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16話 姫様の悩み

次の更新までまた時間が開くかもしれません。

「よかったのか?」


俺は訓練場の入り口に”立ち入り禁止”の看板を立てている少女に聞く。

少女は声のトーンを一つ落として答えた。


「最近父上の傍若無人な振る舞いが目立ちます。

 国のトップだから多少は許されるのでしょうが、 

 それでも少なくない人が不愉快な思いをしているのは事実です。

 こういうところで止めなきゃ、と私は思うんです」


「姫様...」


アレクが呟く。


「さあ、そろそろ食事の時間です。晩御飯は何なのでしょうね

っと、その前に体を拭かないとですね」


少女は声のトーンを戻してこそいるものの、どこか無理やり笑顔を作っているように思える。

だけど俺はどう声を掛ければよいのか分からず、


「そうだな...」


と頷くしかなかった。


その後は各自部屋に帰って体を拭き、服を着替えた。


さっぱりしてさあご飯、と行きたいところだが、食事までの時間を部屋を出てすぐの

所にいた執事に夕食までの時間を聞くと


「30分後ですよ」


と帰ってきたので、行先を食堂から訓練場に変更する。

30分もあれば一往復できるだろう。


それからは主だった人物とすれ違うことはなく、訓練場の前にたどり着く。

もちろん国王の様子を見るためだ。


入り口には”立ち入り禁止”の看板があったが、それをのけた後そっと扉を開ける。


そこにはブリーフ一丁で穴を埋めている国王がいた。しかも何か叫んでやがる。


「ああエリカ、君の笑顔は、太陽のようだ、だから、私をゆるしゅて、くれないか」


なにか見てはいけないものを見てしまった気がする。


俺は20度ほど開いていた扉を一気に閉めた。

そして一度大きく深呼吸をしてから、


(穴を埋めながらポエムを詠むなッ!というか噛んだだろッ‼)


と心の中で盛大に突っ込みを入れた。


「エリカ、そこにいるんだろう!待っててね、今行くから‼」


まずいッ!

そう思っている間にも、国王の足音は大きくなっていく。

クラウチングスタートの体制に入ったところで、扉がバン!と音を立てて開かれる。


国王の唖然とした視線と、俺が振り向きざまに投げかけたゴミを見るような視線が数秒間交差した。

もちろんブリーフ一丁である。


国王にとっては数百秒にも数千秒にも感じられたであろうその時間は、

現状を理解するのには十分だった。


国王の顔がみるみる赤くなっていく。

口を開きかけたところで、腰を上げ、地面を蹴る。


僅か数秒で沸点に達したらしい国王は、熱気を振りまきながらこちらに迫ってくる。

松○修造じゃないんだから。

そうツッコんでられる時間もそう長くないようで国王との距離は少しづつ縮まっていく。

ならば仕方ない、<身体強化>‼


5分後、なんとか国王を振り切った俺は、ゼエハア言いながら部屋で寝転がっていた。

危なかった。いろんな意味で危なかった。


後から何か言われそうだが、先ほどのポエムは脳内フォルダにきちんと保存してある。

俺の心が読めるならばうかつなことはしてこないだろう。


「庄司様、夕飯の時間です」


あと1分休んでいいっすか。

だめっすか。

そうっすか。



食事の前に国王がいないいない騒動が起こったが、それは少女の


「父上なら今穴を埋めてます(ニッコリ)」


という意味ありげな笑みを見るとすぐに収まった。


食事は美味しかったがいつも通り物足りなさが残るものだった。


食事が終わった後に少女が話しかけてくる。


「あの、先ほどの話なんですけど、私は庄司さんとアレクさんに父上を止められる人に

 なって欲しいんです。身勝手な願いだということはわかってますけど、どうか...」


少女が俯く。


————はあ。こんな純粋な少女を悩ませる国王はクズだな。

アレクと目を見合わせ....


「父上呼び最長記録更新中54分25秒、26秒、27秒...フゲッ」


俺は右ストレートをアレクの頬に叩き込んだ。

人の話を聞け。シリアスな雰囲気が台無しだろ。


「わかった。こんな可愛い姫様を悲しませる国王(あいつ)を止めれるようになって見せる」


「僕ももちろん協力するさ。当たり前ダッフンダ!」


秒数数えてた奴が当たり前とか抜かすな。


「本当にありがとうございます‼

 あ、そう言えばそろそろ1時間が経つので見に行ってみましょうか」


「わかった」


あと5分しかないので速足で訓練場へと向かう。

3分ほどで訓練場につく。


前見た時は2割ほどしか埋まっていなかったが大丈夫だろうか。

まあいっか。国王だし。


俺とアレクと少女は頷き合った後、ゆっくりと扉を開けた。





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