第11話 メイドと忍者学校
「だれぇぇぇぇ!?!?」
俺の目の前には和服に頭に手ぬぐいをまいた少し年上だと思われる美少女。
俺が家を間違えたのかと思ったが、さっきこの美少女はこう言った。
「おかえりなさいませ、ご主人様」と。
メイドかよ!?そのセリフ!?逆にそれ以外で聞かねぇぞ?そのセリフ?
待て待て、いったん落ち着け。とりあえずこの美少女に話を聞こう。
「えっと・・・」
「はい、ご主人様」
「な、なんでここにいるの?」
「それを知るにはこれを呼んだ方が早いかと」
そういって美少女は一枚の手紙を取り出す。その手紙は信長からの物だった。
「今きっとお前は驚いていることだろう。新居にいきなり可愛い女の子がいて。」
ああ、驚いてるよ。
「そこにいる超絶美少女はお前を驚かそうと思って爺に用意させたものだ」
それだけのために!?それにも驚きだわ。
「きっとお前は今、「それだけのために!?」と思っているだろう」
思ってるよ。俺の思考読めてるのか?
「もちろんそれだけではない。その超絶美少女は家事万能でお前と年が近くて超絶可愛いという条件で尾張国中を探し回って見つけたスーパーレアな女の子だ。もちろん探したのは爺だがな」
爺、かわいそうに。いつも働きすぎてるくらいなのにこんなことまでさせられるなんて。
「とにかくお前が修行で大変だろうから家事とかをする人がいるだろうということで俺が用意した。好きに使え」
なるほどね。確かにありがたい。俺は料理はあまり得意ではないし、掃除や洗濯も好きではない。それに家に女の子と二人……
「好きに使えとは言ったがあんまり嫌がることするなよ?エッチなこととかな」
しねえよ!!まだ9歳だし!!ちょっと考えてしまったのは内緒。
「とにかく、お前は将来俺の優秀な武将になるからこのくらいの待遇は当然だ。遠慮せず受け取っておけ」
これも信長の気持ちの伝え方なのだろうか。贈り物ってのはあるあるだが女を送るのはどうなのだろうか?戦国時代ならあるのかな?俺は人をモノ扱いするのがちょっと気に食わないが文化の違いなのだろうか。
「つまり君は俺の世話を焼いてくれるってこと?」
「はい。その通りです。料理に洗濯、掃除、マッサージから刀のお手入れまで何でもできちゃいます」
「へえ、凄いね。ちなみに裁縫できる?」
「はい、もちろんです」
「じゃああとでお願いしていい?」
「わかりました。では食事の準備ができておりますので」
「おお、マジで?」
「はい、マジです。こちらへどうぞ」
テーブルの上には白米に味噌汁、漬物、焼き魚、大根おろし、サラダなどが並んでいた。
「おお、凄いね!」
「そう言ってもらえてうれしいです。どうぞ」
「いただきます!」
メイドだから一緒に食べれないというありがちなパターンあるかと思ったが普通に同じものを一緒に食べ始めた。
「ん!この味噌汁おいしいね。濃さもちょうどよくて」
「ありがとうございます。そういえば何か嫌いなものとかありますか?」
「いや、だいたいなんでも食べれるよ」
「そうですか、わかりました」
しばらく無言で食べているとふと気になることがあった。
「そう言えばまだ名前聞いてなかったね」
「あ、そうですね。私は祈といいます。これからよろしくお願いします」
「僕は千代松、坂井千代松だ。こちらこそよろしく」
こうして俺は信長のサプライズにより超絶美少女と暮らすことになった。
翌日、俺は作ってほしい服の設計図を祈に渡してから、学校へ向かった。
忍びの学校は校舎自体は前世の学校と比べ物にならないくらい小さいが、敷地は前世の学校と比べ物にならない程広い。修練場や手裏剣の練習場などがあるからだ。
この学校は9学年ある。前世の小学校と中学校を合わせた感じだね。最初の3年は主に体力づくり。その後3年は基本的な忍者の技術の習得。最後の3年は自分の得意な忍術を極める。その忍術は生涯、忍者として名乗る時に言うんだとか、言わないんだとか。
クラスメイトは俺と丹波含め6人。ずいぶん少なく感じるがこのクラスは多い方だそうだ。一人もいない学年とかあるらしい。俺みたいな転校生は相当珍しいらしく学校中で話題になっていたらしい。恥ずい。
俺は3年生に転校だ。もうあと2月で4月なので進級だが。つまり体力づくりをほぼすっ飛ばして忍者の技術の習得から入ることになる。まあ体力は十分つけてきたし大丈夫だろう。なんて甘い考えは今日1日の授業で打ち砕かれることになる。
1限目、グラウンドにて足音を立てずに全力ダッシュ10分×3本。足音を立てると(先生に聞こえると)腕立て10回。これがやばい。そもそも全力疾走なんて1分持たないし足音を立てない走り方なんてそもそも知らない。腕立て200回はした。途中に丹波に足音を立てないコツを教えて貰わなかったらこの倍は腕立てすることになっていただろう。
2限目はひたすらジャンプ。棒を跳び越すだけ。俺以外の5人は平気で1メートルを軽く飛び越える。コツなどはないらしくただ練習あるのみらしい。どうしたらそれで1メートル飛べるようになるのか。ちなみに丹波は3メートル以上飛んでいる。先生は4メートルほど飛んでいる。どうしたらこうなんねん。ちなみに俺の今日の記録は50センチ。
3限目は剣術。忍者の剣術は武士のそれとはまるで違った。まず刀自体が違う。武士の刀が反っているのに対し、忍者の刀は反っていない。そして武士は刀を腰の横にさすが、忍者は腰の後ろにさすのだ。剣の扱いがまるで違った。
そして食事をとった後に昼休み。何やら鬼ごっこをするらしいので入れてもらったらレベルが高すぎた。いろんなとこから消えたり、出てきたりする。
4限目は手裏剣の実技。手裏剣というと丸くてトゲトゲしたやつを想像するかもしれないが実際に使うのは棒手裏剣だ。丸いヤツも使わないことは無いらしいが、扱いずらく、使う人はかなりのもの好きだけらしい。
そんな感じで疲れ果てて帰宅。正直忍者の体力なめてました。
「ただいま」
「おかえりなさいませ。ご主人様」
祈が出迎えてくれる。メイド服で。
「おお…!」
つい感嘆の声が漏れる。
「もう出来たのか…!」
察しの通りこのメイド服は俺が頼んで作ったものだ。いや、男なら誰しもこういうのに憧れたことがあると思う。実際に見ると、すごくイイ。アニメくらいでしか見たことのなかったメイドさんが今実際に目の前に・・・!! ちょっと感動。
「こういう格好が好みなのですか?」
祈が純朴な目でこっちを見ている!!なんか罪悪感。
「うん、なんというかね、これは男のロマンというかなんというか・・・」
「そうなのですか、それはよくわかりませんが…これはこれで可愛いですね」
「だろ?じゃあこれからはその服で」
「え?・・・まあ割と機能性も高そうなので別にいいですけど」
やったぜ。
こうして俺の家にメイドがいる新生活が幕を開けた。




