ほんだわら
ホンダワラ(玉藻)
冬から春にかけて成長する海藻で、名前だけは聞いたことが有るかもしれません。
実は、有名な歌の題材ににもなっている海藻です。
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや 藻塩の 身もこがれつつ
By藤原定家。
ここで話題に上って居る藻塩とは、ホンダワラを使う製塩の事です。
容器に海水を入れ、海藻をひたし、水を切って乾燥させる作業を繰り返します。
作業の繰り返しで海水が濃縮されていきます。
最後には、藻塩焼くの通り、海藻を引き上げて乾燥させて燃やす。
そして燃やした灰を集めて少量の水で溶かし、その水を煮詰めて塩にします。
そうして作られたのが藻塩。
言うまでもなく、天日塩やイオン交換膜で作られた塩に比べて不純物が多く色も白く有りません。
しかし、藻塩は柔らかい風味です。――テンプラなどに添えたり、ステーキにかけたり。
不純物の分だけ普通の塩より美味しいです。
言うまでもなく値段は数倍はします。
工業製品の塩としてなら不純物は少ない方が良いでしょうが、調味料として考えたときは純粋な塩では美味しくありません。
小説は工業製品では有りません。
一見無駄とも思える所にある何気ない一文や仕草。
その不純物こそが隠し味になっているのだと思います。
挫折をし、迷い、苦しみその中でも更に立ち上がるからこそ人間味が現れ。
そして、等身大の読者の移し身として心引かれるのでしょう。
――誰も、挫折や迷いを経験するものですから。




