23話 アレクとイカ釣り
島の南側に着いた。すぐさま準備する。
「にしても見たことのない疑似餌だね。どうやって使うんだい?」
アレクが餌木の使い方を訪ねてきたので実演する。
まず、糸の先に餌木を付ける。で投げる。
そんでもって底まで落として...よし、着底したな。
一度竿をゆっくりと立てて餌木の方向を修正してから————2回しゃくる。
そうしてまた落として...2回しゃくる。しゃくった時に重みを感じたらあたりだ。
・・・ってもう釣れたぞ。しかも大きいな。
庄司の竿は震えていないが、確かにしっかりと曲がっている。
イカは魚みたいに暴れたりはしないが、無駄に重たいのが特徴だ。
「巻くときは一定の速度で巻かないと外れるぞ。返しがないからな」
餌木には基本返しがついていない。
(ついていると外してるときにイカスミが手に...)
だから、巻く速度を落とすと外れてしまうのである。
「アレク、網入れ頼む」
「わかった」
もうすぐそばまでイカが寄ってきている。
普通ならギャフという道具で引っ掛けるが、網でも十分代用できる。
――――スミを吐かれたときの汚れを気にしなければ。
「よいしょっと」
アレクが網を引き揚げる。中には大きなイカが入っていた。
「これは...600グラムぐらいかな。刺身にするとうまそうだ」
持って帰ろうと思ったが、久々に見るイカがこんなにもうまそうだとは
思わなかった。誘惑に負けて、だがしっかりと〆た後ゲソを一本口に運ぶ。
「~~~~~~っ!」
うまい。噛めば噛むほど甘みが出てくる。
吸盤のこりこりも良い味出しているな。
おっとアレクが羨ましそうにこちらを見ているな。
ふふ、今日の俺は機嫌がいい。ゲソを3本やろう。
後は持ち帰りだ。
「・・・本当にこれ全部貰っていいのかい?」
え?お前が?あの極悪非道なお前がか?何か裏があるんじゃぁ・・・
的な視線を向けないでほしい。全く。俺がそんなケチな訳ないじゃないか。
「日頃の行い、大切」
アレクが何かほざいてやがる。
だが俺はもう諭吉スラッシュは使わない。
これからは善良で模範的な日本人として生きていくのだ。
だからそんな目で俺を見ないで欲しい。
「いいから釣りするぞ」
投げて、落として、2回しゃくって。落として、2回しゃくって。
落として、2回しゃくって。落として...お、釣れた。
今度は小ぶりだ。岸まで寄せて、そのまま抜きあげる。
こいつも〆て持ち帰り用にしよう。
ふと横目でアレクを見てみたが、まだ釣れていないようだ。
今のうちに数の差を開けておこう。
べ、別に競争したいわけじゃないんだからな!
使い方知ってる俺の方が有利だしっ!
そんな大人げない勝負なんてしねぇし!
――――30分後
現時点で俺6杯、アレク7杯だ。
イカの数え方は引きじゃなくて杯なんだぞ。テストに出ないけど覚えとけよっ!
・・・じゃなくて。
「何で俺が負けているんだぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は頭を抱えた。逆転した時の爽やかな笑顔が網膜に張り付いて剥がれない。
「ふふ、僕はイカに愛されているのsゴホッ!」
精神的ダメージを負ったから腹パンした。
これは正当防衛である、いいね?
善良で模範的は日本人は自分の名誉を守るためなら迷わず腹パンするのだ。
うん、違いない。正義は成された。
お、アタリだな。ふんっ!
イカがかかった。これで同点になるはずだ。
即座に回収する。こうなりゃやけだっ!どんな手を使ってでもアレクに勝ってやる!
—―――3時間後
日が沈み切ったので終了した。気になる結果は...
俺21杯。アレク32杯。
「何でだぁぁぁぁぁぁぁ!差が開きすぎだろっ!」
「我々は先日まで植民地支配という屈辱に耐え抜いてきた。
だが、今は違う。今日から我々は栄光の独立国となったのだ。
自国語を胸を張って話せる。秘密警察に怯えなくてもいい。
我らはかの憎きショウジーこくお」
「ちょっと待てッ!いつ俺がアレクを植民地支配した?アレクはいつから国を持った?
というかショウジーって何だよ!俺のことか?俺のことがそんなに憎いのか?」
「ははは。冗談に決まってるじゃな」
「目が笑ってねえよッ!俺ってそんな極悪非道か?この世界の基準ではそうなのか?」
「王国独立宣言だよ。いやあ、圧政を敷かれていた頃を思うとね」
「紛らわしいわっ!」
ぜえはあぜえはあ。全く、笑えない冗談をいうものだ。
「嘘だよ」
「嘘かよっ!本当に憎んでたのかよ!」
俺ってそんな憎まれるようなことをしたか?
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