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砂倉居学園  作者: 猫々
3/4

3、9月2日/過去を振り返る

 みちるは、かなり女好きである…。(かおる談)




「す、好きです、みちる先輩!!」

 顔を真っ赤にしながら思いをぶつける少女。中学2年のバッジをつけている。

「…へ?」

 これを聞いたみちるは驚いた。

 なぜならここは通学中の(正確に言うと下校中の)電車の中だったからだ。

「あれ、君…バスケ部のマネージャーの…」

 みちるの双子の姉、かおるはバスケ部だ。それで、顔を知っていた。

佐々木(ささき)曖菜(あいな)です。と、突然ですみませんーーーー」

 言いながら少女…曖菜はますます顔が赤くなる。みちるの記憶だとこんな大胆なことをするような()ではなかった気がしたが…。

「嬉しいんだけど…ごめん、僕…」

 みちるはそこで言葉を区切った。

 曖菜は瞬いて、くしゅっと顔を崩す。

 曖菜はひとつ、大きく息を吐き出す。

「す、好きな方がいてもいいんです」

 ――それは、想定した答えだったらしかった。

「え?」

 そんな曖菜の答えが、みちるにとっては予定外の言葉だった。

「――明日、引っ越すんです。それで」

 あなたへの想いを伝えたかったんです…。

 そう続けると唇を噛んで、顔を緊張させた。

「我が儘だって、分かってます。でも…。今日これから少しだけつき合っていただけませんか?」

 そう言って、曖菜は下を向いた。

 みちるは数度瞬いて、それからにっこりと笑った。

「いいよ」


 …

 駅ビルを散策して、お茶をして。

 とても簡単な――けれど曖菜にとっては夢のような――デートをした。


「もうそろそろ帰ろうか?」

 みちるの言葉に曖菜はひとつ、息を吐き出した。

「はい…。本当にありがとうございました」

 夢の終わり。――夢のような時間の、終わり。

 美しい夕日が山の合間をすり抜けてゆく…。

「曖菜ちゃん」

 呼ばれて、曖菜はみちるへと振り返った。

 みちるの顔が、夕日と同じ色をしていた。

 そんな瞬間…。




 かおるは部活が終わると欲しい本を買いに町中にでた。

 山間に夕日が沈んでいく。

(今日も1日終わった)

 かおるはそう思った。

 美しい夕日と、赤く染まる空をぼんやりと見上げていたかおるだったが『本も買ったし今日は帰ろう』と振り返って――その、瞬間。

 ロマンチックな気分が吹っ飛んだ。

 キスをしているカップル…。

 ――かおるの視力は左右ともに1,5。

(みちると曖菜ちゃん?!)




 …その後みちるはかおるに張り手をくらった。

『可愛い後輩になにをするーっ!!』…と。

 しかし、曖菜は『特別』な思い出が出来て、満足だったらしい。


「まさか…みちる? 忘れた、なんて言わないよな…?」

 食事も終わり、2人は寮に行った。201号室だ。

 かおるはみちるの首を今にも絞めそうな勢いでみちるを睨み付けている。

「あ、あれはぁ、女の子の方から『キスしてください(思い出をください)』ってきたんだよー」

(…って、解釈しただけだけど)

 みちるは心の中で付け加えた。

 曖菜は『一日付き合ってくれ』とは言ったが一言も、キスしてください(そんなこと)は言ってない。


「女の子に対して無理矢理になんてやらないし…ボク、好きな子に嫌われたくないし…」

「――本当だな?」

 じーっとみちるの目を見るかおる。

「うん。小河先生には…ちゃんとお断りして、かおるにちょっかい出すな、みたいなこと言っとくからさ」


 みちるは一呼吸いれてからもう一言付け足す。

「…と…。光兄さん以外の人に」

 ビクリッ。一気にかおるの瞳の力が、緩む。

「――かおるを触れさせない」

 今度はみちるがかおるを見つめる番だ。

 ベッドに座るかおる。こめかみを軽く押さえている。

「大丈夫。悪さなんてしないよ」

 …多分。心の中だけでみちるは続けた。

 臨機応変、って言葉があるじゃない? と。

「ん…。分かった…。じゃぁ頼むわ…」 

 かおるの言葉に『まーかせて♡』と言ってブイサインをする。


 みちるに彼女をとられた――みちるのせいで彼女にふられた――男、両手以上。

 そして一日の恋のお相手もまた、両手以上…。

 かおるは詳しくはわかっていないが…かおるが知っている以上に、みちるはかなりの女好き――遊び人である。

 小河美千代氏危ない!! …かもしれない。

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