講演
一本の電話がなった。
「もしもし、川口です」
「あっ。陸人か?」
「はい。」
「中学三年の時の担任の山口です」
「あっ!!山口先生ですか!!」
「うん。久しぶりだな」
「はい!!久しぶりです!!元気にしてました?」
「してたよ」
「陸人さぁ、全校生徒の目の前で話してくれないかなぁ?後輩の目の前で」
「なにをですか?」
「その・・・・病気の思いとか訴えたい思いなんか」
「えっ。できないですよ」
「できるよ!!お願い。後輩にいや、先生も聞きたい。お前の気持ち」
「え~。わかりました。で、いつですか?」
「来週の月曜日はどう?いったん、話しましょう!!」
「わかりました。それまでに原稿を完成させておきますね」
「わかった。じゃあ、また月曜日」
「は~い」
電話の相手は、中学の担任でした。俺は、大きな仕事を受け入れてしまった。俺は色々考えました。なにを後輩たちに話すか。
数時間後、書くことが決まったので筋肉が衰えている手でキーボードを一生懸命叩いて打ちました。
そして、月曜日。俺は車椅子を自動に切り替え、学校に向かいました。すぐに、校門の目の前で山口先生がたっていた。
「先生!!」
「陸人」
「会いたかったです」
「先生もだよ」
「じゃあ、さっそく問題に入りますかね」
「そうだね。その前に中で話そう」
「はい!!」
俺と先生は相談室で話し合いました。
「先生、原稿書いてきました。」
「おう。ドレドレ」
(読んでいる・・・・・・)
「どうです?」
「よくかけてるじゃん」
「ありがとうございます」
「早速なんだけど、明後日頼んでいい?」
「はや!!」
「だめか?」
「いいですよ?」
「そうか。じゃあ、明後日午後が講演になってるから。お昼ごろに学校来てくれるか?」
「わかりました」
「ありがとうな」
「でも、どうして。俺が?」
「身近な人の方が、あいつらもわかるし」
「そうなんですか?」
「うん。今、いじめが多くてな。命の大切さがわかないやつがいるんだ」
「そうなんですか・・・。わかりました。任してください」
「ありがとう。じゃあ、また明後日な」
「わかりました。」
「また校門の前で待ってるから」
「わかりました。明後日よろしくお願いします。」
「こちらこそ!!」
俺は、そういって学校離れました。家に帰って、明後日の原稿をもう一度見直しました。何か訴えかけるように話しかけていかなくては!!
『兄貴!!俺の学校で講話するの!!』
「おう!!」
『寝ようっと』
「なんで!!」
『つまんないでしょ?』
「面白いよ!!」
『え~ほんとかよ!!』
「おう」
そんなこんなで、講演会当日になりました。
「おっ。。陸人待ってたぞ!!」
「うん。緊張する・・・・」
「大丈夫!!じゃあ、今日は司会者の進行に合して出ていくから。」
「わかりました」
俺は、先生と一緒にまだ生徒誰も来てない会場に先に入りました。
「陸人、ここでまってて?これ水分ね。先生が舞台の真ん中まで教えてあげるから」
「わかりました。お願いします」
そして、発表時刻になりました。
「皆さん、静かにしてください!!」
会場はし~んとなりました。
「それでは、今回講演を始めます。講師の方の入場です。拍手をお送りください」
(パチパチ)
俺は拍手の中、全校生徒の目の前に立った。
「講師の名前を紹介します。この方は、私たちの先輩でもあります川口陸人さんです。難病を患いながらも、このたび私たちのために来てくださいました。どうか、心の叫び、そして、生きることの意味を考えてみてください。それでは、お願いします。」
俺は深呼吸をして喋りました。
「皆さん、こんにちは。司会の人からご紹介されました。川口陸人です。私は、ここの卒業生です。皆さんは、生きるって、死ぬことって考えたことはありますか?それと、家族の愛、友情について、考えたことはありますか?
私は、この病気になるまでそれを考えたことすらもなかったし、明日があることが当たり前で、次の日がくれば、家には家族がいて、外にいれば、近所の人が挨拶してくれて、学校に行けば、友達にあってバカなことを話したり、そんな幸せなことなのにみんな、当たり前だと思っている。
私の病気はALSという難病です。最初は、つまずいたり、ペットボトルの蓋が開けにくくなったりしました。そんな普通のことがまさか病気に繋がるとは思っても見ませんでした。私は、病院に行き難病と知ったとき、どうして俺なんだよ!!って思いました。私は、何のために生れてきたのか考えるようになりました。生きることってなに?俺はこの19年間何のために生れてきたのか。でも、今日やっと答えが分かった気がします。生きることは、私が思うに学ぶということだと思います。なぜ、思ったかというと生きているうちは色々な人から学べます。その学んだこと活かして将来の夢に繋がったり、自分自身こんな人になりたいと思えば、その人に近い人になれる。生きているからこそ、学べる楽しさがあるんだと思います。勉強以外でもたくさん学んでいるはずです。
そして、19年間の私の生涯は今思えば、楽しかったです。私には弟がいるんですが、言うことを聞かなくて、私を困らせてばかりで、でも、そんな弟は私は大好きです。いつも、毎朝起こしてくれたり、私が病気になってからは入浴の介助だったり色々気を使ってくれる優しい弟です。そんな弟にこういいたいです。
ありがとう。いつも、面倒見てくれて。頼れない兄貴でごめんね?これからもよろしく
母さんには、こういいたいです。
いつもおいしい、ご飯を作ってくれてありがとう。辛いとき、支えてくれてありがとう。本当に今までありがとう。これからも、よろしく
友人へ
俺の分まで生きてください。楽しかったです。ありがとう
俺は、たくさんの人に出会えてよかったです。もちろん、今日あった後輩の皆さんに会えてうれしいです。ありがとう。
そして、死は人生のゴールだと思っています。簡単にいうと、悔いなく私は生きていこうと思います。この先、呼吸ができなくなったり、何かを伝えることができないかもしれない。でも、いつも感謝を忘れずに生きて、最後は19年間生きててよかった思えるように死んでいきたいと思います。
でも、本当はもっと俺は生きたい!!生きたい生きたい・・・
この叫び、皆さん届いていることを信じています。
最後に、みなさん当たり前の一日を大切にしてください。私の分まで生きてください。かけがえのないものを失わないでください。死ぬことだけは考えないでください。死にたいと思ったら、私のことを思い出してください。
本当にみなさん、山口先生をはじめ、ありがとうございました!!またどこかで会いましょう!!さよなら!!」
無事講演は終了!!回りは、泣いてる人もいました。全校生徒が、真剣に聞いてくれていました。なんか、こっちまで嬉しくて泣きそうになりました。
次の日、感想が届きました。
感想にはどんなことが書かれていたのでしょうか?