第10話 忍者の里
PV8000ありがとうございます!!
伊賀国へ行くには那古野港から船で伊勢国に行く。そこからは馬で伊賀までだ。師匠が伊賀まで一緒に来てくれるらしい。
港までは信長と利家が見送りに来てくれた。
「わざわざ見送りに来ていただいてありがとうございます」
「いいんだ、千代松は友達だしな」
「そうですね、利家。帰ってきても仲良くしてください」
「もちろんだ」
信長は何やら少し複雑な顔をしている。なぜだろう?信長の勧めで行くのに。
「千代松、必ずや俺のもとに帰ってこい。俺のもとで大手柄を立てれる立派な男になって帰ってこい。そして俺の天下取りの助けになれ」
「はい!!」
「では、いってこい」
「はい、行ってきます」
「一巴、千代松を頼むぞ」
「お任せを」
船に乗り込む。信長も最後は笑顔で見送ってくれた。
6時間ほどで伊勢の港についた。今日はここに泊まり、明日馬を調達して伊賀へ向かう。
「師匠、凄いですね!商人たちがいろんなんものを売ってます!」
「そうだね。今日の夕飯はどうしようか」
「悩みますねー」
そんな感じで伊勢の港町を探索する。夕飯は立派な魚があったのでそれにした。
翌日、馬に乗り伊賀へ向けて旅立った。
伊賀へ向かうには山道が多く10日ほどかかった。
そして11日目、伊賀国に入った。
伊賀国の俺の第一印象は秘境の村といった感じだ。木々に囲まれ、たまに神社なんかがあったりする。
そしてだいぶ山道を進んだところに集落があった。そこに入り、迷わず一番奥の少し大きめの建物に向かう。そしてノック。
「入れ」
低めの声。
中に入ると髭おやじが奥に偉そうに座っていた。
「橋本一巴よ。そいつか?稽古をつけてほしいというガキは」
「はい。千代松、この人がこの里で長を務める百地政永だ」
師匠が教えてくれる。
「坂井千代松です。よろしくお願いします」
「ほう。今いくつだ?」
「9歳です」
「それで橋本一巴の試練を突破したと」
「はい」
「なるほど、確かになかなか見どころがある。だが一定以上の力がないとこの里ではやっていけない。その力を見せてみろ」
つまりは入学試験みたいなもんね。何すればいいんだろ?
「丹波!相手してやれ!」
「はい!父上!」
「千代松、こいつは百地丹波。俺のガキでまだ9つだがなかなかやるぜ?天才だと里でもてはやされてる」
俺は丹波の方を向いてぺこりと頭を下げる。相手も慌てて返してくれる。
「では、外の修練場に行け。そういえば千代松は銃使いって話だったか?銃は使ってもいいが実弾はダメだぞ。わかったな?」
「はい」
ペンキ弾(厳密にいえばペンキではないが)は持ってきている。それでやることにしよう。
外の修練場は森の中にあった。というより森そのものである。忍者の修練場は森なのだ。範囲は決められている。20メートル四方くらいだろう。
これはステージが不利すぎるな。遮蔽物が多いため銃はあてずらい。逆にあっちは足場がいっぱいあって戦いやすいだろう。明らかに不利だ。
「それでは10秒後に始める!」
今俺は丹波と10メートルほど離れて向かい合っている。あっちが持っているのは短剣だ。そのほかにもいくつか装備している。こっちは両足に銃を装備しているのと手に持っている銃で3本。なかなか重い。動き回って勝つのは無理な重さだ。橋本一巴の試練の時は動かずとも動物が寄ってきてくれたので戦えていたが、今回は違う。あと腰に刀が大小2本。
「では、はじめっ!!」
号令がかかった瞬間、丹波が消えた。開始直後に撃ってやろうと思っていたのに、早速見失った。銃を背中に担ぎ、刀を抜く。どこから来るのかわからないので背中を木につける。これで後ろから攻撃はなくなった。と、思った瞬間吹き矢が飛んでくる。
「わっ!?」
慌てて刀ではじく。あっちにも遠距離攻撃があったのか。厄介な。
また飛んでくる。それをはじく。
今のでわかった。あっちは俺の死角を縫って移動してるだけで、目で追えない早さじゃない。つまり前にいたのにすぐ後ろにいるとかいうアニメみたいなことは絶対に起きないということだ。そうと分かれば。刀をしまい、銃を背中から抜く。
また吹き矢。それを避ける。そして即座に撃ち返す。外した。奥の木に色が付く。
「早えな」
リロードしながら次に出てくる場所を探す。
来た!!左側から人影が出てくる。それを狙い撃つ。当たった。だがそれは丹波ではなかった。木でできた偽物。身代わりの術!?本物は??
その時、殺気のようなものを感じた。感じたような気がしただけ。ただの勘だ。それに従い刀を上に振るう。金属音がして上から来た何かをはじいた。
「マジかよ?なんでわかった?」
「ただの勘だ」
上から来た何かこと丹波は俺に攻撃を防がれたことに驚きを隠せないでいる。
「そうか、勘か。それじゃあ、次は防げないぜ?」
「その前に仕留めてやるよ」
「できるかな?」
そう言い、丹波は再び消える。
こいつは俺の死角を移動して俺の隙を狙ってくる。ならどうすればいい? 障害物を無くせばいいんだよ! 俺は背中をつけていた大木を一太刀で切り倒す。そして近くにある木をそのほかに数本切り倒す。俺の周りだけが開けた土地になった。これで俺の死角を移動しようとすれば必然的に俺の遠くを通ることになる。近づこうとすれば俺に見つかる。これなら勝てる。銃をリロードし周りを警戒する。
「それで俺に勝ったつもりか?」
声が聞こえる。まだ遠い。
「近くに遮蔽物がないなら作ればいいんだよ!!」
その言葉と同時に俺の周りに煙が立ち上る。煙幕か。非常にまずい。銃は狙えない。どこから来るかもわからない。だが相手も俺が見えないし、もちろん遠距離武器は使えない。
耳を研ぎ澄ます。足音を探せ。もう頼れるのは聴覚のみ。わずかでも勝てる可能性に賭けろ。
聞こえる。落ち葉を踏む音。だんだん近づいてくる。
「ここだっ!!」
足音の方向。渾身の1発。
パァァーーン!!
それと同時に煙から丹波が出てくる。左手に握っているもう1本の銃を撃とうとするがもうその時には俺の首には短刀が後ろから突き付けられていた。
「参った」
負けましたよ。見事に負けました。俺の渾身の1発は腕にかすっただけでした。
「お疲れ、千代松」
「はい師匠。今回は完敗です。今の試合、どうでした?」
「そうだね、もともと忍者も森の中の戦闘もどちらも銃使いには相性が悪いからね。善戦したほうだと思うよ?煙に巻かれたときにはもうほぼ負けてた」
「ですよねー」
師匠と今の試合について話していると、丹波が来た。
「お前強いな!ほら見ろよ!」
そういって腕に赤く色のついた戦闘服を見せる。
「お前よく当てれたな。俺に攻撃あてる子供なんて少なくとも俺は知らないぜ?なんで当てれた?」
「足音と気配でどこにいるか探ってそっちの方向に撃ったんです。当たればいいな、くらいにしか思ってなかったです」
「そうか、足音してたか。できるだけ消してたんだけどな」
そう悔しそうにしている。そこに政永様が来た。
「今の勝負、千代松が負けはしたが、試合の内容を考慮しこの里で修業を受けることを許可する」
「ありがとうございます!」
良かったーーーー。これで尾張に帰れ!とか言われたら信長様に合わす顔がないからな。
「丹波、お前もまだまだだな。もっと修行を詰め」
「はい!父上!」
「では千代松を家まで送ってやれ」
「はい」
丹波に案内された家は2LDKの一軒家だった。隣に工房が付いている。慌てて増設したのだろう。工房だけ新しい感じがした。
「千代松、明日からは俺たちと修行だ!明日8時に里の学校集合な!」
そういって丹波は去って行った。
今日は疲れたな、早く寝よう。そんなことを考えながら家に入るとそこには頭に手ぬぐいをまいた和服の女性が待っていた。
「え?」
「おかえりなさいませ。ご主人様」
「誰ぇぇぇーーーー!?!?」