27話 新スキル、そしてヒット
この下書きを書いている時点で6時ギリギリというね。
サボり癖、ダメ、ゼッタイ。
「新スキル獲得、おめでとう」
こうアレクに言われた時、庄司は何のことか分からなかった。
暫し熟考してみる。
うーん。
うーむ。
うん!?
ようやく思い出したようだ。
そう<スキル強化>だ。
そう言えば醤油をつけて素揚げを食べた時に何か文字が見えたような...
まあいいかと思い放置していたが...
「何だったけ?」
「何だったけ?じゃねーよっ!」
「醤油の発見に比べたら大したことないかと」
アレクは「はあ...」とため息をついた。
「魔闘魚を釣った時点で思い浮かばなかったのかい?」
「いやあ、完全に失念してたよ。で、獲得できたスキ
ルは何だ?」
アレクは先ほどよりも大きなため息をつく。
「<身体強化強化Ⅰ>だよ。身体能力が2倍、効果時間が2倍の10分
になったよ」
「身体強化強化なのか」
「うん、身体強化強化だよ」
「・・・尺稼ぎをしたい作家の気持ちが理解できた気がする」
「尺稼ぎ?君は時々変なことを言うよね。
まあ、”身体強化”を”強化”するのだから別にいいんじゃないかい?」
「前も魔法強化だったしな」
「・・・・・・・ん?」
ふと、そこで複数の視線を感じた。
嫌な予感がした俺とアレクは咄嗟に振り返る。
「「「「なのそのスキル、気になるぅぅぅぅぅ」」」」
個性豊かな3人組+ガリムだ。
存在感が最近皆無だった世紀末の人の眼光が特に鋭い。
てかいたのかお前。
「・・・あ、アレク。ど、どうするよ?」
「判断は任せるッ!」
「あ、ちょ、逃げるなあああああ」
アレクは走り去った。
走り去る前に小さく<身体強化>と言ったような気がする。
今回獲得したスキルは幸か不幸かその性能を遺憾無く発揮し、
陸上部員の努力をあざ笑うかのような速度で
そのまま甲板を走り抜け、船室へと駆け込んだ。
バタン
船室のドアが閉まる音が大海原に虚しく響いた。
他にあるのは船にぶつかる波の音と、カモメらしき海鳥の鳴き声だけだ。
む、再び嫌な予感が...
「「「「さあ、洗いざらい吐いてもらおうか」」」」
先ほどの4人が満面の笑みをこちらに向けている。
・・・目の奥にどす黒いオーラを感じるのだが。
だが、それでも俺は観念しきれず、背を向けて逃げようとする...
が、そこには有無を言わせぬ迫力(筋肉)を見せつけるガリムがいた。
◇
「さて、聞くことも聞いたし、ホホジロザメ釣るぜヒャッハー!!」
その声に合わせて、問い詰められて食前より遥かに衰弱(?)した俺を
含む5人の人が円陣を組む。アレク?今頃は船室の底で怯えていることだろう。
ケッ、奴の小物っぷりに相応しいポジションだ。
「ちょっと待って、僕も入れてくれないかい?」
・・・そんなことはなかった。
アレクは恨みを込めた俺の視線と、4人のジト目を全く気にしない図々し
さで円陣に入ってきた。ここまで来ると一種の清々しささえ感じる。
「絶対釣るぞ~ッ!」
「「「「「オオッ!」」」」」
仕切り直した世紀末の人の掛け声に、皆が足を突き出した。
その後は直ぐに釣る準備を始める。
今日は鯖を泳がせる訳ではなく、サメの嗅覚を利用して鯖の血を撒き
散らし、それに寄って来たサメを鯖の切り身で釣るというものだ。
まずはイカリを降ろし、船を固定する。
次に今生簀で泳がせている鯖の頭を全て切り落とし、
血が固まらないようにバケツに入った水につけて、心臓の鼓動で血を出し切らせる。
グロテスクだが、鯖を〆る時にも同じようなことをするので特に何
も感じない。
そして真っ赤に染まったバケツ入りの水と鯖の頭を海に流す。
ガリムさんの予想通りなら、数分もしないうちにサメがやって来るという。
最後に、頭を斬って残った鯖を針に付け、海に落とす。
勿論普通の糸だとサメに切られるので、安心と信頼
の<豪田釣具店>製のワイヤーを付けてある。
後は船に固定して待つだけだ。
因みにワイヤーはガリムさんがお金を出してくれた。
ここまで計算してアレクは俺を呼んだのだろうか。
だとしたら素直に尊敬する。
ちらり、とアレクを横目で見てみる。
「カバディ、カバディ、カバディ……」
「何反復横飛びしてんだお前」
「ふふ、庄司もやってみなよ。面白いぞ」
「どこがだよ!」
爽やかな笑顔は相変わらずだ。
やっぱり、深く考えすぎたのだろうか。
「~~~~~~~~ッ!」
刹那、竿が大きく曲がった。
船も傾いている。
ガリムさんがバランスを崩しながらも竿を持ち、
あらん限りの力で合わせた。
途端に、”それ”が大きく走り出した。
風がなくなった時用のオールを縦に固定して水に入れ抵抗を
大きくするが、船ごと引っ張られて行っている。
イカリはしばしの間海底を抉っていたが、どこかに引っかかったのか
ロープが切れ、再び洋上に戻ることはなくなってしまった。
50メートルほど引っ張られた時、遂にそのオールの一本がメキリ、と
いう音を立てて折れた。すぐに予備に付け替えるが、今度は反対側のオ
ールが折れた。
もう予備はなく、後は”それ”に引っ張られるだけかと思ったが、ここまで
来てようやくそれが走るのを止めた。オール二本の犠牲を無駄にしまい
と、ガリムさんが筋肉に血管を浮き上がらせる程の力でリールを巻く。
1m、また1mと距離が縮まっている。
いや、1m、1mと船が”それ”に近寄っていると言った方が適切だろう。
”それ”は今はまだ動きを止めているが、いつまた動き出すか分からない。
それまでに1cmでも距離を縮めておきたい。
予備のオールを付け終わり、静寂が訪れた時。
「いいぞガリム!やれ!」
アレクの声だ。
それが皮切りになったのか、
それまで黙して見守っていた人達も、はっと何かに気付かされたように、
ガリムさんを応援し始めた。
「いけー!」
「絶対釣ってくださいよぉ~!」
「いいぞ!もっとやれ!」
「ヒャッハー!」
・・・一人はただの感情の吐露だが。
活気づいたのか、ガリムのリールを巻くテンポが少しずつながらも
早くなっていく。応援されたことで高揚感を感じたのか、
顔は獰猛な笑みを浮かべていた。
よし、このままなら釣れる。
誰もがそう思った時だった。
メキリ
嫌な音がした。
ガリムも一瞬巻く手を止める。
音がしたのは、竿を固定していた台だった。
メキメキ
更に嫌な音を立てる。
土台にはもう目に見えるほどの大きさの割れ目が出来ていた。
ポキリ
その土台が遂に折れた。
ガリムは土台なしで構わず巻き続けているが、巻く速度は
再び遅くなっている。
すると、チャンスと見たのか、はたまた偶然か、
”それ”が再び走り出した。
ガリムは必死に耐える。
次の瞬間。
バッシャーンッ
ガリムが海に落ちた。
こんなことにしておいてその後の展開を考えていない〆鯖。
見切り発車も甚だしいね。
良い子のみんなはこんなクソ作家になっちゃダメだよ。
ちゃんとプロット作ろうね。30話ぐらいは毎日更新しようね。
運と実力があれば日刊ブーストに乗れるはずだよ。
以上、底辺作家の後悔でした。
次回は28日(日)更新です。多分。




