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76.影別れと目覚めと終結


 これで良かったのか……? 


 考える間もなく、パナセであってパナセではない禍々しい刃が、ベナークの体に突き刺さった。


 万能変異者への発動条件は、パナセ自身に関係する者の血を見ることだったが、一命を取り留めたとはいえ、ルシナの弱々しい姿と相まって、パナセの意識が黒い方に向かってしまったのだろう。


 黒騎士に言われていたことを守れなかった罪は、この俺自らが受けるべきと考えた結果、その刃は奴を貫通して俺にまで届いた。


 護身用にとパナセにも渡していた短剣は、禍々しき気配を纏わせ、鋭き刃となって一直線に向かって来た。


「ア、アクさまっっ!?」

あるじ!」


 防御に徹し、ベナークとの時間稼ぎを凌ぎ切ったクリュスとストレは、俺への悲痛な叫びをあげた。


 痛覚への遮断は要素を充ててはいたが、致命傷に準ずる痛みが襲って来ている。


 身動きを封じたベナークの野郎がまだ人間部分を残していたのは、急所に近い部分……つまり、胸から下腹部辺りまでだったが、パナセのソレはたとえ不死身だったとしても、関係無かっただろう。


「……ガ、ガハッ……く、そったれが――」

「良かったではないか、お望み通りの結末になって」

「ふ……ざけ――んな……薬師くすしごとき女に、やられ……貴様と……何故」

「パナセを甘く見たお前の負けだ……ぐぅっ」


 魔女にして魔王の現身だったデニサを消したまでは良かったが、まさかベナークの野郎がここまで卑劣な行動を取るようになるまで成り下がっていようとは、堕ちるとこまでおちたということらしい。


 刃を貫き通したところで、パナセはその場で意識を失い、その場に崩れていく。


 俺の手でベナークにトドメを……とは思ったが、パナセがしてくれたそれだけでも、俺の役目は終わりを告げたと言っていい。


 そうして意識を落としてどれくらい経ったか分からない頃、顔にのしかかる温かな重みを感じていた。


「――ん……む?」


「ふぎゅぅぅぅぅ~ぐすっぐすっ……どうしてどうして、アクセリさまが……」


 俺の顔に伝って来ているのは、パナセの涙か。


 良かった、元通りのパナセとして目が覚めたみたいだ。


 しかし涙かよだれかは不明だが、怒涛のパナセはいつまで経っても止んでくれない。


「はぎゅっはぎゅぅっ……ズビビビー」

「……死ぬわけじゃないんだから、泣き止めパナセ」

「はぎゃっ!?」

「おっと、すまんな。ついつい手が動いてしまった」

「あうぅぅ……ひどいです~」

「っっ……く……お前がパナセで合っているか? お前の記憶の底に眠る忌まわしき恨みつらみは、無くなったのか? そうでないなら俺の要素で消すことも出来るが……」


 ベナークは俺とパナセより少し離れた所で、息絶えたように見えるが、まずはパナセだ。


 血の記憶……かつて奴隷として生きていた間の辛い記憶が残るパナセから、万能変異なる力を消すことが可能ではあるが、同時に万能者としての能力が失われてしまう可能性は否めない。


「お、お願いしますです~……アグゼリざば~グズッ」

「わ、分かったから、いい加減泣き止め」


 俺の体は辛うじての状態ではあるが、パナセにいつまでも泣かれては処置も出来ない。


 多少疲れはするが、まずはパナセの中に眠る長きにわたる変異者を取り除き、その後にベナークの肉体をこの世界から追い出すとする。


「――ふぅっ……我が要素、盟約に従いて深く底に眠りし不詳の影……我がパナセより、変異の刻から解き放たん。イレーズ……く……うぅぅ」


「ほえっ? アクセリさま?」


 やはりとも言うべきか、傷を抱えたままの要素唱えは意識を奪うようだ。


 パナセの内に眠る影を除いたところで、俺は意識を遠のかせてしまった。


「パナ……?」

「ルシナちゃん! だ、大丈夫?」

「……うん、アクセリの回復が効いたから。そ、それよりも、アクセリの意識は?」

「どうしよ、どうじよぉ~アクセリさまがぁぁ……」

「し、死んでないからね? き、きっと疲れているはずだし、パナを落ち着かせる為に頑張っていたみたいだから」

「フン……アクさまを勝手に死なせるなんて、玉ねぎ女は変わらずの低劣ぶりだな」

「う~う~玉ねぎ女じゃないです~~!!」


 どうやら俺の仲間たちは無事を通り越して、変わらずの状況を作り出しているようだ。


 オハードと召喚娘のアミナスだけが微妙に放置気味ではあるが、放って置いても害をなさないだろう。


 さて、意識が戻り次第、パナセからは影が消え万能者として失われているかどうかを確かめてみるか。


 その後は最後の要素を使って、まだここに在るベナークをこの世界から消してやる。

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