第8話 事件 エレナ 02
一週間後、王宮内の会議室にて
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「・・・この度の第3王女誘拐並びに近衛兵長のダレン・オーウェル殺害事件に関するこれまでの報告となります」
ここまで秘密裏に捜査を進めてきた宰相からの報告に王は大きくため息をつく。
「ふぅ…… まさかこのようなことが起こるとはな……。だがこれではっきりした。 あの化け物は我が国に害をなす存在だ! 早急に対処せねばならぬ」
王はそう言うと会議場にいる者たちに向かって指示を出す。
「ラステア王国国王の名において命ずる。ただちに討伐隊を編成し、件の魔物を駆逐せよ!」
すると一人の男が声を上げた。この国の大臣を務める男で、名前はアルバンという。彼はもともと冒険者ギルドのマスターをしていた人物で、現在は王国軍のトップを務めている。そして今回も調査の責任者として参加していたのだ。
彼は王に進言する。
「しかし陛下、本当によろしいのですか? 今すぐ行動を起こすとなるとエレナ王女の件を隠し通せなくなる恐れがございますが」
「ふん、かまわんよ。私はこの国の王であるのだ。そして最近は市井ではなにやら悲惨な事件も起こっておるそうではないか。そのための警備強化ということにする。王女の件よりも今は一刻も早く奴を始末することの方が重要だろう?」
「確かにその通りですが……」
「よし、わかったらすぐに動け。この件は最優先事項とする。ただな、やはり私もエレナのことも心配だ。引き続き王女エレナの捜索も行ってほしいところではある。が、この件は国民に対し衝撃が大きすぎる。エレナの側近だった者たち3名にのみ引き続き国内を捜索させよ。その3名にも王女捜索と国民に気取られてはならぬ。そして国民には第3王女は共和国へ留学したことと説明を行う。これまでエレナの側に仕えていた者たちは今回の事件での取り調べを入念に行い、完全に無関係だと証明されるまでは王城から外に出ることはかなわぬ」
王はそこまで言い切ると再び大きくため息をついた。
(それにしても忌々しい…… 化け物めが。よくもこの私の国に入り込み好き勝手してくれおったことか……。必ず見つけ出して滅ぼしてくれるわ)
王は内心怒り狂っていたがそれを表に出さず、淡々と指示を出し続ける。
王国軍のトップのアルバン元帥は王命を受け、すぐさま部下たちに命令を出すため部屋を出ていった。
事件を報告した宰相はその様子を静かに見つめていた。
こうして国内での事件に対する処置が決まり、エレナ王女はあくまで国外に留学したとされた。
そしてこの事件をきっかけに、世界に大きなうねりが起きようとしていた。