きつねと同心
「辰馬坊、相変わらず無茶をするんだから」
宵闇の中からふわりと現れて、かずらはうっすらと笑う。吊り気味の目が細められて、まるで。
「悪かったな。どうせ俺は人だしよ」
「人同士ならいいんだよ。相手はあたしらとおんなじ、あやかしじゃないかえ」
まるで、じゃなかった。そもそもかずらは、狐なんだから。
「坊に傷をつけるあやかしはねえ、あたしがほっとかないよ。魂も残さず散らせてあげようね」
その狐が、どうして俺なんぞにこうもひいきしたがるのか。
「化け同心、かずら。お役目によりその方ら、成敗いたす」