『星夜の誓約』
不死の霊薬を与えられた一人の青年が、再び彼女と巡り合うまでを書いた物語です。
『星夜の誓約』
――ずっと君を探していた
当たり前の日常を、共に過ごした日々を取り戻したかったから
それをもう一度、手にする為に俺は長い年月、彷徨い歩き続けていた
最後の記憶は、彼の当たり前の日常を全て破壊した爆音だった。
体中が、軋むようで……指一本動かす事さえ、億劫だった。
意識が覚醒すると同時に、全身から激しい痛みが襲ってくるようだった。
――痛い、痛い、痛い、痛い…………!!!
男は、自分の身体が以前と全く違ってしまい、損傷して失ってしまっていた部位が幾つもあることを自覚した。
四肢はもう、使い物にならない事をすぐに把握した。
彼はもう、ただ生きているだけの肉塊に等しい存在になっている。
それをすぐに判って、男は叫びたくなった。
部屋の中は薄暗く、今が朝なのか、昼なのか、夜なのかも判らない。
辺りを見回しても、彼の目はもう殆ど視力を失ってしまっていたので周囲の状況を確認するのは困難になっていた。
ただ室内はかび臭く、自分はどうやらベッドに横たえられている事だけは判った。
(何故、こんな状態になって俺は生きている! 彼女は……! 彼女は……!)
「彼女、は……」
「ほう、目覚めたか。一滴だけとは言え、ワシの血を与えた効果かのう。そなたには、ワシの血を受け入れる素養がやはり……あったみたいじゃな」
しわがれた、男の声が聞こえた。
全く知らない、聞き覚えのない人物のものだった。
「お前さんの、愛する女は……死んだぞ。お前さん達が慎ましく暮らしていたあの森は、戦火によって焼き払われ、ワシがたまたま立ち寄った時にはすでに住んでいた家も火に包まれ、お前さんの愛する女も、すぐに事切れた。……その女性が、それでもお前さんだけでも救おうと……その身体の上に覆い被さって、守ろうとしていたのを見かけたから、ワシも気まぐれを起こした訳じゃ……」
「な、んだ……と!」
謎の男は、淡々とした口調で自分が意識を失う前の状況を語っていった。
「もう、彼女は……この世、にいない……という、のか……」
「ワシが丁重に埋葬したよ。お前さんの、大事な人だったのかな」
「……もうじき、結婚して……俺と、正式に夫婦になる筈だった……」
その事実を知らされて、彼は絶望に叩き落とされた。
「……ワシは、そのお嬢さんの最後を看取った。お嬢さんの遺言は……『もし、生まれ変わってもう一度巡り逢えたら……また、貴方のお嫁さんにしてくださいね……』だったよ。本当に心から、愛されていたんじゃな……。生まれ変わりなど、普通ならおとぎ話。世迷いごとに過ぎんがな……」
「彼女を、愚弄……する、なっ!」
「愚弄では、ない。お前さんの命を守ろうと、助けようと我が身を投げ出し……そう祈って死んでいったその姿は美しく、尊いとワシは感じたよ……」
「……う、うううううっ……!」
彼の視界は、もう霞んでしまって周囲をはっきり見る事は叶わなかった。
けどその声と口調から、語りかけてくる人物が年老いた男性であることは間違いないと確信していった。
「さて……その女性の尊い行動に免じて、ワシはお前さんに選択肢を与えようと思っている。ここですぐに死を選び、来世に巡り会える事を祈り安楽死を選ぶか。ワシから不死を与える効能のある霊薬を貰い、長い年月生き延びて……また、彼女と巡り合う事を選ぶか。好きな方を選ぶと良い……」
「不死、の霊薬……?」
「……この薬を飲んでも、何百年。何千年と生きれば多少は身体が衰えていく。それでも普通の人間が50年や100年しか生きられない事を思えば、その十倍の時を生きる事は可能となる。ワシの血には……その霊薬が流れている。その霊薬は、二つの誓約のうち、どっちかを破るか……誰かに与えぬ限り……ワシに死ぬ事を許してくれぬ。それは呪いにも似た絶対な効果がある代物じゃ。ワシはもう長い年月を生きて、目的を果たした後は、意味もなく彷徨い続けていた。そなたがまた彼女と巡り合いたいと願うのなら……ワシは、お前さんにその霊薬を与えよう……。それを飲めば、その身体は再生し、動けるようになるだろう」
「……そんな、御伽話みたいな、事が……」
「ワシはもう、千年以上は生きているよ。かつて、お前さんと同じような状況になり……愛する女ともう一度、巡り合いたくて……この呪いを引き受けた。そして、彼女と再会してな。……そして、彼女がもう一度死ぬまで、共に過ごし悲願を果たしたばかりなんじゃよ。目的を果たしたのなら、ワシはもう……このまま彼女の後を追いかけて、安らかに眠りにつきたいんじゃ。だから、お前さんを助けたんじゃ……」
「…………」
「お前さんを見た時、千年前にワシが霊薬を飲む事を選んだ時の自分と重なって見えたんじゃ。そして一滴だけ、それを与えたら……お前さんは息を吹き返した。霊薬に適合する資質を持っている証じゃ。お前さんが望むなら、ワシはそれを与えよう……」
「…………彼女を、探す。俺に……その、霊薬を……与えて、下さい……」
「それで、本当に良いんじゃな……」
「……生まれ変わりなど、御伽噺だ。お互いに死んで、記憶や想いなど引き継がれる事など、奇跡に近い。もう一度、本当に愛して、彼女に出会いたいなら……俺は生きて、その思いを引き継いでいくしかない。そう……思っただけ、だ……」
「そう、か……。はは、かつてのワシと同じ考え、じゃな。判った……。ありがとう。ワシもこれで……人として、死ねる。感謝、するよ……」
年老いた男は、ナイフで己の手首に切れ目を入れていった。
念じていくと同時に……血ではなく、琥珀色の雫が、其処から伝い始めていく。
彼の口元に、それが落ちていくと……深い傷を負った青年は、それを迷う事なく喉に流し込んでいく。
一滴、一滴……年老いた男を長い年月、生かし続けていた不死の霊薬は……彼に引き継がれていった。
「この霊薬は、幾つかの誓約の元に成り立っておる……。そなたが、愛する女以外と契りを交わした場合、効力を失い……不死の力は失われる。そして……そなたの身体から出ていくだろう。そして、愛する者とまた巡り合いたいと願う者を宿主にする……。それはそういう奇跡の産物じゃ。自らの身体にその奇跡を留めたいのなら……その条件を、守り続ける必要がある。転生した……お前の愛する女以外と、愛し合った場合。そなたは資格を失う事だけを努々、忘れぬようにな……」
「もし、他の人と愛し合った場合は……」
「その時点で、霊薬はそなたの身体から出ていき……不死ではなくなるという事じゃ……。そしてもう一つの条件は、もしその女性と巡りあってまた恋に落ちたなら一年以内に、結ばれなくてはならない。愛する者と巡り合いながら、他の者とその相手が結ばれたり、契りを結べぬまま期日を迎えれば……そなたは命を落とす事になるだろう。この奇跡は相反する、厳しい条件の元に成立しておる事も伝えておこう……」
「…………」
「逆を言えば、かつて愛した者以上に愛する者が出来た場合は、いつでもこの呪いから逃れられるという事じゃ。亡くなった者を忘れて、新しい出会いを探すというのも……一つの道という事じゃ。大半の人間はそうやって、死別した者を忘れ……次の愛する者を探していく。それが『普通』じゃ……」
「俺は、忘れたく……ない! 彼女以外は、嫌だ!」
「……この霊薬は、そういう……死別してなお、愛する者を求め続ける……そういう愚者の為に、ある。だから……ワシは、そなたに託そう……」
最後の霊薬の雫が、青年の唇に落ちた時。
年老いた男は、ゆっくりとその場で石化していった。
満ち足りた、穏やかそうな笑みを浮かべて。
そして……それと同時に、青年の身体は動くようになり、起き上がる事が可能となった。
青年の皮膚には、鉱石と混じり合ったような独特の文様があちこちに浮かび上がり始めた。
人の皮膚ではなく、まるで……緑石色の鉱物と混ざり合ったようなそんな感じに変化していった。
本来なら、もう活動出来なくなった身体が息を吹き返し、傷が急速に癒えていくのを感じていった。
「……貴方は、その悲願を果たしたから……そんなに、満ち足りた顔をしながら、俺に……霊薬を与えて、くれたのですね……」
青年は寝台から起き上がると同時に、石化した男に向かって敬礼していった。
宿願を果たし、人生を終えていった人物に対して深く尊敬していきながら。
そして彼と同じように、満ち足りて次の者にこの霊薬を託していきたいと……そう願いながら。
―その日から、彼の愛する者の転生を探す、長い旅路は始まったのだった。
*
その日から、百年程度の月日が流れた。
不死の霊薬の力を授かった青年はその間、様々な国を回った。
愛する彼女を求めて、気が遠くなるような年月、彼は彷徨い歩き続けた。
もう一度、彼女の転生と巡り合うまで、彼は色々な国で、様々な美女達に思いを寄せられていった。
彼女達は皆、こちらを真剣に想ってくれていて、そういう一途な女性に巡り合う度に……誘惑に負けて、この不死の霊薬を手放すか否か、迷った事もあった。
けど、最後にはいつも……かつて愛した彼女への思いが勝り。
想いを寄せてくれた女性に謝罪しながら、次の地に旅立つ事を選び続けた。
そして彼は北の方にある国で、またある女性との恋に区切りをつけて旅立ちの日を迎えようとしていた。
身支度を整え、荷物を纏めて旅立つ準備を迎えて一年以上、厄介になった宿の外に出ていくと……満開の桜が、視界に飛び込んできた。
本日は晴天で、空は澄み渡り……淡いピンクの花々が咲き誇る様がとても美しく感じられた。
「……ああ、ついに……今日、貴方は旅立たれてしまうのですね」
「……アイ殿。この一年、貴方にはこの地で本当にお世話になった。そろそろ内乱が落ち着いて、貴方の愛する御仁が……戻ってくる可能性があるのなら。例え用心棒という立場であったとしても、俺がこれ以上留まらない方が良いからな」
青年が宿の外に出れば、追いかけるように……この宿を切り盛りしている若き女主人が彼をせめて見送ろうと近づいて来た。
彼女は表の顔は大きな宿を切り盛りしている女主人だが、占い師としても高名であり……最初、この地に彼が足を向けたのは彼女にある事を占って貰う為だった。
「……ええ、その方が良いというのは……理性では判っています。けれど……戦地に行った彼が本当に、生きて戻ってきてくれるのか……不安で、胸が潰れそうです……」
「……しかし、その御仁が戻って来た時、俺のような者がこの宿に一年以上厄介になっていた事を知れば……その男は、貴方に不信感を持つだろう。もう内乱が収まったという情報が大勢に知れ渡り、近所に住むご婦人方の元にも何人か、ご主人や息子が戻ってきたという話も飛び込んで来ている。……それなら、俺はその人物が帰ってくる前に立ち去っておくのが一番良いだろう……」
「……判っています、判っているんです! けど……この一年余り、貴方が傍にいてくれた事で……彼に、どこか面差しが似ているライト様が傍にいた事で、私は凄く支えられたのです。……もし、彼が……亡くなってしまっているのなら。貴方に留まって欲しいという……ワガママな気持ちが、私の中では消えてくれないんです……」
「……貴方がその男性を愛しているように。その男性もまた心からアイ殿を愛しているのなら……亡くなっていたとしても、遺品や身体の一部だけでも、貴方の元に戻ろうとするだろう。その結果が来るまでは信じて待った方が良い。それ以前に……不安に負けて、他の男に身も心も許してしまったら、貴方は一生後悔することになる……」
「……ああ、そうですね。貴方の言っている事は……正論です。頭では判っているのに、心がついていかないんです……。貴方と共に過ごしたこの一年で、貴方に強く惹かれてしまったから……」
「……俺も、追い求める女性が心の中にいなかったら、アイ殿の元に留まって……という気持ちは何処かにあった。この一年の間に、貴方の愛する男性の訃報が届いて、亡くなっている事がハッキリしていたのなら……この地に留まって、貴方の傍にいるのも悪くない……そういう気持ちは、こちらにも確かにあった……」
相手が涙ながらに、こちらへの想いを口にしたのでライトもまた……彼女に背を向けたまま、本音をそっと漏らしていく。
その言葉を聞いた途端、彼女は青年の方に近づこうとしていく。
だが、ライトはそれから逃れるように歩を進めて、桜が満開に咲き誇る宿の庭の方に足を踏み入れていった。
キラキラとした陽光が輝く中、風がそっと吹き抜ける度に淡いピンクの花びらがヒラヒラと舞い落ちていく。
「……もう、電車の発車時刻が近づいている。アイ殿……俺は、これで……」
「待って! 待って下さい! 最後に私はどうしても……伝えなくてはいけない事があるんです。それだけでも聞いて下さい! 貴方が一年前、私の元に訪れた動機……『捜し求めている女性』についての答えです!」
「っ! ……一年前、貴方は占いで『その女性が何処にいるかは判らない。すみません……』と確かに答えていた筈だ」
「……ごめんなさい! それは……貴方が、戦地に行ったあの人にどこか面差しが似ていたから、彼に似ていたから傍にいて欲しくて……その問いに答えてしまったら、すぐに貴方はこの地から離れて行ってしまう気がして。だから私は……あの時、嘘をついたのです……」
「……そう、だったのか……」
彼女の占いの的中率は、他の国にも届く程の高さだった。
だからライトは、愛する女性を見つける為にヒントになれば良いという動機でこの国を訪れてアイの切り盛りする宿に訪れたのだ。
戦によって戦える年齢の男たちは兵士に招集されており、街には子供と若い女、兵役を逃れた虚弱な男性か、老人かしかいなくなり。狼藉を働く者達によって苦しめられている状況下だった。
だからよその国から来た自分が用心棒となり、森で狩人をしていた経験と知恵を、街の人に与えて指揮を取り、街を一年以上守ってきたという経緯があったのだ。
彼女は、ライトの背中にそっと両手を掛けて近づいていく。
泣いている顔を、見られたくなかったから……青年もそれを察したから、彼女の自由にさせていった。
「ライト様の……追い求めている女性は、貴方の故郷の地に。それが一年前の占いの本当の結果です……。この結果を一年、隠し続けていた私の罪を……お怒りになる権利が貴方にはあります……」
「……それを今、正直に伝えてくれたこと、感謝する。おかげで次に俺が向かうべき目標が出来た」
「……ああ、貴方は本当に優しいのですね。私の嘘を……罪を、咎めないで許して下さるのですから……」
アイは、ライトの背中に追いすがって暫く泣き続けていた。
彼女の体温と、嗚咽の気配を感じて……暫く彼は好きなようにさせていった。
「ライト様、最後に一つお願いが……ワガママがあるのですが、良いですか?」
「……俺に応えられる範囲ならば」
「……最後に、貴方の胸の中に抱きしめて……口づけをしてください。その思い出があれば……それを支えに、あの人が戻ってくるのを信じて待てます……」
「……判った」
こちらに縋る、彼女の手は震えていた。
愛する男が本当に戻ってきてくれるのか、その激しい不安と戦っている故と察したから……彼はアイの最後の願いを叶える事に迷いはなかった。
コロコロと、強い風が吹いて桜吹雪と、和傘が転がる中。
ライトとアイはお互いに向き合い、強く抱き合っていく。
そして……彼女を強く抱きしめていきながら、その唇を重ね合っていった。
それはお互いに微かに灯った、恋心にピリオドを打つための口づけだった。
「……ありがとうございます……」
「……あの夜の出来事と、この口づけはお互いに愛した者には告げず……墓の下まで、持っていく秘密にしましょう……」
「はい……」
「貴方が、愛する御仁と再びまた笑って再会出来る日が来る事を祈ります……。こちらこそ、一年間お世話になりました……アイ殿」
最後に交わした口づけの感触と、ライトの残り香を胸に彼女は透明な涙を流していった。
この香りに一度だけ包まれながら、夜を明かした事があった。
戦地に行った彼が死んだのではないかという不安が頂点に達し、気が狂いそうになりながら自分が泣き叫んだ夜。
ライトは一晩中傍にしてくれて、抱きしめながら添い寝をしてくれた。
泣きじゃくる自分を胸の中に抱いて、背中を優しく擦り……『貴方の愛する人が生きている事を信じるんだ』と声を掛けてくれたあの夜の事を思い出して、再び泣きそうになった。
(ああ……貴方の匂い……貴方の香りを、しっかりと覚えておこう……)
ほんの少しでも、惹かれあったこの人との思い出が胸にあれば。
少しだけでも強く気持ちを持って戦地に行った、愛する人の事を待つ勇気を持つ事が出来るから。
ライトもまた、彼女の方を振り返らず大陸横断鉄道の駅のある方角へと向かい始めていく。
そしてこの日より、数ヵ月後。
アイの愛する男性が戦地より戻ってきて二人は間もなく祝言を上げたのだと……鳥が運んできた文を頼りに、ライトは報告を受ける事となる。
だが、この時点では……そんな未来が訪れる事など知らず、二人は静かに袂を分かっていったのだった。
(嗚呼……本当に、この国の……満開の桜は、美しいな。この光景をしっかりと覚えておこう。この美しい風景と、アイ殿との日々を……)
そしてまた一つ、切ない恋にお互いにピリオドを打っていく。
ライトは各地で、この百年の間に七つも八つも、そんな切ない恋を沢山の女性たちとしてきた。
彼女達に惹かれ、心を激しく揺らしながらも……最後には、かつて愛した彼女への想いが勝り、こうした別れを何度も繰り返してきた。
電車に長時間乗り継ぎ、長い年月を経て、故郷の地に戻った時。
彼はようやく……探し求めていた女性と、再び巡りあったのだった。
*
かつて、彼の住んでいた森は焼き払われた後、長い年月を経て大きな街が建設されていた。
彼が故郷の地を、百年ぶりに訪れた日。
街は活気に包まれ、大きな祭りが開催されている日だった。
普段は閉ざされている事が多い巨大な門は、祭りの為に解放されていたので青年は、街の中に立ち入る事が出来たのだ。
沢山の人々が行き交い、熱気でむせ返りそうになった。
青年は広場に向かうと、丁度一人の男がその中心で、街の皆に向かって大声でこう語っていた。
「隣国の名士の子息、ダラム様とこの街の名士、フローラ様のご婚約が決まりました。このめでたい日を皆で祝いましょう!」
そして、その中心には二十代始めぐらいの鋭い目付をした若い男と、長く豊かな茶色の髪に夜の闇を思わせる美しいドレスに身を包んだ少女が立っていた。
「っ!!」
その少女を見た瞬間、青年は目を瞠った。
彼女の生まれ変わりは、その街の名士の娘なのだと、その瞬間に察したのだ。
隣国の貴族との婚約が決まり、街で催しごとが行われていた日。
他の男との婚約が決まり、それを祝っている祭りの会場で。
彼と、転生した彼女は再び巡りあった。
(嘘、だろ……まさか、こんな展開が故郷の地で待っているなんて……)
彼は暫く、言葉を失ってその場に立ち尽くしていた。
どれぐらいの時間が過ぎたか、暫く感覚を失っていた。
すると彼女が、会場から少し離れて飲み物を取りに行こうとした時に彼の近くをたまたま通りかかったのだ。
「あっ……ごめん、なさい‥…」
「いや、気にしなくて……いい」
彼女が彼の身体にぶつかり、言葉を交わしあった。
その瞬間、お互いに対峙した時に電流が走り抜けたような衝撃を覚えた。
「っ……!」
「あの、貴方の名は……?」
「ライト……だ」
「……ライト、素敵な名前ですね。私の名前はフローラ、です……」
(これはどういう巡り合わせだ。容姿も……名前まで、何もかも……かつての彼女と、同じだなんて……)
もう一度巡り会えた奇跡を感謝しながらも……この日の祭りが、「この名士の娘と、隣国の貴族の跡取り息子との婚約祝い」の為に開かれたものである皮肉に、彼は歯噛みしたくなった。
街を上げて、その婚約を祝っている日に。
その娘が……探し求めていた、かつて愛した女性の生まれ変わりであるという事実に、憤りにも似た感情が湧き上がっていった。
「……不思議ですね。ライト様……貴方と出会ったのは、今日が初めての筈なのに。何故か……貴方を見ていると、泣きそうなぐらいに懐かしく思うのです……。何故、こんな感情が湧き上がるのでしょうか……」
美しい闇色のドレスに身を包んだ彼女は、切ない表情を浮かべながらそう漏らした。
今日の祭典の主役の一人は、彼女だ。
その事実を把握した時に、ライトは今すぐにでも彼女をこの場から連れ去りたい衝動に駆られていった。
(しかし、それを実行に起こしたら……確実に、混乱が起こる……)
だが、自分に与えられた霊薬の相反する条件を思い出して、彼は焦り始めた。
――愛する女性以外と結ばれたら、その時点で霊薬は身体から出て行き、普通の人間に戻り。
――愛する者の生まれ変わりと出会いまた恋に落ちたなら、一年以内に結ばれなくてはならなくては、命を落とす
これらの条件を破れば、その時点で霊薬は彼の身体から出ていき……普通の人間に戻るか。
特に後者の条件が守れなかった場合は、『死』が待ち受けている事を思い出し……彼の心は落ち着かなくなった。
(何故、こんな日に……よりにもよって、彼女と俺は巡り会ったんだ!!)
せめて正式に他の男との婚約が成立する前に出会えたなら。
その皮肉を、彼は呪いたくなった。
「あの……どう、なさったのですか……?」
「いや、何でもない。気にしなくて大丈夫だ……」
言葉もなく、立ち尽くしている彼に向かって……フローラは心配そうに声をかけてくる。
自分の中にある葛藤を、痛みを悟られたくなくて……まっすぐなその瞳から、目を逸らしてその場を立ち去ろうとした時、遠くの方から大きな声がした。
「フローラ! いつまでそんな得体の知れない男と話しているんだ!! 君は僕の妻になるという自覚がないのか!」
「あ、ご……ごめんなさい。ダラム様。今、戻りますね……」
「……ふん!この薄汚い男め! 僕の妻に色目を使うな。皆の者、この得体の知れない旅人をつまみ出せ。この男は、どうやら妻になる女に恋でもしたようだ。フローラはこのダラムの妻になる人だというのにな!二度にこの街に足を踏み入れられないようにしろ!」
彼女の婚約者らしい男は、どうやら少し離れた位置から二人のやりとりを見ていたようだった。
二人の間に流れていた独特の空気を感じて、婚約者の男はライトの事を『自分達の結婚を邪魔する最大の脅威となりうる』ことを本能的に感じ取ったらしい。
激しい敵意をぶつけられ、ライトは街の人間に取り押さえられていく。
「ライト様!」
「フローラ!」
二人は必死になって、手を伸ばし合う。
しかし大勢の人間に、二人は引き離れてしまい……距離を縮める事は叶わなかった。
両者が近づこうとすればするだけ、街の者は引き離そうと……阻もうとしていった。
「二度とこの街に来るな!! この男を決して街の中に入れないようにしろ! フローラを守るんだ!」
「おお!」
貴族の男が大声で叫んでいく。
その声に呼応して、街の人間が了承の声を次々に上げていった。
そして、ライトは街の外につまみ出されて門は閉ざされていった。
彼には、もう一度街に入る事がその一件により叶わなくなった。
そして二人は、一年近く……近づく事も叶わぬまま、ライトの命は、刻限を迎えようとしていた。
*
今夜の日付変更には、自分の命は尽きるだろう。
ギリギリまで、彼は行動に移すか迷い続けていた。
街の中に入る事は許されなくても、付近の街道や集落を巡り、旅人や商人などを相手に情報を収集し続けていた。
隣国の貴族と、名士の娘の婚約が発表されてから一年近くがすぎていたが、彼女は乗り気ではなくその話は進まなくなっているという情報を聞いた時。
ようやく、ライトは動く決断をした。
(もし、彼女が……あの男と結婚するのを選んだなら、俺も死の運命を受け入れるつもりだった。けど……彼女もまた、こちらに会いたいと思ってくれているのなら……)
一年近くかけて、情報収集と根回しはした。
ダラムに関する情報を、隣国を回って仕入れたら……どうやら彼はフローラの父の権力目当てで結婚したいと思っているらしく、複数の女性と関係を持っていて、真剣に彼女を愛しているという訳ではない、という裏も取れた。
そして、彼女の父がダラムを結婚するのは得策ではない、と判断出来る情報も書状に書いておいた。
自分が街の中に入れなくても、彼女の屋敷に長年仕えている女性が……フローラの本当の心を知っている人物がこちらの味方になってくれたからだ。
彼女の教育係を任されていた壮年の女性が、ダラムに関してこちらは一年かけて集めた情報を彼女の父に告げた後、今夜……フローラが屋敷を抜け出すのを手助けしてくれる筈だった。
街の外れの、草原にて……銀色に輝く月を眺めながら、彼女が訪れるのをただ彼は待ち続けていた。
――君に会いたい
もしダラムが、彼女にふさわしい男であったなら。
心から愛しているのならば。
自分は……静かに運命を受け入れて、死ぬつもりだった。
だがそれでないと判った以上は、そんな男に愛する女性の生まれ変わりを渡すつもりは絶対になかった。
刻限が迫る度に、自分の身体から少しずつ力が失われていくのを感じた。
もうじき、日付変更が訪れる。
それまでに彼女と会えなければ、心を通わせなければ……誓約が、自分の命を奪うだろう。
ギリギリまで、自分のやれることはやった。
後は、予定通り彼女と今夜巡り会えるのを待つのみだった。
(あの祭りの日にたった一度……短い時間、会話しただけの男の元に、君は来てくれるだろうか……)
彼は草原の真ん中に立ち、夜空に輝く星々を眺めていった。
風がそっと吹き抜けて、辺りの草をそっと揺らしていく。
もし、彼女が間に合わないというのなら……こんな美しい自然に囲まれて、最後を迎えるのならばそれも悪くないと思った。
(ああ……意識が、遠くなる……。俺は、もう……終わり、なのか……)
日付変更まで、後30分を切った辺りから……ライトはまともに立っていられなくなり、その場に崩れ落ちそうになった。
――せめて、一目で良い。君に……会いたい、フローラ……
「ライト様!」
そう観念して、草原に倒れ込みそうになった瞬間、遠くから彼女の声が聞こえた。
予定よりもかなり遅くなったが、厳しい屋敷の警護を掻い潜り、やっと抜け出す事が叶ったのだ。
草原に倒れ込んだ彼の元に、彼女が泣きながら駆け寄る。
「ライト様……ずっと、会いたかった!」
「フローラ……。俺も、君に会いたかったよ……」
「どうなさったのですか……こんなに、弱られてしまって……」
「……良く、聞いてくれ。俺はもうじき死ぬ……。日付変更までの、命なんだ……!」
「ええっ……!」
「……君と出会って、明日で一年になる。……この話を信じるかどうかは……君の判断に任せる。……遠い昔、俺は君に似た、同じ名前の女性と結婚の約束をした。だが、彼女は俺を庇って命を落とした。俺も瀕死の重傷を負った。一人の老人が現れて、生まれ変わった彼女にまた逢いたいと願うなら……不死の霊薬を与えてくれる、と言ったんだ。そして俺はその霊薬を与えられて、百年以上の時……君を探し続けた。そして、その霊薬は……他の女を愛して契った場合は、身体から抜け出して新たな宿主を探してしまい。愛する女と巡りあった時は一年以内に結ばれなければ……命を奪う、という二つの厳しい誓約によって、その魔力を保っているんだ……」
「なら、私を……抱いて、下さい。貴方が死ぬなんて……嫌です!」
「……俺が君を抱く事は、君の父が治める領地に混乱を招く事にも繋がる。それでも、良いか?」
「構いません! 私は、ダラム様とは結婚したくありません! 貴方が一年近くかけて、実情を調べて下さった事……彼女から聞きましたから。政略結婚であることは、私も承知の上の婚約でしたが、他に何人も愛人を囲っているのが事実なら、私はそんな男性と結婚したくはありません!!」
「……判った。なら……俺の上に跨ってくれ……」
「はい……」
彼女は頬を真っ赤に染めながら、俺の言葉に従ってくれた。
あの日と同じ夜空を思わせるドレスに身を包んだ、フローラは美しかった。
もう日付変更まで30分を切っているという状況での、百年以上ぶりに愛する女性と抱き合う展開が訪れた事で、ひどく緊張する反面……冷静で落ち着いている事に気づいた。
(百年以上ぶりに来た機会なのに……案外、落ち着いているな。……遠い昔に経験した時は、嵐のように激しい衝動に突き動かされてだったけど。……この百年の旅路の中で、何人もの女性たちと、切ない恋をした経験が……土壇場に、俺に自信を与えてくれているんだな……)
走馬灯のように、様々な国で淡い恋をして別れた女性たちとの顔と、去り際の涙ながらの笑顔を思い出して……そっと、感謝していった。
今、腕の中にいるフローラへの想いを捨て去る事が出来なかったから……彼女達と切ない出会いと別れを繰り返して来たけれど。
その恋の経験が、今……彼に確かな自信を与えて、支えてくれているのに気づいた。
例え実らなくても、誰かと恋愛をし……向き合う事は貴重な経験なのだ。
それが片思いでも、最終的に決別するという結末を迎えるとしても……人と愛し合った、想いを確認しあった、という思い出が……土壇場で己を支えてくれる『自信』に繋がるのだから。
「私……その、初めてだから……優しくして、下さい……」
「……ああ、大丈夫だ。出来るだけ優しく……大事に、する……」
本当は自分も、百年ぶりの愛する女性との行為になるのだから……不安な気持ちもあったけれど、緊張して硬くなってしまっている彼女を安心させるように、自信ありげに振舞って……迷いない動きでリードしていった。
深く口づけを交わし、しっかりと指を絡めて手を繋ぎ……想いを確かめ合う。
こちらから、リードして……草原で、お互いに触れ合い……そして、俺は彼女と身体を重ねていった。
彼女の純潔を、確かに貰い受けたその瞬間に……自分の身体に再び、力が宿っていくのを感じていった。
「ライト様……」
「愛している、フローラ……」
長い年月、彼女と再び巡り合う日を夢見ていた。
そしてやっと、その願いが叶っていった。
――再び、死が二人を分かつ日まで……決して、君の傍をもう離れない……
そう心に誓いながら……彼女の身体をしっかりと抱きしめていき。
俺達は、熱に浮かされながら……想いを確認しあっていったのだった――
*
ライトと想いを通わせて……抱き合った後。
お互いに頭上に星空が瞬く草原で、寄り添いながら一時のまどろみに落ちていた時。
フローラは不思議な夢を見ていた。
それは遠い日の、生まれ変わる前の……前世のフローラの記憶であり、想いが蘇ったものだった。
――もう、生きていたくない! 私の事を愛してくれない……欲望の対象としか、財産を得る為に結婚しようとするような男性の妻になる道しかないというのなら……いっそ、このまま死んでしまいたい! もう嫌ぁ!!
彼女は、森の中を全速力で駆け抜けていた。
肺が潰れそうになるぐらい息苦しくて、それでも彼女は少しでも屋敷から逃げ出したくて必死に走り続けていた。
誰かに見つかったら、家の者に連れ戻らされたら……あの嫌で仕方ない婚約者の男性と、結婚する以外の道しか自分にはなくなってしまう。
それが嫌で仕方なくて、無理やり破かれて乱れたドレスを手で握り締めながら押さえていきながら、彼女は遮二無二走り続けていたのだった。
獣道を走り抜けながら、彼女がたどり着いたのは崖の先だった。
(もう此処から飛び降りて、この生を終わらせてしまおう……)
彼女の心は、絶望に満たされていた。
あの男の妻になり、子を産み……一生その傍に生きていく人生を送るぐらいなら、いっそ終わらせてしまおうという衝動に駆られそうだった。
夢遊病者のように、フラフラした足取りで崖の先までたどり着いていけば……フローラの肩を必死の力を込めて、誰かが掴んで来た。
「いたっ!」
「何をしようとしているんだ、お嬢さん! それ以上進んだら死ぬぞ!」
「死ぬつもりなのよ! お願いだから離して! 止めないでよ!」
「……死ぬなら、俺の目の届かない所でやってくれ! 君のように若くて綺麗なお嬢さんが飛び降り自殺なんてしようとする現場なんか見てしまったら、放って置ける訳がないだろ!」
「ヤダヤダヤダ! お願いだから離してよ! 好きでもない男の妻になって、子供を産む人生なんて嫌なの! そんな道しかないなら……死んだ方がマシよ!」
「なら、逃げれば良い! そんな男から逃げて逃げて、逃げまくって……好きなように生きれば良いだけだ! そんな事で命を粗末にするなんて馬鹿げている!」
「えっ……!」
フローラは、もうこの道しかないのだと絶望したから死ぬしか逃れる術はないと思っていた。しかしこちらを抱きしめて、自殺を止めようとする若い男の言葉を聞いて、『逃げて生きる道があるんだ』という当たり前の事に、やっと気づく事が出来たのだ。
「逃げて、生きる道……?」
彼女は幼い頃から、父が定めた道から外れる事を許されないのだという教育を受けて育ってきた。婚約者の男との結婚も、絶対者である父が決めた事だ。
その結婚を嫌だと思ってしまった自分は、もう生きる価値がないのだと許されないのだと……そう思っていたから、死ぬしかないと想っていたのに。
「そう、嫌なら逃げれば良い。その自由は誰でも持っているんだ」
「あ、あああああ………」
フローラは気づいたら、ワンワン泣いていた。
それは生まれて始めて、自分の感情のままに行動しても良いと許されたような気分だったのだ。良家の子女であった彼女は、様々なしがらみに囚われて生きて来たから。
気づいたら、その男性の胸の中に縋って泣いてしまっていた。
そんな自分を、困ったような顔を浮かべていきながら……恐る恐る、彼はこちらの背中を優しく撫ぜてくれた。
お互いの温もりが、鼓動や息遣いが愛おしいと……気づいたら、感じあっていた。
離れがたい気持ちになって、抱き合っているうちに……そっと口づけを交わしあって、草むらに倒れ込んでいった。
婚約者の男性に、同じような事をされそうになった時は嫌悪感でいっぱいだったのに……ライトに触れられるのは、むしろ心地よくて嬉しい気持ちで満たされていった。
―この日、二人は……お互いに一目惚れをして、その勢いのままに最後まで結ばれた
そしてフローラは家を捨て、森の中でひっそりとライトの傍で暮らす事を選んだ。
自分の素性も、本当の姓も告げず……一人の女として生きて。
そして18歳の誕生日を迎えたら、彼と正式に夫婦になる約束を交わしていた。
しかし突如襲った戦火が、二人を結婚する前に死で分かつ事となったのだ。
爆撃が襲った瞬間、フローラは自分の身体を盾にせめて愛する人だけでも守ろうと覆いかぶさった。
(私は本来、あの日に死ぬつもりでいたのだから。ライト様が救ってくれたから私は今、生きている。なら……せめて、ライト様だけでも……)
本当は、二人で生きてこの人のお嫁さんになりたかった。
愛し合って、子供を作って……一緒にその子を育んでいきたかった。
命が消える瞬間、愛しげにライトの胸の中に顔を埋めた。
――ああ、子供の頃にデザインしたあの星夜をイメージしたドレスを着て……ライト様の、お嫁さんになりたかったな……
十歳の時に、好きな人のお嫁さんになれる日が来たら……大好きな星空と月をモチーフにしたドレスを着て、式を上げたいという夢を込めてデザインした事があった。
まだ子供だったからそれはとても拙い出来だったけれど。
人生の最後に浮かんだ、フローラの願いはそんなささやかなものだったのだ。
一人の老人が声をかけてきた。
その人物に向かって、もう叶うことのない願いを口にして……そして彼女は、その生を静かに終えていったのだった――
*
――ああ、そういう事だったのね。
ダラムとの婚約のお披露目の時に着ていたドレスは、自分にとってお気に入りのものだった。
星夜を思わせるそのドレスは、元は自分の一族の誰かが元となるデザイン画を描いていて……それが高名なデザイナーの目に触れた結果、作られたものだという話は聞いた事があったような気がした。
自分の傍に長年仕えてくれた女性が、ライトの元に向かうように告げてくれた時。
自分はどうしても、あの日と同じドレスを着たくて仕方なくて……彼女に着付けを手伝って貰い、髪型を整えてから家を飛び出して向かったのだ。
それがフローラがライトの元に訪れるのがギリギリになった最大の理由だった。
(このドレスの……元となるデザインしたのは、遠い昔の……私、だったんだね……)
そして今、かつてのフローラのように……家を捨てて、ライトと共に生きる決意を固めていた。
親の敷いたレールに従って、心を殺さなくてはいけない道よりも。
自分の本当に愛した人と共に歩んで行きたいという気持ちが……今のフローラの中にも確かに灯っていったから。
――生まれ変わったら、今度こそライト様と結婚して……お嫁さんになりたい
それが、以前の彼女が心から願った夢。
かつての自分の記憶と想いを垣間見た時、フローラの中から迷いが消えていった。
「……私、もう……貴方の傍を離れません。再び死が二人を分かつ日まで……どうぞ、貴方の傍に置いて下さい……」
眠るライトの唇にそっと、触れるだけのキスを交わしていきながら……鮮やかな星空の下で、少女は誓いを立てていく。
――それは星と月をモチーフにした漆黒のドレスを着た少女が強く心に誓った、愛する男性の為に誓った『星夜の誓約』だった――
いつも仲良くして下さっている友人たちに、日頃の感謝の気持ちを込めて作った話です。
一度書き上げた後、お二人に色々話を聞いて確認しながら加筆修正をして、画像を全部で4点ほど
提供してもらい、表紙や挿絵として使用させて頂きました。
これはゲーム内で作った画像を使用させて頂いてますが、その世界を元に作った……
その世界の中にある一つの御伽噺、みたいな感じで作った物語です。