表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/78

43.拠点城リルグランへの帰還 2


「劣弱賢者になったんだってな? アクセリ」

「そういうお前は当時から変わっていないな、魔戦士オハード」


 魔戦士はその名の通り、魔術を擁した戦士であるが、気性が荒く協調性に欠けるのもあって、PTに加えるにはリスクが伴う。


 ましてこのオハードという男は、血の気が多すぎる。


 当時のベナークは大人しめの勇者で、強気のオハードと合わなかった。それだけで、PTから追い出されてあぶれてしまった哀れな男でもあるのだが。


「くかかっ! それはてめえの節穴ってやつだ! 剣を向けるなんざ無駄すぎるから、てめえと同じ魔法で許してやるよ!」

「ほぅ、許してくれるのか? それは優しいことだな」


 弱体化した賢者だからなのだろう、武器ではなくあえて魔法で勝負を挑んで来るようだ。


「……それで、そこのガキはてめえのガキか?」


 この場にいるのはオハードと俺、そして――


「あ、争いは好きじゃないのだ。我が成敗をしてやってもいいのだ!」

「ああん!? 邪魔すんじゃねえぞ、ガキィ……」

「ひっ! そ、そういうことはおっさんに任せるのだ……わ、我は関係したくない~」

「ちっ、これだから女は面倒なんだよ!」


 コイツだけは当時から変わらないようだ。昔も今もオハードの言葉は悪いが、素性は亡国の貴公子だ。


 風采ふうさいに優れ、国中において誰もが見惚れた模範的な男だったらしいが……、女に騙されて国を追われ、行き着いた先がリルグランということらしい。


 ここにいたオハードと共に、当時はベナークの野郎と俺の三人で鍛えの日々を過ごしていた。


 そのままPTを組み、冒険を繰り広げるはずだったが、女を加え出したことでオハードだけがあぶれてしまった。


 当初は女だけのPTにするつもりはなかったが、黒魔導の女を加えてから運命が狂い出したということになる。


「炎魔術のヴールでも喰らえよ! アクセリ!」

「おっと、ウォール()で防がせてもらう。で、今でも女は苦手か?」

「苦手じゃねえ! 面倒なだけだ! 風魔術ヴィントで澄ました顔を歪ませやがれ!」

「じゃあ、リオート()で返してやろう。だがオハードもその面を整えれば、今でも貴公子そのものなのではないか?」

「……うるせえ!」


 ――と、オハードとの魔法合戦は会話の中だけで完結してしまうわけだが、本来は自然の要素を従えて攻撃に転じる俺にとっては、キリがない戦いでもあるだけに不利を生むだけだ。


『わわわわぁ!? ア、アクセリさまが戦ってるです! わたしも投げまくりますよ~!』


『バカッ! せ、パナセ!』


『えいえいえい、えーい!!』


『あ? 女が何の用――ぐあっ!? し、痺れ……か、風が止められねえ!?』


 オハードの手元には小さい旋風つむじが出ていたが、俺はまだ氷を出すに至っていなかった。


 そこに来たのが興奮状態のパナセで、訳も分からずに必殺の適当草をぶん投げて来たことで、オハードは全身が麻痺し、手元の旋風が狂いを生じ始めた。


「きゃぁぁぁっ!? か、風が渦巻いてくるです~~!? ア、アクセリさま~い、痛いです痛いです」

「ちいっ! だから言ったというのに! パナセ、俺の手を取れ!」

「ひゃいっ! 手、手~と、届かないです~あぅあぅあぅ」


 魔術の繰り広げには、ある程度の抑えも効かせていたとはいえ、知らない奴が割り込めば巻き添えを喰らうのは必至だった。


「おい、オハード! アレを止めろ!!」

「ぅ、あぁ……し、痺れて動けねえ……俺に何しやがっ……」

「くそっ!」


 本気の攻撃ではないにしろ、旋風の渦に巻き込まれれば、切り刻みの時間が絶えず続くのは明らかだ。


 まして術者の手から離れた風は、無意志のままに対象を刻み続けるだけ。


「パナセッ! 待ってろ、俺は今から氷の要素を従わせて旋風ごと固めてやる!」

「はひぃ~ぎゃうぅ……痛い、痛いです~うぐゅ~」


 そうは言ったものの、旋風の渦は弱まる気配を見せないどころか、対象が抵抗していることで切り刻みの渦を強め、竜巻状に形状を変え始めている。


「く……パナセ、た、耐えろ!」


 何と無力なことなのか……愛し、守ると言った薬師の女すら目前にも関わらず、救ってやれないとは。


 攻撃対象が増しすぎた旋風となると、中々要素は言うことを聞きたがらない。


『どけ、劣弱』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ