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ミミズ

作者: 松田

確かに私はそうなるように願ったのである。

どこにいてもあまりに暑いことがやりきれずに、何度も何度も手の届かない高いところから私を苦しめ続ける者を憎み、消えてくれと切に願っては、光の届かない、暗く湿った場所を求めた。

そしていざやつが消えたとなった時、私はおおいに喜んだ。

途端に空気は冷え込み、世界から灯りがぱったりと消え、何も見えなくなってしまったが、食料の位置は覚えていたし寒さも土の中なら問題がないと、何も問題は無いと思っていた。

しかしどうだろう、あれから何日もたったような気はしないが、光を失ったことで時間の感覚が全くわからなくなってしまった。その上どんどんと冷え込むばかりで暖かい土の中にすら霜がどんどん降りてきて、私はすっかりと冷たくなってしまった土の中で身動きが取れないでいる。

はっきりいって最悪の状態だ。暑さは私から体力を奪うが、寒さはさらに身動きさえも縛りつける。

すっかり霜と一体となってしまった私は足掻いても足掻いても土を砕いての移動はままならない。

一体どれほどの者が私と同じような境遇にいるだろうか。いつもなら少し動いただけでもぶつかってしまうほど騒がしい彼らの存在も一向に感じられない。

足掻いているものはないのだろうか。皆私のように圧倒的不条理の元に屈してしまったのだろうか。

暑かったあの頃は身の丈がはるかに大きい天敵にビクビクと怯えながら暮らしていたが、今ではその天敵にすら会いたいと思う。おそらくすぐに食われるだけであろうがそれでもいい。私は何か、生きているものにどうしてもお目にかかりたい。

そんな期待すらも、何もかもを冷たくなった大地は奪い去ってしまった。

私はもう長くないだろう。けれど、せめてもう一度だけ太陽を拝みたかった。

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