第三話 新たなる出会い2
キーン!!
白い軟式の野球ボールが、雲ひとつない青空にむかって飛んでいく。
「やっぱ和馬は上手いなぁー」
「おれなんかバットに当てるだけで精一杯だわ。」
おれは正直スポーツは苦手だ。クラブに入って3年目、フライをやっと危なげなく捕れるようになったぐらいである。その点、和馬は運動神経だけは抜群で上級生にもひけをとらない。まぁ、運動神経だけは…だが…笑
「快人は単に練習不足なんだよ。もっと素振り一生懸命やれよ。」
「ほら、俺の手なんか豆だらけだぜ。」
「めんどくせー」
(練習したってどうせまだレギュラーになれねぇじゃねーかよ)
「おいコラ!!しゃべってないでボール拾ってこい!!!」
「うぃーす」
スポーツは得意ではない。でも野球は好きだ。昔は新と本気で甲子園行こうと思ってたぐらいだ。しかし、現実は残酷だ。クラブに入って数週間で自分に才能がないのに気づかされた。だから、おれは無難に手を抜きながら楽しく楽にやっていく。野球は楽しくやるのが一番だ。人生は省エネだ。
―ふと、ボール拾いをしながらフェンスの外を見てみると、岸本が立っていた。
俺は何となく岸本に近づいていった。
「なぁ、野球やりたいんなら中入んなよ。下級生のうちは玉拾いばっかだけど、人数そんなに多くないからちゃんと打たせてもくれるぜ。」
岸本は俺がいることに驚いていたみたいだった。
「お姉ちゃん見てただけだから。」
この前、学校で会ったときとは違い普通に返してきた。
「姉ちゃん?」
「6年生の岸本麗。」
「え!?岸本って麗さんの妹なの?」
麗さんは誰が見ても絶世の美少女で、女子でありながらチームのエースを任せられているみんなの憧れである。確かに何となく雰囲気が似ている感じもする。
「うん。」
「へーそうだったのかー。岸本は野球やんないの?楽しいぜ。」
「わたし、あんまり野球上手じゃないから。」
「そんなん気にしなくていいだろ。」
「そーそー。快人だって下手だからなー笑」
和真が話を聞いていたみたいでわって入ってきた。
「うるせーよ笑」
「ま、とにかく今度体験来てみろよ。うちの学校、同い年でうちのクラブに入ってるの和真だけなんだよ。」
「おい。なんだそのガッカリした顔は笑」
「花がほしいじゃん。花が。笑」
「俺のどこが花がないんだよ!!」
「ふふふ。」
「分かった。考えてみるね。」
「なんだ。岸本って意外とふつうなやつだな。もっと根暗なやつかと思ってたわ笑」
普通に話しやすい岸本を見て思わず口に出た。
「お前失礼なやつだなー」
「ふふふ。」
―「おい!サボってんじゃねぇ!!」
「じゃ、練習戻るわ。また明日学校でな。」
「うん。またね。」
俺たちは練習に戻り、岸本は帰っていった。
次の日、事件が起こるとはこの時知るよしもなかった。―