第二の症状
ある日の朝、何も変わらない朝を迎えた俺は、車いすを使って外に出かけてみた。外に出ると、何も変わっていない風景なのに自分の足で歩いてる時の視線と、今の視線は違う。なんだか、違う風景に見えました。
「先輩?」
誰か、俺の名前を呼んでる・・・・
「先輩!!」
「うわ!!」
「なんですか、私を化けもの扱いして」
「なんだ、お前かよ」
名前を呼んだ正体は、姫乃でした。
「どうしたん?姫乃」
「先輩こそ、どうしたんですか?」
「お散歩だよ」
「ふ~ん」
「なにその反応」
「いや?私も散歩です。いやジョギングしてました」
「そうなんだ。じゃあ、俺の車椅子押してよ」
「え?」
「いいじゃん。暇でしょ」
「しょうがないなぁ~」
俺は、車いすを姫乃に押してもらいながら、景色を見ていました。
「先輩って、健伸のこと好きですか?」
「そりゃ、好きでしょ。弟として」
「そうなんだ。私も好きだったのに」
「うん?」
「ほら、前にいったじゃないですか?好きな人がいるって」
「うん」
「健伸のことなんですよね」
「マジか!!」
「私、好きだったのに・・・・」
「なんで、嫌いになったの?」
「それは言えません。」
「そうか。」
「はい」
そんな話をしていると、踏切が見えてきました。ですが、踏切の中に五歳くらいの男の子が入っています。遮断機は降りています。
「あっ。危ない!!」
姫乃は、とっさにその男の子を救出するために自分の命を捨てて、全力で走って、線路の中に入りました。そして、助けて踏切を出ようとした瞬間、電車が来ました。
「姫乃~!!」
俺は、姫乃の名前を叫びました。電車は急停止したが間に合わず、踏切を出たところで止まった。俺は、本当に死んでしまったのか。俺は、急いで踏切を車いすで渡りました。
「先輩!!イエイ!!」
「おっ。お前助かったんだなぁ」
「もう心配しすぎですよ~」
「もう、馬鹿なことするなよ?」
「は~い」
姫乃は無事でした。本当に良かったです。助かった男の子のお母さんも泣きながらお礼を姫乃に言っていました。
「もう、姫乃ってアホでしょ?」
「なんですか?アホって」
「馬鹿の下?」
「そうなんですか?」
「俺もよく知らないが」
「そうですか」
そんなこんな、会話をしながら一周してきました。
『兄貴!!』
「おっ。おう」
健伸が心配で迎え来てくれた。俺はなんだか少し安心しました。
『姫乃と一緒だったの』
「うん」
「じゃあ、先輩またね?」
「おう」
『兄貴、姫乃に手を出してないよね?』
「さぁ~?」
『ムカつく~』
「なに、そんなむきになってるの?好きなのかなぁ~?」
『はぁ?あんなの好きじゃないし』
「ふ~ん。そうなんだ。顔赤いぞ?」
『うるさい!!』
きっと、健伸は姫乃のことが好きでたまらないんだと思った。
「はぁ~つかれた~」
俺達は家についた。
「健伸、ジュース」
『はいはい』
「はぁ~」
『はい、どうぞ』
「ありがとう」
俺はコップを持って、飲み物を飲もうと瞬間、コップを倒してしまった。そう、第二の症状が出てしまったのです。
『なにやってるの?兄貴』
「ごめんごめん」
『もしかして、手の筋肉なくなった?』
「そうみたい・・・」
『もう、早くいってよね?俺が助けるんだから』
「ありがとう。たぶん、力がなくなっていくから、排せつやお風呂も手伝ってくれるとありがたいなぁ~」
『わかったよ』
俺は、悔しかった。もう、だんだん自分の体じゃないみたいで怖くて、もしかしたら、今度は死んでしまうのかもしれないっと感じるようになりました。手の力がなくなる前に、家族に手紙を書こう。そう思いました。最初で最後の自分でペンを握り書くのは。もしかしたら、二度ともうかけないかもしれない。俺は力がないなりに一生懸命書きました。
『兄貴、何書いてるの?』
「秘密」
『ふ~ん』
手紙も書き終わり、一休みしようと思ったその時、一本の電話がかかってきた。
いったい、電話の相手は?