表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/78

20.強制的な仲間入り ①


 薬師たちから『パナセさま』などと言われているパナセは、実はとんでもない能力なのか。


 ホームどころか、生まれ故郷である里の中であれば、普段は見せることが無い隠された能力を出せるに違いない。


 そう思ってけしかけてみたのだが……


「え~い! やぁっ! えいえいっ!」


 俺も含め、周りの薬師たちからも深いため息が漏れ聞こえて来ている。


「パナセ。お前はその、何をしているのか聞いていいか?」

「はいっ! 手をこうして、こう……動かしています!」

「見ればわかる……それで何を呼び出そうとしている?」

「へっ? 呼ぶ? 何も呼べないですよ~」

「それ、その奇妙な動きがお前の自慢か……?」

「もちろんなのです! これをすることで気合が入りまして、いい合成が出来る時があるのです!」


 怒るのもバカバカしく、本人は至って真面目に披露してくれたのだから、褒めてやってもいいのだが。


 しかし他の者の反応を見る限りでは、迂闊に褒める事をしてはいけない気がする。


「はぁ~~……パナ! いい加減にして!」

「ふぎゅっ!? ルシナちゃんもやる?」

「やるわけないでしょう? そこの賢者さまも困っていることだし、動きは止めてね」

「あぅ……ごめん~」

「でも思いついたんでしょ? それなら、奥の小屋を空けてるから作って来たら?」

「うんうん! そうする~! アクセリさま、よろしいでしょうか? あのあの……」

「よく分からんが、行って来い!」


 あれだけ嬉しそうにしているパナセに何を言えるというのか。


 不思議な光景といえば、パナセの移動とともに他の薬師たちが、ぞろぞろとついて行ったことだ。


「そこの薬師の女! パナセのアレは何だ? そして、お前も薬師なのだろう?」

「ご紹介が遅れました。わたしは薬師の隠里レサルの長、ルシナ・アウリーンと申します。あなたは賢者さまとお呼びすればよろしいでしょうか?」

おさ? 全ての薬師を束ねる者か。俺は確かに賢者だが、今はただの義賊として動いている。出来れば、アクセリと呼んでもらいたい」

「ではアクセリさま、パナセを連れ歩いている訳をお聞かせください。そして、何故あの子は霧に驚いていたのかもお教えくださいませ」


 連れ歩いているとは、随分な言われようだ。


 粗悪なPTから救い出した……いや、助けられたのは俺の方ではあるが、この女の言い方はまるで……


「パナセはすごい薬師で間違いないのか?」

「もちろんです。あの子は生まれ持っての天才児! そして、潜在的な能力が極めて高い特別な存在なんです! わたしなど、足元にも及ばない……はずなのですが……あの子は霧にたじろぎ、戸惑っていました。あり得ないことですが、あの姿を見てこちらも霧を引っ込めるわけにもいかず……」

「霧と言ったが、あれは魔力を操っての幻術だろう? 薬師は魔力を持たない者ではないのか?」

「いいえ! 薬師は回復魔法士よりも回復に優れ、攻撃においても引けを取らない魔力を有しています! 使えないことなどありえないです」


 俺はパナセの惑わし草を吸ったままで、幻でも見続けているのか?


 まるで違うではないか。


「ルシナとやら、俺はとある事情で察しの通り、力が無い。無いが、嘘を見破る能力はある。お前の言っていることが嘘でないとすれば、あのパナセは何だというのだ? 何故あんなに愉快なことになっている?」

「それはわたしにも分からないです……ですけど、その原因はきっと、アクセリさま……あなたにあるかと」

「何? 俺がパナセをおかしくしただと? それは聞き捨てならんな。薬師の長とやら、俺に許しを乞うあるいは、持ちうる力を示して誤解を解け!」

「……そのつもりはありませんでしたが、あなたの賢者としての力をお示し頂くとします。その答え次第では、わたしも動かなければなりません」

「ふ、いいだろう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ