18話 暇が出来たら釣りに行く、これ常識
毎回これぐらいの文字数で投稿したいですね。
目が覚める。
やはりというべきかゲルバルトさんから頂戴した平手打ちの傷は
見事に口内炎に進化していた。
にしても横に柔らかい何かがあるな。しかもちょっと重い。
なんだこれ。
・・・もにゅ、もにゅ、もにゅ.....って
「何やってんだ俺ェ!」
俺がもんでいたのは少女の胸...ではなく腕だった。
流石お姫様というべきか肌にハリがあり、手で押すと跳ね返る感触が伝わってくる。
それでいて無駄な脂肪はついていない。そしてこのいい香り...
はあ、天国とはここのことだったんだな...
ッは!
いかんいかん。俺は巨乳派なのだ。最近貧乳の良さが分かってきた気がするが、
断じてロリコンではないッ!
—―――自分で言うのもなんだが見苦しいな。
俺の属性を変化させようとする諸悪の権現(完全なる言いがかり)はというと、
俺が叫んだにも関わらずすやすやと眠っている。
—―――はあ。男の布団の中だというのに、無防備すぎるにもほどがある。
世の中にはあんたに欲情するような人間もいるんだぞ。
と心の中で注意してからしばらく眺めていたが、
とうとう我慢できなくなり、髪に手を伸ばしてしまう。
流石お姫様というべきか髪はさらさらで、しっとりとした感触がある。
そしてこのいい香り...
はあ、天国とはここのことだったんだな...
既視感あふれる感想を抱いていると、
「おはよう、そろそろ食事の時間だから一緒に...
おっと、お楽しみだったなら僕は先に〈諭吉スラッシュッ‼〉って危なッ!」
扉を開けてアレクが入ってきた。ここまでなら許せる。
だが、アレクは俺たちを見て「お楽しみ」などという単語を吐きやがった。
俺は即座に今日の分の<金の泉>で諭吉スラッシュしたが、アレクをスラッシュ(?)するには
至らなかったようだ。
諭吉スラッシュがスキル名っぽかったが気のせいだろうか。
「全く、スキルを使うときは目が見開くから避けるのは簡単だ、っじゃなくて
いきなり金貨を投げるとはどういうことかい?僕は二人の関係をを的確にグハッ」
金貨を避けれて枕は避けれないのな...
前半は寝起きゆえに頭から抜け落ちてたことだが、最後はどういうことかね。
的確の意味を広辞苑で調べてこい。
というか俺の金貨をポケットに入れるな。
おい!
返せ!
ダメだった。仕方ないので一つ聞いてみる。
「俺が姫様に手を出すような人間に見えるかね」
「見える」
即答だった。
微妙に悲しかったので枕を投げた。
避けられた。
何故だ。
「うう、あ、庄司さん、アレクさん、おはようございます」
少女が目覚めたようだ。俺もアレクも「おはよう」と返す。
「にしても庄司さん、昨日は(話をするのが)楽しかったですね」
少女の言葉は下手に省略したせいで意味深な文になり、
アレクがほら見ろ、的な視線でこちらを見てくる。
少女に注意しようとも思ったが、この満面の笑みだとそのようなことを言う気も失せる。
ここから朝食を食べ終わるまでに何とか誤解を解くことは出来たが、その過程は
「めちゃんこ頑張った」
とだけ言っておこう。
食事を食べた後、アレクによると今からバリスタを改良するという
訳のわからない仕事が今からだと言われたので、アレクと一緒に
行くことになった。
「なあ、さっきの金貨を返してくれないか」
「断る!僕はこれがないと生きていけないんだッ」
「どうせ娼婦だろッ!」
「違うッ!」
「嘘だろ」
「断じて違うッ!」
するとアレクは語りだした。
「僕には実は病気の母がいるんだ。その病は不治の病だと言われてたんだけどね、
最近治療法が分かったんだ。だけど、それが恐ろしく金のかかるものでね。
幻と言われているキリルの実をすりつぶしたものを毎日食べないといけないんだ。
これまではキリルの実を買うことに僕の全収入でなんとか足りていたんだけど、
物価が上がって買える量が1個少なくなったんだ。1個と言っても、それがあれば
5日分の量になるんだ。だからお願いだ、今月の分の残り1つを買うために僕に
その金貨をくれないか」
そんな話を聞かされると泣けてくるじゃないか。
—―――金貨一枚のために作り話を作る努力になぁ‼
「長々と語ってもらったところ悪いけど...嘘だな」
「何故バレたし」
あっさり認めるのね。
「大体矛盾してるんだよ。全財産母親に捧げてるやつがミスリル貨5枚も
持っていたりするか」
「うぐッ」
「で、何に使うんだ」
「三大欲求を満たすため、です...」
「もっと詳しく」
「娼館です」
「もっと詳しくッ」
「クロエちゃんと、あんなことやこんなことをするため、です」
「そのクロエちゃんとやらはアレクのことが好きなのか」
「好き、だと思います」
「なら告白しろ。ノーと言われたらお前はカモだったということだ」
まあカモだったとしてもアレクの身分なら嫌と言う人はそういないだろう。
それにしても娼館にいくために病気にされたと聞いたら母さんが泣くぞ。
それからアレクと数回話しているとバリスタ部屋(仮)の前に着いたので
中に入る。先に来ていたドルクさん、ケビンさん、スコットさんに挨拶してから、
早速4人でバリスタの改良点を探す。
「改良点を探す以前に...古い、ですね」
一通り見終わった後、ケビンさんがうねる。
「取りあえず試射してどれぐらいの威力が出るか見たほうがよさそうですね。
庄司様ならわかるかも知れませんが、私たち3人は仕組みも基本的なことしか知りませんし」
ドルクさんがそう言い、残りの2人も頷いていたので例の訓練場にバリスタを運び、試射する。
ヒューン
ドサ
「あんまり飛びませんな」
「「「ですね」」」」
ドルクさんの意見に他全員が同意する。
その後の俺の新しく作ったほうがいいという意見にも他全員が賛成し、
一つ一つのバーツの大きさや形、素材などをメモした後、
城を出て王家御用達の大工、鍛冶屋などに製作を依頼する。
それからは幾つかの改良点を洗い出し、解散した。
え、早、と思うかもしれないが、ここではこれぐらいのラフさが普通なんだとか。
異世界ってスゲー(棒)
そして今は...
「「海だーっ‼」」
少女と二人で海に来ている。
あれからもう昼前だったこともあり、すぐに昼食をとった。
昼からすることがなさそうだったので少女を釣りに誘うと、
「ゼッタイ行きますッ‼」とやや食い気味に返事が返ってきた。
よほど釣りが好きなんだと苦笑しながらアレクも誘ってみたが、
昼からが仕事のメインらしく行けないそうだ。残念。
まあ金貨が回収できたからよしとするか。
今いるところは前に行った砂浜とは反対の場所にある整備された堤防だ。
何でも高潮の被害にあっていた地域だったので防波堤を作ったところ、
魚の集まりもよくて一石二鳥だったそうだ。
普段は釣り人が沢山いるらしいが、今は昼過ぎという事もあってかほとんど人がいない。
「潮の流れも速そうだし、深さもそれなりにあっていい場所だな」
「今日は何を釣るんですか?」
今日は竿を3本とタオル、はさみ、ペンチ、針外し、水をくむバケツ、
魚を持ち帰るときに入れるバケツしか持ってきていない。
少女が何を釣るか聞くこともおかしなことではないだろう。
餌、仕掛けの類が一切ないのは俺が気付いた
「餌や仕掛けがかさばるなら釣り場で買えばいいじゃない」
という考えに基づいている。俺ってマジ天才じゃね(そうでもない)
思考が長くなってしまったが質問に答える。
「今日はアジだな。そしてそれを泳がせて大物を狙う」
「おおー、アジですか。いいですねー。刺身が好きです」
ちなみに竿3本の内訳は初日に買った竿2本とルアー用の竿が1本だ。
早速<豪田釣具店>で撒き餌、擬餌針、撒き餌を入れるかご付きオモリ、
泳がせ仕掛けの4つを購入する。
少女の竿に仕掛けをつけていると質問される。
「これは擬餌針、ですか?」
「これはサビキと言ってね。今つけているかごの中に撒き餌をいれて、それで
おびき寄せられた魚が撒き餌と間違えて食べるんだ」
「なるほど。いい方法ですね」
少女の仕掛けを作り終えた後、撒き餌をかごに入れて投入する。
「底まで沈めて、竿を大きく上下させるんだ。そうすると撒き餌が出る」
「わかりました。......糸が出なくなりました。
これで底についてるんですよね。えーい」
少女が竿を上下させているのを横目で見つつ、俺の仕掛けを作る。
かごをつけてっと。よし、これで完成だな。
俺も撒き餌をかごの中に入れて、海へと落とす。
「あ、何か釣れました!」
俺の仕掛けが着底すると同時に、少女が糸を巻き上げる。
その竿はプルプルと震えていた。
「よいしょっ!」
かごが水面から出た時点で、竿の弾力を生かして抜きあげる。
仕掛けの真ん中の針についていたのは....
「ふ、ふぐじゃないですかー!」
5cmほどの可愛いふぐだった。少女の掌の上でプクー、とお腹を膨らませている。
少女も真似をしていて微笑ましい。
「さ、さようならー」
俺に見られているのに気づくと、赤面してからふぐをリリースした。
ふぐは直ぐに体の空気を抜くと、底を目指して潜っていった。
「狙うタナを変えるか」
それから3分ほど経ってもアタリがないので、
撒き餌をもう一度かごに詰めてから、底まで落とす。
ここまではさほどと一緒だが、底に落としてからは上下させずに、
一メートル半ほど糸を巻き取る。
そこで上下させ、撒き餌を出す。
底にふぐしかいないからといって、その場所に他の魚がいないわけではない。
餌を出した後もゆっくりと上下させて誘っていると
ゴゴゴンッ‼
というひと際大きなアタリが竿に伝わってきた。
※本作はロリコンを否定しているわけではありません
 




