表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/78

77.ベナークの最後


「……ふ、さてと……」

「アクセリさま?」

「あぁ、トドメを刺しにな」

「ええっ!? あの人はまだ生きているんですか?」

「ベナークは腐っても勇者だったからな。耐性も備わっているし、魔王に魂を売り飛ばし済みだ。俺を追い出した奴をこの世界から追放することこそが、俺からの恩情だ」


 どうやらパナセは自分がしたことを、少しは覚えているようだ。


 意識が変異者に取られていたとはいえ、直に刃を手にした感触は残したくないだろう。


「で、でででも~」

「自惚れるな。パナセの為じゃないぞ。これをする……いや、しなければ俺が受けた呪いは解けないだけだ」

「じゃ、じゃあ……あのあの、どうぞ!」

「……何の真似だ?」


 どういうわけか、パナセは目を閉じ何かを待つようにして、つま先立ちをしている。


「アクセリ、パナのパートナーなのでしょ? それならその通りにしてあげなさいよ」

「確かにそうだが、その通りとは何だ?」

「……はぁ。賢者のくせに、それが分からないなんて……」

「ん? ルシナが何のことを言っているか、クリュスは分かるか?」

「そのことを、アクさま……わたくしに言わせるおつもりですか? それと、された後はクリュスではなく、ロサとお呼びになって、頬を思いきり叩いてくださいませ」

「あ、あぁ……そのうちな」


 ルシナが言っていること、クリュスが態度で示していることも何となくは分かるが、何故この場でやらねばならんのか。


 油断を生めば、たちまち俺は意識を落としてしまうというのに。


 パナセなりの謝罪なのかもしれないが、何も今やるべきことではないはずだ。


「――アクセリさま、アクセリさまぁぁぁ!! はーやーくー!」

「わ、分かった。そうねだるな」


 アミナス、ストレは子供のようなもののせいか見られても関係無いが、ルシナとクリュスが見ている前でそれをするのは何の罰なのか。


 パートナーとして選んだ手前、これからも求められることになるのは必至か。


「――んんっ……アクセリさま……」

「……あぁ」


 口づけは何度か交わしているが、パナセから流れ込んで来たのは幸せの鼓動だ。


 同時に、万能の力も注がれている感じを受けている。


「む……? パナセ?」

「この力は、あなたに捧げます。わたしは、アクセリさまの為……永遠にお傍にいます」

「し、しかし、これは――」

「あなたへの償い……禍々しき力は、力ある賢者さまにお預けしたいのです」

「……お前の想いを全て受け止めてやろう」


 パナセが求めた口づけは、俺への求めと償いが入っていた。


 口づけを通して、パナセの中に眠っていた万能変異の力が俺に注がれ、同時に俺の傷は治され、パナセは変異の能力を失ったようだ。


 万能の力よりも、おかしなパナセだけになってしまったが、力を取り戻した俺が守っていくしかあるまい。


「――お気をつけて」

「そうだな、それも奴へのはなむけとなるだろう」


 ルシナ、ロサ、そして愛するパナセの期待を背に、俺はベナークの元に近づく。


「……ア、アクセリ、てめえが俺に呪い……追放の術をかけられるわけがない……」

「その通りだ。俺は魔王から力を注がれていないのでな。だが、呪い魔法でなくともお前を地獄に送るのは可能だ」

「ぐ、くそ……あの女の力は何なんだ……たかが奴隷ごときが……」

「奴隷ではなく、万能者だ。デニサの元に行かせてやる。それがせめてもの礼だ」

「礼……?」

「ここに来たことで、彼女の呪いを引き出せたのだからな」

「……礼なら、今ここでてめえに返してやる!! き、消えろ……賢者め!」


 魔に魂を売り飛ばし、心酔したベナークにまだ力が残っていたか。


 横たわっていたベナークだったが、この俺に手をかざし、デニサからもらった呪いの力を放とうとしている。


 奴は変異のパナセによって、刃で突き刺されたが苦鳴をあげず、俺の為だけに力を残していたようだ。


「き、消えやがれ、劣弱賢者がーー!!」


 殺さず生かしたまま俺をPTから追い出し弱くしたのは、ベナークの弱さだったのかもしれないな。


 勇者としても強さは平凡、剣の動きも弱いままだったのが運の尽きか。


「命を乞え、この地この生に飢えを覚えた勇者ベナーク、我が望み、我が声をその者の身に委ねん……サナトス!」


『な、何っ!? な、何だ、それは……っ!?』


「呪いでなくとも、お前に”死”を与える黒魔法程度なら使えるからな」


『が……あ、あぁぁ……く、そ……』


 俺を追放した重力系呪術では無いが、この黒魔法は死の宣告のようなものだ。


 かつて俺を閉じ込めた黒い球体のようなものに近いが、恐らくベナークの全身を包んでいる黒の空間は、闇の存在どもの元に連れて行くカタチに近いはず。


「もう一度、地の底から這いあがって来い。そこで魔のモノどもを倒せたらな」

「……ぎぁぁぁぁぁぁ、ひ、た、助け……ア、アクセリィィィ」

「自ら償うことだ……勇者ベナーク」


 最後にして助けを求めて来たが、ベナークの肉体は人間の形を残したままの人形に過ぎない。


 そのまま血の塊だけを残し、ここから完全に消え、ベナークの意思は消滅。


 これで俺が受けた呪いも弱かった力も、全て終結した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ