表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 3章 『天下に向けての第一歩』
124/251

第123話 信長の子供たちと剣術の稽古

 葵丸の誕生からバタバタした日々が続き、岐阜城にも生誕の報告以外では登城できていなかった。

 そして10日ぶりくらいに岐阜城に行くと、


「大助様、僕たちに稽古をつけていただけないでしょうか!!」

「へ?」


 そう俺に城の中庭で声をかけてきたのは信長の息子の三兄弟、奇妙丸、茶筅丸、三七郎。手には木剣を持っている。話しかけてきた先頭の奇妙丸に問いかける。


「俺でいいんですか? それに、俺の専門分野は銃なんですが」

「いえ、父上から大助殿の腕前は伺っています。もちろん銃の腕前もですが剣術の方も、剣聖・塚原卜伝様の認可を貰っていると……」

「まあ、そうなんだけど……教えられるかどうかはちょっと……」

「手合わせしていただけるだけでも……」

「わかりました。できることは致しましょう」

「「ありがとうございます!!」」


 3人が嬉しそうに声を合わせてそういった。


 教えるといっても俺の剣術はいろんなものがごっちゃになっている。最初に尾張で習った陰流を基礎に伊賀で習った忍者流の剣術、剣聖の鹿島新當流とごっちゃ混ぜだ。教えるのには向かない。


「素振りとかはもうやったんだよな? じゃあ打ち込み稽古にしよう。まずは一人、俺とやって残りの二人で軽く手合わせしましょう」

「「はいっ」」

「最初は僕が」

「わかりました。じゃあ茶筅丸様と三七郎様で手合わせしていてください。3分間で交代しましょう」

「「はいっ」」


 俺の正面に立ち上段に木剣を構える奇妙丸。俺は居合に刀を構える。


「では、はじめッ!!」

「はァッ!!」


 開始の号令と同時に素早く切り込んでくる奇妙丸。間合いはギリギリ俺に届くくらいだ。俺に居合に構える刀を抜いて受けさせるのが目的だろう。普通の人なら反射で受けてしまう所だろうが俺は違う。俺はわずかに下がりギリギリでかわす。


「なッ!?」

「まだまだ甘いな。ほいっ」


 振り切って隙が出た奇妙丸。そこに俺は刀を振るう。狙ったのは振り切った後の木剣だ。そこに強く木剣を打ち付け、奇妙丸の木剣を弾き飛ばす。


「え、あっ!?」

「これでおしまいっ!!」


 こつんと木剣を奇妙丸の頭に打ち付ける。


「勝負ありだな」

「はい。参りました」

「あの一撃を俺が受けてからの作戦は組み立ててたんだろうけど、あれは避けるほうが簡単で相手にも隙が生まれる。っていうかだいたいの攻撃は避けたほうがいいんだ。攻撃直後の敵の隙をつけるから」

「なるほど……」

「さて、あっちは……」


 俺が茶筅丸と三七郎の稽古の方を見る。二人は力任せに思いっきり打ち合っている。あんなやり方してたら木剣も痛むし、ケガもしやすい。ここは止めたほうがいいな。二人の間に入る。


「それまで」


 2人はおとなしく剣を引いた。


「二人とも力が入りすぎだ。思いっきり振ればいいってわけじゃない。ずっと力を入れてると疲れるし、細かい動きがしにくくなる」

「はい」

「じゃあ、次。どっちだ?」

「僕が」

「いや、僕がっ」

「ん?」

「あ?」


 2人が睨み合う。茶筅丸と三七郎は仲が悪いのかな。


「はい、じゃんけんな」


 じゃんけんの結果は茶筅丸の勝ち。


「茶筅丸様ですね。三七郎様と奇妙丸様で手合わせしていてください」

「「はいっ」」


 そして俺は茶筅丸と正面から向かい合う。

 

「じゃあ、始めるぞ。はじめっ!!」


 奇妙丸同様、即座に打ちこんでくる茶筅丸。その振り方はさっきの三七郎との立ち合いの時とは違い力の入れ方もちゃんとしている、きれいな一撃だ。俺は伊賀で習った剣術の技である受け流しでその一撃を流す。


「うえっ!?」

「いい攻撃だ。だが」


 俺は受け流した体制のまま刀の柄で茶筅丸のお腹に軽く打ち付ける。


「重心が前に行きすぎ」

「くっ……参りました」


 最後は三七郎。この子は奇妙丸、茶筅丸とは母親が違うので少し顔立ちが違う。でもどことない信長さを感じる。


「はじめ!!」


 三七郎も前の二人同様早めの縦切りを繰り出してくる。でも前2人の忠告を聞いていたのだろう。重心は前に行きすぎず、力も適度だ。

 でもそういう基礎はしっかりしてるけど凡庸な一撃の対処は容易い。剣道で言うならただの面だ。前進しながら頭上の木刀で一撃を受け、返しで胴に一撃。


「ちょっと工夫しろ。もう少し間合いの詰め方とかあるだろ」

「はい」

「フェイント入れるとか……あ、フェイントじゃ伝わらないか。攻撃するように見せかけて相手の隙を作ることなんだけど。あとは頭に行くと見せかけて逆胴に行くとか」

「なるほど」

「奇妙丸と茶筅丸も聞け。真っ正面から斬りつけるだけが剣術じゃない。確かに素振りとかで一撃の強さを追い求めるのも悪いわけじゃないけど、攻撃は当たらないと意味はない。戦場ではより実践的な剣が求められるからな。返し技や抜き技とかの攻撃を受けそうになった時の対応技も身に着けておくべきだ」

「なるほど……」

「じゃあ、早速練習しよう。俺が正面の面を打っていくからそれを返し技か抜き技か、もしくは出鼻技でもいい。なんでもいいから当てられずに俺に攻撃をあてろ。まずは三七郎から」

「はいっ!!」


 三七郎は俺が正面に放った一撃をさっき俺がやったように返しで胴にいこうと試みる。だが俺との距離が近すぎて上手く決まらない。


「返し胴は一回受けてから胴に行くからタイミングがむずかしいんだ。まずは抜き胴からやってみよう。抜き胴は相手の面を右に抜けて避けながら胴に行くからタイミングを合わせやすい。あっ、タイミングっていうのは機のことな」


 その後は奇妙丸、茶筅丸と稽古を続け、明日は銃を教えるという約束を交わして今日の稽古はお開きとなった。後半は返し技の練習と称して動く打ち込み台とかしていた俺。ところどころ痛む体を抑えつつ屋敷に帰った。


 祈と夜ご飯を食べつつ今日あったことを話した。祈の笑顔を見てたら、痛みはだいたい吹き飛んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ