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こむぎ

 最近あるパンを焼き始めました。

 それはパン焼きの基本とも言えるフランスパン、幾度の失敗をして長らく焼くのを避けて居たパンですが、何となく作りたくなる気分だったので半年ぶりの再開です。


 フランスパンはシンプルなパンです。

 小麦と塩とイーストを混ぜ合わせ、こねて発酵、ベンチタイム……2次発酵が終われば焼き上げます。

 誰でもできる簡単な材料と手順です。

 

 でも、シンプルな物だから逆に一切のごまかしは利きません。

 作り手が上手なら、表面は香ばしくぱりぱり、中はふんわりふかふかのパンになります。

 

 自分が半年前に作った時は、表面は硬く岩の様――そして中もぼそぼそ……。

 まるで干からびたおにぎりの様でした。

 パンと言うにもおぞましい代物です。


 今回は前の轍を踏めません。

 其処でパンが固かった理由を考えました。

 ――こね方? 発酵のさせ方? 水加減?


 パンを焼く試行錯誤する事、数回。

 ついに結論に達しました。

 

 コネと水加減です。


 なまじ力が有る故に生地を固めにして、コネる回数が足りなくなっていた事です。

 ――そりゃ、グルテンも出ないし硬いパンになりますよねぇ。

 力が有るから良いパンが出来ると錯覚して居ました。

 自分の奢りです……。

 若さゆえの過ちと言うべきでしょうか――まったくもって不覚……。


 うどん打ち名人に非力なお婆さんが多いのと同じ理由でしょう。

 きっちり時間をかけて丁寧に仕上げないと良い物は出来上がりません。

 力でごりごりやっても最後にはアラが出る物です。


 小説を書くのも、きっと同じなんでしょうね。

 ちゃんとした構想を練らずに書き始め、それを筆力で誤魔化す。

 それでは良い作品が望むべきもありません。

 作者のわがままで凝り固まった作品になるでしょう。

 失敗作のフランスパンのように。


 良い作品を作る上で必要なのは奢りを捨てた謙虚な心かもしれません。

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