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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 3章 『天下に向けての第一歩』
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第140話 鹿島新當流と友人の討ち死に

「”天之巻切”!!」

「”薙之太刀”!!」


 剣聖と俺の鹿島新當流の奥義が火花を散らす。


 修行が始まって約2か月。一度岐阜に戻ったとき以外は毎日、剣聖流指導を受けている。剣聖、マジバケモン。80越えの老人のくせに体力無尽蔵かよ!!


 肝心の剣聖流指導の進度はというと、基礎はほぼマスターした。流派は違えど、俺だって今まで剣術はかなり真剣に打ち込んできた。簡単な型くらいは特に躓くことなく習得した。だが鹿島新當流は剣聖自ら作り上げた流派ということで基礎の型からも学べることは多かった。


 そして問題の応用技だ。”二之太刀”なんかはまだよかった。二連撃ってだけだったし。でも”六之太刀”まで行くとかなりきつい。お察しの通り、6連撃だ。でもこれもまだ良い。それから”相車之太刀”やら”柳葉之太刀”なんかを経てついに鹿島新當流の大きく分けて3つの中のひとつである「面之太刀」がマスターとなる。文句を言ったもののここまでは比較的、スムーズに進んだのだ。理由は最難関の”一之太刀”を俺が既に使えたから。


 ここからが本題だ。あと2つの「中極意」「大極意」、これが曲者だった。中極意は型というより返し技なんかのより実戦向けの技術といった感じだ。だがこれは剣聖監修であることを忘れてはいけない。この「中極意」こそが剣聖を生涯無敗たらしめている大きな要因なのだ。当然、その難易度は今までの俺のものとは比べ物にならない。


 そして「大極意」。剣聖が独自に編み出した、鹿島新當流の神髄ともいえる技たち。大技が多いイメージ。やばい技多め。なんでこんなに説明がぽわぽわしてるかというと俺もまだ全然わかってないから。



「やはり千代松は筋がいいのう。覚えも早い。儂の育てた弟子の中で一番じゃ」


 休憩時間になって剣聖が褒めてくれるが、剣聖との立ち合いによって息切れした俺の体はそう簡単には戻ってくれない。だいたいなんであれだけ動いたのにそんなに平然としてられるんだ。俺だって体力はある方だと思っていたのに。


「さ、もう一本行くかの」

「ちょ、ちょっと待って・・・・・・もう少しだけ休憩を・・・・・・」

「何を言う。儂の人生はもう短い。1秒も無駄にできんのじゃ」


 そう言われると文句言いづらいだろうが!! 俺は観念して木刀を手に剣聖を追いかけた。



「“乱之太刀”ッ!!」

「甘いわッ!! “実地天道之事”!!」


 俺の繰り出した決死の中極意七条“乱之太刀”が剣聖の大極意にいなされそのまま木刀を首に突きつけられる。

 はい、連敗記録更新。っていうか一度も勝ってない。俺の人生においてここまで連敗したのは伊賀の忍びの里に行ったばかりの頃に丹波にボコボコにされた時くらいだ。


「今日はこのくらいにしておこうかの」

「は、はい。ありがとうございました」

「ほらさっさと戻って風呂じゃ。飯も用意するんじゃぞ」

「は、はい……」


 京都に家がない俺は剣聖の屋敷で寝泊まりしている。飯を作ることを条件に住まわせてくれているのだ。掃除洗濯もだけど。いい感じに雑用として使われている気がしなくもないが毎日朝から晩まで剣術に付き合ってもらっているのだからこれくらいはとも思える。


「大助の作る飯は変なのが多いが美味いのう」


 今日のレシピは自作のミートソースをご飯にかけて焼いたミートドリア。昔、といっても前世の時だが、1人飯でパスタにハマっていた頃に最強のミートソースが食べたくて自分で作ったことがあったのだ。結局、格安ファミレスの味にも届かず挫折したが。というか格安ファミレスが偉大過ぎた。


「実はそのソースキノコ入ってるんだけど」

「なんじゃとぉぉ!? 何というものを食わせやがるのじゃ!!」

「美味いんだからいいじゃねえか。文句言わずに食え」


 ちょっとからかってやろうと思っただけなのに、こんなガチで嫌がるとは。言わなきゃよかった。


「むうう、仕方あるまい」


 そう再びドリアを口に運び始める剣聖。さっきまで何も気にせず食ってただろうが。

 

 その後は風呂に入った後、入眠。朝早起きして翌日の修業が始まる。超スパルタだが、確実に実力が付いてきている。どんなものでも自分がうまくなったと感じることは楽しいものだ。



 そんな修行の日々がそれから数日続いたある日、俺のもとに信長から使者が届いた。一応、京で修業することは信長に伝えていたがいくら何でも期間が長すぎたことへの説教だろうか。


「坂井大助様、信長様からすぐに岐阜城に来るようにとの命令です。ご同行をお願いいたします」

「ああ、わかった。少々長居しすぎたしな」

「それと……」

「ん?」


 何やら使者が言いにくそうにしている。なんだ? 


「先日、近江国の坂本・宇佐山に浅井・朝倉両軍計3万が攻めてきた際……」


「宇佐山城を守っていた、森可成殿が、奮戦ののち、討ち死にとのことッ!!」

「……は? 可成が、討たれた?」

「敵3万に対し宇佐山城守備兵1千、奮闘ののち、全員が討たれたとのこと!!」


 使者が詳しい状況を説明する。まさか、あの可成が討たれるなんて。小柄だがすばしっこくて戦闘も強かった。それにあいつはいつもなんやかんや生き残るしぶとさがあった。それもあってか、全く想像していなかった。そうか、可成が……


「信長様は今後、浅井朝倉に反攻に転じるため岐阜に諸将を集めていらっしゃいます。なので、同行していただけますね?」

「ああ。可成の敵討ちだ」


 剣聖の修業に使っていた木刀を強く握りしめる。ここは戦国の世、いつだれが死ぬかわからない。武人であるのだから仕方ない部分もある。それでも友人が死ぬのは辛い。それに、敵は浅井長政。俺があの時、最初から実力を発揮できていれば、あの場で討てていたかもしれない相手だ。ある意味、可成は俺のせいで死んだともいえる。

 ならせめて、今度こそ。


「剣聖様、急用ができた。悪いが……」

「行くがよい。剣術の修業には実戦も欠かせぬ」

「ああ、また戻ってくる」


 剣聖に簡単に別れを告げ、俺はすぐに京都を立った。岐阜に集結する織田軍に合流して、浅井・朝倉を討つ。


 見てろよ、可成。すぐにお前の仇を討ってやる。

 

 






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