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豚肉 (三枚肉)

 昨日、某所にて感動的な料理に出会いました。

 ――そう言っても、ただ豚ばら肉(三枚肉)を5ミリくらいの厚さにスライスしたものをキャベツの上に乗せ、蒸しあげた後に冷やしたものです。

 中華料理でよく出てきそうな月並みな手法です。


 しかし、眼目は其処ではありません。

 其処にかけてあったソースが料理のポイントでした。

 甘いプルコギのタレに香草で少しアクセントを加え、だらしなく広がる味をキリッと引き締めていました。

 そのソースは三枚肉のこってりした脂身と、あっさりした肉の部分とで絶妙のハーモニーを醸し出し至高の味を演出していました。

 豚ばら肉、キャベツ、会員制スーパーのタレ、そしてポイントとなるタレの味わいを引き締める香草。

 希少で高価な食材は使わず、いずれもどこでもある素材ですが、作り上げられている味は非凡。

 その味に久々に心が揺り動かされました。

 これが熟練の料理人の料理だと。


 アクセントである香草が無くても甘いタレだけでも十分美味しいでしょうし、実際の所その様なタレにナッツを刻みこんで使うお店も結構あります。

 けれど、それは美味しいけど月並みです。

 名が売れ、その名前でお客が来る様な人気店ならそれでも問題ないかも知れません。

 けれど、無名のお店の場合、その料理……それ以前に店の存在すら思い返す事は難しいでしょうね。

 店を出て数日たったらきれいさっぱり記憶からイメージが薄らいで行くと思います。

 でも、心が動かされる部分が有るなら味と共に店のイメージも長期記憶に置き換わっていく筈です。

 ――タレで言うなれば、全体のアクセントとなる香草の様が有れば。

 其処が料理人の個性、オリジナリティ、言い換えるとソウルなんでしょう。


 ブランド牛のような高級な食材を使えば、ある程度の料理経験のある人ならソコソコ美味しい物は出来ます。

 でも、平凡な材料を使い、其処に一点自分のソウルを入れ込むことで心が揺さぶられる芸術品(料理)に昇華出来るのは、プロその中でも達人にしかできません。

 

 きっと文筆業も同じだと思います。

 ありきたりなテーマで話の流れが綺麗に整っていれば、プロで既に名前が売れている場合はそれで問題ないと思います。

 作家の名前で読みに来る部分が大きいですから。


 でも、此れからプロを目指す場合は其処に一点、自分のソウルを入れ込まないと読みおわった瞬間に作品のイメージがふっと消えうせるでしょうね。

 ある作家さんは『ゴシップ紙の様に読み捨て、消費される』と比喩して絶望し、別の人に言わせれば『エッジが立っていない、軽すべりする』とも揶揄されていますが。

 ――魂が籠ってない物は簡単に忘れ去られるものですから。

 

 小説作品のキャラクターは文字だけの存在です。

 それを魂の籠らない人形にままか、そこに魂を入れ込み人間として書き上げれるかの境目、

 それは其処に一点、自分のソウル――つまりアクセントとなる部分を入れ込めるか?

 其処だと思います。

 

 人形は決められた動きで、決められたセリフを破綻無く吐き、そして失敗無く行動してくれるはずです。

 でも、人はそうじゃない。

 ――時には予想外の動きをし、予期もしない事をして、たまには失敗もするでしょうし、

 そして、更に立ち上がれずすっころんだままの事もあるでしょう。

 傍から見れば、不要の部分でしょうが。

 けれど、その不完全な部分が有るが故に人としては完全。

 そのアクセントの部分こそが キャラ、そして自分のソウルだと思います。



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