天下がある」


 信長はそう言い聞かせるように、他の誰にも聞こえない声で呟く。そしてーー


「明智・佐久間両軍に告ぐ!! 比叡山に、火を放てェ!!!!」


 信長が悪名を後世に広める原因となる、比叡山の焼き討ちが始まった。

駆け足ですみません!!

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