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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 3章 『天下に向けての第一歩』
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戦ガンex ノブナガナイカクソウリ

 俺の名は織田信長。朝起きたらどこか知らない場所にいた。天井には見慣れない派手な照明がついている。たくさんの半透明の花の装飾の中に光の球体がついており、実に美しい。岐阜城に取り入れてもよいかもしれぬ。


 そんなことを考えている場合ではなかった。ここはいったいどこだ? 俺は上洛のため六角氏を倒す戦の最中のはずだ。敵国の陰謀? いや、そんなわけない。俺をわざわざこんな所まで運ぶくらいなら殺した方がいいだろう。周りを確認すれば壁には実に素晴らしい絵がかけてある。素晴らしい絵師の作品なのだろう。実に欲しい。


 そんなことを考えている場合ではなかった。冷静になって周りを見渡せば何かに目が留まり、思考が途切れる。だが不思議な点がいくつかあることに気が付いた。まず、扉がない。どこを見渡しても壁だ。いたるところに装飾がされておりどこかが開くとは思えない。


「あなた!! まだ寝ておられるのですか? 朝食が冷めてしまいますよ!!」

「ッ!?」


 唐突に外からそんな声が聞こえるとともに、金の棒が装飾された壁がギギッとこちら側に開き、不思議な服を着た中年の女性が現れる。反射的に枕元に置いてある短刀を取ろうと手を動かすもそこにはふかふかの布団があるのみ。そんな信長をよそに中年の女性は言葉を続ける。


「早く食事処に来てください。本日はあなたがお好きなだし巻き卵もございますよ」

「……」


 俺は別にだし巻き卵が好きではないが。それにこの中年女性の口ぶりにどこか違和感を覚える。だがそんな信長を中年女性は少し不思議そうに首を傾げたが、「昨日の疲れが残っているのでしょうか」と勝手に納得して去って行った。


 どういうことだ。どういう状況なのか全く掴めない。俺を誰かと勘違いしているのか? 少なくともあの女性には俺に対して殺気はなかった。腹は減っているし、ひとまずその食事処に行ってみるとしよう。情報も集めなくてはならんしな。


 部屋を出てまず驚いたのは正面に見えた街の景色だ。俺の知っている場所ではない。信じられないほど高い建物が立ち並んでいる。そして外の景色を見ていると家の壁が透明なことに気が付きさらなら驚愕が信長を襲う。


「ど、どういうことだ……?」


 ここは明らかに俺のいた国ではない。さっきの女性の服装と言い、ここは南蛮人どものいる国なのだろうか。だとしたら国に帰るのにどれほどの時間を要するのだろうか。


「い、今は食事だ」


 そう信長は自身に言い聞かせ、食事処を目指して歩き始めた。


「迷った」


 そもそも信長は食事処どころかこの家のことを何も知らなかった。厠がなくて一時的に危なかったがそれっぽい所でだしたら勝手に便が流れて行って厠でもぶったまげた。


 そうしてうろうろしていると人とばったり出会った。先程の女性だ。


「あなた、何をしておられるのですか!! 食事処へ行きますよ!!」

「あ、ああ」


 探させてしまったらしい。こんなに広い家だ。探すのは大変だっただろう。少し申し訳ない。


 この女性のおかげで無事に食事処についた。そこでさらに驚かされた。


「うまい!! 絶品だ!!」

「あら、そんなに褒めてくださるなんて珍しい。いつもと大して変わりませんが」

「いつもこんなにうまいものを食っているのか!! うむ。そなた、城に来ないか?」

「城?」


 城は伝わらないらしい。


「うむ、岐阜城にこないか?」

「あら、旅行の話ですか? しばらくは忙しくて無理でしょう? ですが、いずれ時間に余裕ができたら岐阜城にも行ってみたいですね」

「そ、そうだな」


 全然伝わらなかった。ひとまず諦めよう。

 とりあえず食事を食べ終え、何やらクソ苦い飲み物を飲まされて「毒か!?」と疑い、その飲み物に砂糖と牛の乳を大量に入れて素晴らしい飲み物に変わったものを飲んでいると何やら黒い変な服を着た男が部屋に入ってきた。


「総理、本日の御予定の確認に参りました」


 ソウリ? 俺はそんな名前ではないが。よほどそのソウリという人物と似ているのだろう。


「よろしいですか?」

「ああ」

「本日は午前中は参議院の決算委員会、移動中に昼食を取り米国硫黄島協会の表敬、在京イスラム諸国外交団とのイフタールです。あと30分ほどで出発致します」

「あいわかった」


 いろいろわからないことがあったがとりあえずそう返事をしておく。とりあえず外に出るならここをいろいろ見て回るいい機会だ。


 とりあえず顔を洗おうとさっき迷っていた時に見つけた洗面台へ向かう。ドアを開けるとそこにはきれいな鏡が。


「おう、素晴らしい……ん?」


 信長は鏡に映った自分の顔を凝視する。


「誰だ、これは……?」


 そこに映ってい信長の知らない男。信長が右手を上げるとその男も右手を上げる。左手、左手。ジャンプ、ジャンプ。そして信長渾身のきめポーズ、鏡に映るおじさんがきめポーズした。このキレ、間違いなく本物。


 つまり、この鏡に映っているのは、信長だということになる。


「どういうことだ!? 何かがおかしいとは思っていたが……」


 しばらく呆然としていたが、結局顔を洗うことは忘れてひとまず最初に目が覚めた部屋に戻った。少し高い位置にある布団に腰を下ろし、一度、冷静になって状況を正しく理解する。


 目が覚めたら知らない場所。利家や恒興はおらず、変な恰好をした女性のみ。見たことのない照明、絵画、料理、設備。


「どうしたら、戻れる?」


 そもそもどうしてここにいるのかわからない。どうやってきたかもわからない。本当に何もわからない。今できるのは情報を集めることのみ、だと思う。


「総理、お時間です」


 先程の予定を話した男の声がした。今は騒ぎは起こさずにこの国の状況を探ろう。


「あいわかった」


 そう言って部屋の外に出ると、


「そ、総理……。その恰好で出かけるつもりですか?」

「ん? あ……」


 そういえば、寝間着のままだった。


「ちょ、ちょっと待て!! 今着替える!!」

「は、はい」


 部屋にある服を漁るが出てくるのは黒い上着と白い服ばかり。和服はぜんぜん出てこない。


「おっ、あった」


 出てきたのは赤と白の派手な和服だ。これなら着方がわかる。ひとまずこれを着て出かけることにしよう。


「え”ッ!?」

「ん? これじゃダメだったか?」

「ダメということはないですが……」

「では、これで行こう」


 なぜか渋い顔をしている男に早く連れて行くように促す。その男は数瞬固まっていたが、「まあいっか」とつぶやくと、「こちらです」と俺を謎の黒い箱の所へ連れて行った。


「どうぞ」


 そう、扉を開けて乗るように促す。下の方を見れば車輪がついている。車か。


「馬は?」

「馬?」

「ん? 牛だったか?」

「牛?」

「……? 何で動くのだ?」

「ガソリンですが?」

「がそりん?」

「……(何言ってんだ?)」

「……(そういう動物がいるのかな?)」

「とりあえず乗ってください」

「……あいわかった」


 車はゆっくりと動き出す。がそりんという動物の姿は見えない。速度もかなり早い。周りにも同じような車がたくさん走っている。やはりがそりんという動物の姿は見えない。もうよくわからん。今日、朝起きてからわからないことが多すぎる。


「まもなく到着します」

「ああ」


 到着したのは白い石造りの建物だ。


「素晴らしい……まさに、白亜の殿堂」

「そうですね……」


 これからここのサンギインという場所で話し合いをするらしい。全くわからんがとりあえず頑張ろう。



 4時間後、疲れた。だがこの会議でわかったことがある。多分俺の体の人はあの中で一番偉いんだと思う。それだけあって話しかけられることも多く非常に大変だった。


「次は官邸に戻って表敬です」

「またあれに乗るのか?」

「ええ」


 また車に乗って最初の家に戻る。あの家は家であり正式な場でもあるようだ。それならあの広さも納得だ。

 車を降りると行くときにはいなかった大量の人が。パシャパシャという音と光が……


「なんだ?」

「新聞記者ですね。今日は何の件でしょうか?」


 何聞かれても答えられないんだけど……?


「首相!! 平和永劫党の賄賂問題についてお話を!!」

「賄賂を渡していた議員にどんな処遇にするか教えてください!!」


 賄賂の議員の処遇か……


「……切腹だ」

「せ、切腹!?」

「厳しすぎませんか!?」

「ち、ちなみに受け取った市長は?」

「島流しだ」

「そんな刑罰はありませんよ!!」

「しかも厳しすぎです!!」


 ダメだったっぽい。


「じゃ、じゃあ今後の日本の年金制度について……」

「ネンキン制度?」

「はい、老人の増えすぎで労働者の負担が倍増している問題が……」


 なるほど……働けない老人の保証を労働者から国が金を集めてやっているということか……。


「廃止だ」

「は?」

「は、廃止ですか?」

「自分のことは自分で面倒みるのが世の鉄則だ」

「むう……」

「そろそろお時間です」

「じゃ、そろそろ行くわ」


 呆然とする機械を持った男たちに別れを告げ、次の仕事の場所へ向かった。


 米国硫黄島協会の表敬は滞りなく終了し、在京イスラム諸国外交団とのイフタールになった。正面に座っているのは他国の要人らしい。その周りを守備する銃を持った兵士たち。

 ……ん? あの銃、大助が持っている物に似ているな。このレベルの文明で使われている銃と同レベルの銃を自分で作り上げた大助のすごさを改めて思い知る。

 

 随分いかつい他国の要人と通訳を通して話をした。あっちの方は戦をしているから今後とも仲良くしようねって話だった。この国の軍で助けようかって言ったら周りの人が全力で止められた。


 その後は法務大臣とやらと話をした。なんでも今の法務大臣はある仕事ができないらしい。


「仕事しろ」

「無理ですぅぅぅ!!」

「仕事しろ」

「だから無理ですってぇぇぇ!!!!」

「働けよ」

「私、死刑執行の命令だけは無理ですぅぅ!! 私の手で人の命を奪うなんてぇぇ!!」

「すでに許されざる罪を犯し死が確定している者たちだ。お前が殺すわけではない」

「でもぉぉ!!」


 信長は待つのが嫌いな性格だ。だから、こうなる。


「もういい。お前クビ。俺が法務大臣もやる。いまからこの書類すべてにハンコを押す」

「え、ちょ、ちょ!! そんな簡単に……」

「どうせ誰かがやらなくてはならない仕事だ」

「ッ!! ……すみませんでした。私にやらせてください。甘えてました。未来の人たちに苦しみを押し付けようとしました!! 私がやらないと……!!」

「……それでいい」


 信長は多少乱雑で乱暴でいい加減な所があるが、確かに持つものがある。それが、これだ。人を変える力。正確に言えば変わるように促す力。その力にかつて、竹千代も犬千代も救われた。

 体が変わろうともそこは変わらない。今、法務大臣はその力に変えられた。大変優秀で有名な本当の総理にもできなかったことだった。



「はぁぁーーーー、疲れた。あれだけの仕事量……この体の主を少し尊敬するぞ」


 この世界で始めて目覚めた場所に寝転がりそう嘆く。瞼が重い。今日一日で覚えた時計の読み方に従い、時計を読むと時刻は23時58分。

 急激に瞼が重くなっていく。カチ、カチと時計の音が響く。そしてそのすべての針が重なると同時に、信長は眠りに落ちた。

 

 次に信長が目を覚ましたとき、信長は近江侵攻の宿泊地である近江高宮にいた。布団は固く、壁に装飾はない。あれ? なんでこんなこと考えてるんだっけ? 布団の柔らかさ? 壁の装飾? いったいどんな? 信長は薄れる記憶を保つことは出来なかった。


 エイプリルフール特別編です。

 信長が現代の総理大臣と入れ替わるお話でした。本当は現代に転生するだけの話を書こうかと思ったんですが、インパクト足りないなって思って総理大臣にしました。

 いろいろ調べながら書いてたら間に合わなかった……!! ごめんなさい!!

 いずれ信長以外の人が現代に行く話も書きたいですね。誰の話が見たいか是非教えてください!!


 




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