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21話 アレクの恨み

 

 アレクに協力...もとい強制労働させて捌いた魚達は全て今食べている晩御飯になった。

 いやー、自分で釣ったブリは美味い。


 ・・・隣の国王からの視線が冷たい。


 何故だろうな。俺にはさっぱりわからん。


「娘の手柄を横取りするな!」


 ああ、お得意の心読むやつか。

 覗き魔の時はそんな素振りなかったのにな。


「覗き魔とか言うな!」


 あ、墓穴掘った。

 これぞ自業自得。

 家臣たちからの冷たい視線を浴びている。

 頑張れ。協力はしないが応援してるぞ。



 国王から目をそらす。次に目に入ったのは...アレクだ。

 アレクは自分が捌いたんだと自慢している。


「それぐらいじゃ自慢にならねえよ!」


 取りあえず突っ込んでおこう。


 夕食は終始和気あいあいとした雰囲気だった。



 —―――次の日


 早くもバリスタが完成したようだ。朝食を終えるとすぐに向かう。

 先に到着していたドルクさん・ケビンさん・スコットさんに挨拶する。

 3人の前に置いてあるバリスタはピカピカだ。さすが王室御用達。


 早速試射をしに行く。訓練場は今日も開いていた。

 使ってんのかな。まあ、昨日はなかった沢山の足跡があるから

 使ったのだろうけど。


 話がそれた。


 バリスタを固定し、ドルクさんに装填してもらう。


「装填完了!」


「てーッ!」


 気分は前線指揮官。

 放たれた金属の矢は放物線を描いて飛翔する。



 グサッ!


「おおっ!」


 飛距離は前回の1.5倍ほど。

 大きな進歩だ。俺たちは喜び合う。


 修理しただけで大きな進歩とは、第三者から見れば非常に滑稽だっただろう。

 だが、そんな事は気にしない。安心と信頼の庄司クオリティーであった。


 次は的を作り、そこを狙う。

 最初の数発は見当違いな場所に飛ぶこともあったが、しばらく撃つと簡単に当たるようになった。

 問題の威力は...少し足りないな。地上で使う分には問題なさそうだが、

 水中での威力減衰を考えるともう少し欲しい。


 そこで話し合った結果、取りあえずは矢を細くすることにした。

 攻城戦だと威力不足に陥りそうだが、今回は魔王の皮下脂肪を貫通して

 内臓に突き刺さるようにしたい。

 もっとも、魔王に皮下脂肪や内臓があるかどうかは分からないが。



 ・・・・生物だしあるよね?

 ・・・・中はブラックホールなんで効きましぇーん、とかないよね?

 ・・・・あるといいなぁ。


 生産性のない妄想をしながらやすりで矢を削る。

 もちろん研磨機などという人類の英知の結晶はない。


 ビバ!工業大国日本! ビバ!経済大国日本! 大日本帝国、万歳!

 ・・・・最後のは関係ないか。



 覗きに来た国王も巻き込んでひたすら削る。


「・・・・覗きなどという人聞きの悪い言葉はよさんか」


「いいから削ってください」


「仮にも一国の国王に向かって失礼ではな〈いいから削ってください〉」


 反論されると面倒くさいので食い気味にかぶせておく。


「大体この私にこんなことをする義務があるのかね」


「面倒くさっ!」



 そんなこんなで細い金属の矢が完成した。発射台の方も、矢に合わせて改造する。

 直ぐに終わったので、試射する。装填はまたもやドルクさんだ。


「装填完了!」


「てーッ!」


 打ち出された金属の矢は、今度も放物線を描きながら飛翔する。

 だが、その速度は段違いである。空気を切り裂くようにして飛距離を伸ばしていき...



 グサッ‼



 地面に突き刺さった。

 飛距離は先ほどよりも長い。矢を回収しに向かうと、そのほとんどが地中に埋まっていた。

 貫通力に問題はない。後は対魔王特化にするだけだ。


 丁度きりのいいところで昼ご飯に呼ばれた。

 バリスタと矢を片付けて食堂へと向かった。




「計算は得意かい?」


 食事が終わった後、急にアレクにそう聞かれた。

 なぜこんなことを聞くんだ。


「速度は遅いが正確性は高いぞ」


 受験勉強の時は数学が苦手だったから、せめて正確性だけでも高めようと頑張ったしな。


「午後は暇かい?」


 うーん、特に予定はないな。


「釣りに行こうかと」


「要は暇なんだね?」


 なんだ、やけに必死だな。


「そうかもしれないし、そうじゃあないかもしれない」


 別にYes or Noで答えなければならない訳じゃあない。

 ここは日本人らしくお茶を濁して(?)おこう。


「そんな庄司に折り入って頼みがあるんだ」


 こいつ、折角濁したお茶をエキサイティングろ過してきやがった。


「嫌な予感がすると俺のサ○ドエフェクトが言っているんだが」


 あれ、何だろう。物凄い既視感を感じる。


「気のせいだよ。というわけで、庄司には漁業担当本部の会計を手伝って欲しいんだ」


「そんなところだろうと思ったよ!」


「いやあ、引き受けてくれるなんて嬉しいよ。やはり持つべきは友だなぁ」


「引き受けるなんて言ってないわッ!瞳を潤ませて空を見上げるなッ!」


 するとアレクは歩み寄ってきて、がっしりと俺の腕を掴む。


「大丈夫。三時間”だけ”だから」


「時間が三倍になってやがるううう!そこまで俺に恨み持ってんのかよ!」


 —―――そこから三時間、俺は書類に書かれている数字と格闘した。

 最初のうちは悪態をついていたが、10分もすれば無言になった。

 そして生気を抜かれた俺は、執事に引きづられて行った。

 アレクは助けてくれなかった。


 まあ、その後手伝った人たちが丁寧に部屋まで運んでくれたし、

 沢山感謝されたので良しとしよう。

 アレクはなぜか悔しそうだった。









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