第四話 俺には関係ない
― 次の日の昼休み終わり
おれは校庭でみんなとサッカーをしていた。
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなり、次は掃除の時間。
俺たちは靴箱へ向かっていた。
「ふぅ疲れた疲れた。」
「おれのハットトリックすごかったろー」
「いやいや、おれのアシストのおかげじゃねーかよ」
雑談をしながら歩いていると、靴箱の前で歩と一樹、そして杏里の3人が集まって何かニヤニヤしていた。
杏里はクラスのいや、学年の女子のリーダー的な存在で、顔は可愛く男子にもそこそこ人気があるが、女子には凄く恐れられているような存在である。
「何やってんの?」
「あ、逢坂くん。優香の靴隠してるんだーww」
「あの能面、どんな反応するかなーw」
「みんなには内緒ねw」
杏里が楽しそうに答えた。この顔。こーゆういやらしい顔は虫酸が走る。嫌なことを思い出す…
「ぜってーばらすんじゃねーぞ!」
歩が杏里の顔を伺いながら俺に牽制してきた。
なるほど歩は杏里が好きだったのか。
くだらねー。でも、面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。
コイツらに逆らったらまともな学校生活は送れないだろう。
おれは、コイツらのせいで不登校になったやつを何人も知っている。
「分かってるよ。んなことより早く掃除場所行かねーとまた怒られるぜ」
「おぅ、行こうぜ杏里。」
くだらねー。ま、俺には関係ない。ってか能面ねぇ…
おれは教室の掃除当番だ。おれは教室へと向かった。
ちなみに岸本も教室掃除だったな。
教室に行ってみると、岸本は一人だけ他のやつらとは離れて黙々と掃除をしていた。
おれは、つくづく周りに関心がなかったんだな。
あらためて岸本をよく見てみると、あいつに話しかけようとするやつも、近づこうとするやつも、一人もいない。
完全に無視されているみたいだった。
そりゃそうだ。誰だっていじめられるのは嫌だ。変にあいつと仲良くなんかしたら、こっちまで巻き込まれちまう。
ま、俺には関係ない。関係ない。―
岸本は一人でホウキとチリトリ2つを持ってゴミを集めている。なんだか凄くやりづらそうで、きごちない。普通は2人でやることだ。だが、もちろん誰も手伝おうとはしない。
ま、俺には関係ないがな。そう俺には関係ない。―
案の定、一人では集めづらそうで、ゴミを何度も落としている。
ま、俺には関係ない。関係ない。― はぁ。くそ。
「岸本、チリトリ貸せよ。一人じゃやりづれーんだろ。」
俺らしくねぇ。でも勝手に体が動いちまったんだからしょーがねーじゃん。
岸本は凄く驚いた表情をしていた。が、俺の顔を全く見ることもなく無視して、そのまま掃除を続けようとした。
昨日グラウンドで会ったときとは大違いだ。
そっか、あの時はクラスのやつはおれと和真しかいなかったからか。
何かムカツク。周りにビクビクしながら生きてんのとか、手伝ってやるって言ってんのにシカトするとことか、すっげームカツク。
「貸せって言ってんだろ。」
おれは無理やりチリトリを取って、ゴミを集めさせた。
「何そんなビクビクしてんだよ。昨日のお前でいーじゃん。」
その時の優香の顔は何とも言えない泣きそうな表情をしていたのを今でも鮮明に思い出せる。
「あと、帰り、岸本の靴箱の中くつ入ってないけど、上のところに隠してあるから、焦んないでさっさととって帰んしゃい。」
「あいつら、お前の焦ってるとこ見たいだけみたいだから。」
あー言っちゃったよ。ま、いっか。誰にも聞かれてな…
「あー!!」
一樹がこっちを指差して驚いた顔をしている。
あ、忘れてた。こいつも教室掃除だったんだ…
「快人がチクりやがった!!歩たちに言ってやるからな!!!」
「ちょ、まっ…」
一樹は走って教室を出ていった。
最悪だ。ほんと最悪。らしくねぇことしちまったうえに、こんなことになるとは…
明日からおれもハブか笑
岸本は何だか全く状況が理解できていない様子でただ突っ立っていた。