第五話 俺と友達になってください!!
やってしまったものはしょうがない。
俺は昔とは違う。
「岸本。」
「えっ。」
俺は岸本の腕を引っ張り屋上まで連れ出してきた。
ははっ。何だこれ。どこぞのラブコメ漫画か月9ですか笑
ほんとらしくねぇな。目立ちたくなかったのになぁ。
「ここなら立ち入り禁止だし、誰も入って来ねーよ。」
「だから普通にしてろよ。」
そう、この学校の屋上は立ち入り禁止で、普段は鍵がかかっている。ま、俺は鍵持ってるけど笑
「何で鍵持ってるの?」
当然の疑問だ。
「そりゃ、どこぞの善良な小学生がくすねたからじゃないでしょーか?笑」
岸本を笑わせようと冗談混じりに答えた。
「何それ笑」
岸本に昨日のような笑顔が戻った。
「たまにさ、昼休みとかにここに一人で来て雲眺めてんの。
なんか、むしょーに何も考えずぼーっと雲眺めたくなるときがあんだよねー。」
「分かる?」
「なんとなく…」
「それより、何で私のこと助けてくれたの?」
信じられないという表情をしている。
「助けるつもりなんてねーよ。」
「俺、岸本みたいなやつ正直嫌いだから。」
「ひとりで周りの目気にしながらちっちゃく生活してるのとか見ててムカツク。あそこまでやられてんなら、やり返せよ。」
「これ以上、失うもんなんてあんのかよ。ビビんなよ。」
やばい。ちょっと言いすぎたかもしれない。
「じゃ、何であんなこと。」
「私のことなんてほっとけばいいのに。」
おれは覚悟を決めて言うことにした。
「昔な、ここ引っ越して来る前、俺いじめられてたんだよ。」
「小1だぜ、小1。自分がいじめられてるなんて概念なかったんだよなー。今考えてみると、あれいじめだなーって思うけど笑」
「昔のおれは、お前みたいに、それにやり返すこともなくずっと耐えてた。ただビビってた。」
「岸本見てると、昔の俺見てるみたいでイライラすんのかもな。」
「でも、俺は戦ったよ。そーいう自分が嫌だったから。」
「ある時、ふと、何で俺がこんなやつに理不尽な目に遭わされなくちゃいけないんだ?俺がこいつに何したよ?と思って…」
「すっげームカついてきた。で、気づいたら目の前には血だらけのそいつが泣きながら謝ってた。」
「そんとき決めたんだよ。人生なんて理不尽だ。だったら極力めんどーな事は避けて避けていこうって。楽に安全に楽しく生きてこーぜって、で、そのためには強くなんなきゃって。」
「やらなきゃ、何も変わんねーよ?」
岸本は泣きそうな顔をしていた。全然、能面なんかじゃなかった。
「ってか、何でいじめられてんの?きっかけとかねーの?」
「…わ、私が杉本くんとよく喋ってたからだと思う…」
「杏里は杉本くんのこと好きだったみたいだから…」
杉本ねぇ…
「やっぱり、あいつくだんねーわ。女子こえー。」
「ま、いーや。どーせ俺も明日から皆にシカトされるんだろーし、ハブられもん同士仲良くしましょ。」
「え、いいの?でも…」
「ただし条件があります。これから素で俺に接すること。フツーにしてりゃ可愛いんだからさ。」
「え、」
「それと、野球クラブに入ること。そこでなら友達つくれんだろ。同い年の女子はいないけどな笑」
「それに、和真ならハブとか気にしないで仲良くしてくれるだろーしな。」
「じゃ、これからよろしくな。」
「え、でも…」
「あーもー。俺と友達になってください!!」
「恥ずかしいんだから言わせんなよ。」
「う、うん。ありがとう。」
岸本はなんだか照れくさそうで、とても嬉しそうな顔をしていた。
―俺たちはそのあと先生たちに見つかりこっぴどく怒られた。
でも、鍵のことはバレなかったぜ笑
説教を終えてから2人で色々と話ながら家に帰った。
「明日、家まで迎え行くから。じゃあなー」―