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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 3章 『天下に向けての第一歩』
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第129話 裏切りの背景と模擬戦

 信長は越前敦賀から柴田勝家らの配下と共に京へ逃げのびることに成功した。信長自身は浅井・朝倉と戦闘になる前に撤退したことで命の危機にまで陥ることはなかったが、残された坂井大助・徳川家康らは激しい戦闘ののち、なんとか京へ逃げのびることになった。


 今回の戦は惨敗だった。金ケ崎城は取ったものの浅井長政の裏切りにより、織田軍は全滅の危機に瀕した。

 実際、殿として最後尾で戦った前田利家隊、木下藤吉郎隊はほぼ全滅。浅井勢を正面突破したときの先陣であった坂井大助隊と徳川家康軍も大きな被害を受け、出陣時3万いた織田軍全体の死者数は5000人に上った。


 勢力図を見てみると、信長と同盟していた浅井長政が裏切ったことで北近江側に大きな脅威が出現したことになる。それに対し信長は近江宇佐山城に森可成を配備した。これまで警戒の必要のなかった北側に兵力を配備しなくてはならなくなったのは天下平定を目指す俺たちにとっては大きな痛手だ。


 だが当然、やられてそれで諦める信長ではない。約一週間後には信長ら織田勢は岐阜に戻り、浅井長政の居城である小谷城を攻めるための準備を始めた。

 これから浅井と戦になる。だが一つ問題があった。


「信長様、浅井に嫁いでいる市ちゃんはどうするんですか?」


 市ちゃんだ。浅井との同盟を強固にするために浅井長政に嫁いだ信長の妹である市。そもそも戦国の政略結婚は血縁関係で関係を強固にすることの他に、敵国に自国の姫を送ることでいわば人質のような側面がある。今の市ちゃんはまさに浅井に人質に取られているといって差し支えないだろう。


「……長政は市を殺すことはしないだろう。あれと市は相当仲睦ましいように見えた」


 結婚式の時は確かにそう見えた。だが、


「先の戦の時、市ちゃんは俺たちに危機を知らせる贈り物をしたでしょう? あれがバレてたら……」


 あの小豆袋は浅井からしたら必殺の裏切りを信長に知らせる利敵行為そのものだ。たとえ妻でも信長に情報を流すような危険人物を放置しておく道理はない。

 信長は懐から市ちゃんから送られた小豆の入った布を取り出し、じっと見つめる。


「大助、正直、俺は今余裕がない。市のことは心配ではあるが、浅井朝倉の脅威はすぐそこまで迫っておる。わかるだろ? 市のことを気にかけるほど、今は余裕がないのだ。それに長政は自分から裏切っておいて自分の妻を処刑するなど、不条理なことはせぬ、と思う」


 今回、浅井は朝倉と織田という二つの同盟国の板挟みにあっていた。そもそも朝倉を攻めるときは一報入れるっていう約束を破ったのは俺達だが……


「市のことはお前が心配することではない。大助は浅井との戦に備えろ。話は終わりだ」


 そう信長は強引に話を終わらせる。そう言われれば俺は勝手に動くことは出来ない。命令通り、隊の練兵でも行うとするか。


「ああ、そうだ。家康がお前と模擬戦をしたいと言っていたな。練習にはもってこいだろう。やってきたらどうだ?」

「家康が……面白そうじゃないですか」

「お前らが模擬戦をするなら俺も見に行こう。幼いころからお前たちは良いライバルであったからな」

「では早速、家康にその申し出を受けると書を送っておきましょう」


 家康からは明後日に行うと返信が来た。その日までに隊のメンバーを集めておかないとな。

 俺は屋敷に戻ると遼太郎らに隊長を集めるように指示を出す。

 集まった隊長らと氷雨・天弥に明後日、徳川軍と模擬戦を行うことを伝える。


「面白そうじゃねえか!!」


 と、大吾。


「また面倒なことを……」


 と、彦三郎。

 2人の反応はまさに対極。その他の常道、秀隆、悠賀、長利は特にこれといった反応はない。氷雨は相変わらずの無表情。天弥もここ数年で随分と落ち着いてきた。


「今回は俺たちの全軍3000名、家康殿も全軍の5000で戦う。いいな?」


 今度のみんなの反応は一様だった。「「はぁ!?」」と。


 翌々日、美濃国岐阜城から数キロ離れた地点にて坂井大助隊3000人と徳川家康軍5000人が向かい合っていた。


 俺の本陣は西側の小高い丘、家康は東側の山に陣取った。この二つの本陣の間には広い草原が広がっている。信長は南側にある廃城からこの模擬戦を見学するらしい。


 その信長の法螺貝の合図でこの模擬戦が開始される。


「作戦通りに動け!! お前たち、頼りにしてるぞ!!」

「「はいっ!!」」


 敵の配置は右翼に井伊直正、左翼に本多忠勝という二人の猛将を配備し、中央には酒井忠次と榊原康政を配置したバランス型。

 対する俺たちは中央に彦三郎と悠賀、右翼に市橋長利、左翼に大吾と秀隆、ついでに俺というかなり左に偏った陣形にしている。本陣には常道の隊100名しか配置していない。


 作戦は俺と大吾、秀隆の3隊で敵右翼の井伊直正を突破して先に敵本陣にいる家康を討つという単純明快な作戦だ。問題としては敵左翼の本多忠勝が味方右翼の長利を抜いて先に本陣を落とされることだが、長利が全力で防御すればかなりの時間を稼げるだろうと踏んでいる。長利が時間を稼いでくれればその間に俺たちは敵本陣を落とせる。


「二番隊!! 全軍突撃だァァ!!」


 大吾が指示を下し二番隊の突撃が始まる。敵の井伊直正も突撃してくる。

 俺と家康、大助隊と徳川軍、どちらが上か、今決まる。

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