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ブラックミスト  作者: さい はじめ
第0章 プロローグ
1/3

プロローグ

更新は不定期です。(3か月に一章くらいは更新して行きたい。)

 とある町のとあるベンチ、ぼくは誰もいない公園で横になって、空を仰ぐ。

『くそったれ』

『畜生』


 何度、呪詛を唱えたかわからない。

気分も変わらなければ現実も変わらない。


 空から意識は離れていく。


 いつからだろうか。

やる気がめっきり出なくなって

人の目を見れなくなって

笑顔の仮面を貼り付けるようになって

寝てばっかりになって


 いつからだ?


 目を閉じる。


ーー


 ぼくは霧島(キリシマ) (ユキ)

元大学生、今ニート。


 数時間前、ぼくは実家にいた。

玄関先で両親に現状を説明ていた。

親父の「それでどうするんだ?」という問いに対して、「復学したい」と言ったのが失言だった。

「お前への投資は無駄だったろう? よくもまあうん百万もドブに捨てられるような真似をしてのうのうとふざけたことを言えたものだ。 お前は長男だろう?自分の可能性だけに飽き足らず、我が家の資金をかっさらって妹の可能性までも排除したいのか?短慮極まりないよな?そんな奴には何の援助もしない。もういい 金輪際顔も見せてくれるな。お前はダメだ。どっかいけ。」住宅街に、父親の怒声が響いた。

親父は背を向け玄関へと消える。父の隣にいた母親はというと終始無言だった。母親に向かって

「失礼しました。」と挨拶し背を向ける。

「ユキ、忘れもんだよ。」

「え?」と母親の言葉に反応した瞬間。腰を蹴り飛ばされ、庭へ倒れこんだ。

玄関から庭まで距離にすると5mほどはある。

雪解けの水たまりに身を落としてしまい、全身を濡らす。冷たさが体に沁みる。

驚きを通り越した混乱で、笑いをこらえるのに必死だった。


 ーーああ、情けないなー!


 玄関の戸はキッチリと締められてしまった。頬が引きつり眉が強張る。

向かいのおばちゃんが心配そうに眺めているのに気づいて、ほとんど逃げるようにその場を去った。


 そこから現在に至る。

公園のベンチで己の体と荷物を乾かしながら、空を仰いでいる。


 心地よい風が吹く晴れの日。

雪融けの春の匂いが微かに漂う。

服も荷物も乾いた。寒いけど。鼻詰まってるけど。

駅に移動してバスに乗りS市へ帰ろう。


  山には濃い雲がかかっている。

途中で雨が降るかもしれない。


 チケットを買う。

「ガクセ・・。大人1枚S市行き・・・。」

「失礼ですが、どちら行きとおっしゃいましたか?」

「S市行き大人1枚片道よろしくお願いします!」

受付の女性が2度も身を引いた気がする。ヤケになって営業スマイル繰り出したのがまずかったかもな。よく考えたら、俺学生じゃなくてニートだもんなー。シワシワの泥で汚れたセーター着ているし、待合室じゃ格好でさえ浮いてるよなー。ああ、穴があったら入りたいなー。


 バスが発車する。

他人の見送りが目に入る。ちょっとジェラシー。自然と見送られている他人に意識が向く。

飲み物を飲む音、座席に足が当たる音、ため息など雑音が聞こえて落ち着かないのかそわそわしている。

行きはほとんどバスに乗っている感覚はなかったのに、帰りは中途半端に周りが見えてきているせいか居心地が悪くなっているといったところだろうか。


 出発して1時間ほど、

ぼくは気分が悪くなりときおり「うぁー・・」と

声を発していた。

バスは黒い雲のかかる山へと登る。

峠へと向かう途中、黒い霧がバスを包む。

霧は窓で覆われているはずのバスの中まで入ってきた。乗客は戸惑い騒ぐ。

目を閉じていたユキは何が起きたか知ることはないが、うるさくなったので余計に調子が悪くなる。

「うぅぇー・・」

呻きを上げた瞬間、霧はユキを捉え、バスからその姿を消した。

めのまえがまっくらになった

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