78.最強パーティーの目指す道?
全知全能の智者と謳われていた賢者アクセリ・ルグランは、かつて仲間だった勇者ベナークと黒魔術師デニサによって呪術をかけられ、劣等賢者にされた。
そこから数年が経ち、力のほとんどを失くしたアクセリは偶然にもパーティーのお荷物扱いとなっていた薬師、パナセ・アウリーンに救われる。
そこからは必死にもがき、呪術をかけた魔女を滅し、勇者を世界から追い出すために頑張ったのである。
「――大したことはしていないな……」
「何がです? そう言えばアクさま、ベナークを追い出したのですから、ご褒美を頂きたく思いますわ!」
「あ、あぁ、そうだったな……しかし」
「さぁ、お早くっ! わたくしの頬を思いきりひっ叩いて下さいませっっ!!」
最初からこんな性癖だっただろうかと、思わず躊躇してしまうではないか。
「おっさんは変態なのか?」
「違うぞ。そしておっさんではない……アミナスから見たらそうかもしれないが、違うと断言しておく」
「でも数年以上も眠っていたと聞いたぞ」
数年以上眠っていたらおっさんになるとか、どんな呪いだ。
「あぁ、それはその通りだが……変態ではないな」
「これからどこへ行くのだ? 勇者みたいな悪い奴と魔女もいなくなったのだ」
「……帰りたいか? 召喚の岩窟に」
「分からないのだ。でも、何だかごちゃごちゃしていただけで、アミナスは活躍出来ていないのだ」
そんなことはないと言いたかったが、召喚の力を上手く出し切れないまま終えたのは事実だ。
この戦いは力を取り戻した俺と、力を引き出されたルシナとパナセそして、影で活躍したロサのおかげでもある。
ストレは竜人として大いに力となってくれたが、この先において共に生きていくことを選ぶかは、ストレ自身の思いを尊重するのみだ。
「ストレは成人した。もう里に必要ない……主につく」
「移動においてはストレに頼らざるを得ないからな。これからもよろしく頼む」
「……ん」
世界を救うなどと、大それたことをしたつもりはない。
しかし賢者と勇者の概念を変え、魔王支配の世界よりも悪くしたベナークの罪は深く残った。
面倒ではあるが未だ最強と呼べないこの者たちを引き連れ、旅を続けることは果たして正しいのか。
「アクセリ、話があるんだけど」
「ルシナか。どうした?」
「……私、薬師の里に帰ることにしたから。世界平和だとかそういうのは興味無いし、自分が強くなりたいとかなったとか、そういうのよりも里で静かに暮らしたいから」
はっきりさせたいルシナらしいが、寂しい限りだ。
「そ、そうか……」
「それに――ね」
元々否定的だったルシナではあったが、傀儡で味方を、それも俺よりもパナセを傷つけたことは、ルシナの中に残るだろうとは思っていた。
こうなるとその者の意思を尊重するしかない、
「ん? 何だ?」
「それに、私と同じ目に遭った情けなくも強い人を、里で休めてあげたいから」
「まさか、オハード?」
「だ、だから、あんたは私よりも、か弱い薬師を守ってあげなさいよね!」
「……無論だ」
ルシナにはかなり助けられたな。
薬師の姉妹で姉よりもしっかりした妹だったし、これからも頼りない姉を支えて欲しいと思っていたが、意志は固いようだ。
そうなると育成するところから始めることになる。
「――ん?」
さっきからグイグイと何かに引っ張られている気がしていたが、気のせいでは無かった。
「ふぎゅぅぅぅぅ……! ひどいです、ひどいです~!!」
「何だ、お前か」
「お前か。じゃないです~~! わたしにも何か言うことがあるはずです~!!」
「何かあったか?」
「ルシナちゃんと別れるのがお辛そうじゃないですか~! す、好きなら好きって言えば――」
何を言うかと思えば、ルシナに抱いていた想いはそういうことではなかったのだが、意外にも鋭い所があるから下手なことは言えないか。
「はぎゃっ!?」
「戯けめ。俺と永遠の契りを結んだのでは無かったのか? 何故今になって不安を抱くというのか」
「だって、だって~ルシナちゃんを見る目が優しいし、態度もお優しくてわたしと違うじゃないですか~~」
ルシナを負傷させた責任があるし、戦いに巻き込んでしまったからな。
優しくもなるだろう。
それにしてもコイツは、思いのほか嫉妬の塊のようだ。
「ほらほら、わたしの頭をぐしゃぐしゃするじゃないですか!」
「お前だからやるのであって、ルシナには出来ないぞ。お前は特別だからな」
「……はわわわ!」
「永遠のパートナーだからこその態度だ。それ以外に求めることがあるのなら、後で聞く」
「じゃ、じゃじゃじゃあ……アクセリさまのお気持ちを、わたしにくださいっ!!」
「気持ち? それはアレか? アレなのか……」
「さぁさぁさぁ! 遠慮無くくださいっ!」
不思議なパナセに救われ、最後まで予測出来ないことをされた薬師の女に、こうも操作される日が来ようとは思わなかった。
これもベナークたちに追い出されたからこそ――か。
ベナークはこの世界から消え、魔女も滅することが出来た。
気になるのは当時一緒に組んでいた魔術士たちの行方だが、魔に落とされたのかあるいは、ベナークを見限ったのかは後々に分かることだろう。
「まぁ、何だ……ここでするのはあまりよろしくないからな。外に出てからでいいか?」
「嫌です! 今がいいんです~~!!」
「し、しかしだな……」
「ふぐっ……うぐっ、グズッ……ダメでずが~?」
「な、泣くな! わ、分かった。では行くぞ」
ルシナの視線が突き刺さっていたのもあるが、泣かれてまで拒むことではない。
「――……っ! これ……これを待っていたです。これからもずっと、ずっとわたしのお傍にいてくだ……」
「も、もういいだろ」
「えいえいえいえいっ!」
「こ、こら、麻痺草を投げるな!!」
「動くから駄目なんです。アクセリさまは動かずに、わたしを受け入れて下さ~い」
動けない……の間違いだろうが、もちろん耐性はあるので動ける。
ここは黙ってパナセの優しさを受け止め、そこからこの先のことを考えて行くしか無さそうだ。
万能の薬師パナセに救われて、弱くなる前以上に能力を得たこの俺、賢者アクセリが最強パーティーをパナセと共に育てていくとしよう。
「賢者アクセリさま、永遠によろしくなのです~!」
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