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Great Gore  作者: NaRogo
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序章

ある冬の日の深夜。目が覚めてしまった彼は、不思議な景色を見た。

老人に囲まれながら看取られる自分の姿を——


朝、跳ね起きるとそこはゴミ袋と大量の木箱であふれた自分の部屋だった。彼は一瞬それらに戸惑ったが、直ぐに思い出し、同時に焦って時計を見た。

「え、ちょ、もう12時じゃん!」

何故か怒りのこもった口調でそう言うと、彼は気づいた。

...寝過ごした!

バタバタと騒々しい足音で玄関へ向かうと、そこには怒りながら書かれたであろう張り紙があった。

「死ねクソ兄貴」

まじ!?

靴まで履いた彼だったが、そのままUターンして家中のドアを開けていった。

「ない...。もう...何もない...。」

そのはずである。引越しのトラックは11時には出ると前日に話があったのだから。

「ケータ...イ...あった...もしもし?」

「頑張って運べよバーカ!」

「あ、ちょっと!」

5秒で切られた。妹たちに見捨てられた彼は、引越し場所まで自力で運ぶことになったのだった。


「すみません、ニギア1台貸してもらえませんか...」

ニギアはこの世界の技術が詰まった2輪のトラックのことだ。

「...免許持っててよかったぁ...」

「どうかしたんか」

車貸しのミルビ、通称ギア爺はこの街で最安の車貸しであり、地元じゃ有名な物知り。昔は考古学者だったとか言う噂もあるが、本人はその当時の話をすることをとても嫌うため、真相はわからない。

「寝坊で引越しに置いてかれて...」

「自分の荷物も置いてかれたってわけか。まあ、あの二人のことならなぁ...」

「一番ボロいのでいいから...」

「一番ボロいって言われても、ここは全部一番ボロいからなぁ...」

なんて店だ。

「じゃあ、あの赤いの。」

「うぃ...あ、ここに名前と住所と電話番号。それと皇帝証番号書いといてな」

「顔パスじゃダメ?」

なんて図々しい。

「お前に限ってそれはできん。」

ギア爺は笑いながら赤いニギアの点検を始めた。


彼らが住む国、「メノル帝国」は124年前に起きた9年にも及ぶ南北戦争によって大国メノル王国が二分されてできた。しかし、二分された後も南北戦争は終戦を迎えず、二国間には大きな溝が作られた。そして、新王国側の住民には王立人民証が、帝国側の住民には皇帝証が発行されていた。


名前 : モルトウル・デックス

住所 : エルガ海の街、北ドム集落、15番道路、8号

皇帝証番号 : 000-000-360-801-160


ギア爺の点検が終わる頃、彼の記入も終わった。

「そうか、お前モルトウルなんて名前があったんじゃったの。」

彼は地元では本名を縮めた「マル」というあだ名で呼ばれているため、本名を覚えていない人も多い。彼の妹もその一人だったりする。

「とりあえずニギア借りてく!ありがと爺さーん」

「あ、おいコラ坊主!金を払え金を!」

「返すときに払うから!」

そう言い切らないうちにマルの声はフェードアウトしてしまった。

クソガキめ!

ギア爺はそんなことを思いながら、しかし少し笑顔で作業場へと戻っていった。

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