~プロローグ~
男は急に駅前の倉庫の前で立ち止まった。
「あー…えっと…ちょっとごめん!深呼吸します!」
真冬の夜、白い息を吐きながら、いつにもなく真剣な面持ちでしゃべる。
「すうぅーはぁ…すぅーはぁ…」
男の胸が大きく上下する。
「どうしたの?そんなに緊張して」
女が少し笑いながら、怪訝そうに尋ねる。
「ははは…ごめんごめん。」
「ここ覚えてる?」
「おれが初めて…に告白して振られた場所。おれが…を本当に好きになった場所。そして、…と付き合うことになった場所。」
「もちろん、覚えてますとも。」
彼女は何かを思い出したような、少しドヤ顔混じりの顔で答える。
男は緊張を振り払うように笑みを浮かべ、話を続けた。
「おれは今まで散々ひとを傷つけてきた。おれのことを恨んでいるヤツもたくさんいると思う。」
「でも、…に出会っておれは変わることができました。本当の優しさに気づくことができました。
今のおれがあるのは大袈裟でもなんでもなく…のおかげです。」
「だからおれに一生をかけて恩返しさせてください。」
「世界で一番…を愛してるのはおれです。世界で一番…を幸せにしたいと思ってるのはおれです。世界で一番…を幸せにできるのはおれです。」
「おれと結婚してください!!!」
真冬の夜空に彼の低い声が響きわたる。
「快人…」
彼女は涙を流しながら彼の名を口ずさんだ。
この物語は、彼、逢坂快人が様々なひとたちとの出会いと別れ、そして苦難を経て彼女(まだ名前は非公開)と出会い、結ばれるまでの物語である。