番外編:ERI'S SIDE
迂闊だった。本屋での立ち読みで時間を忘れるなんて。
現在の時刻は8時を過ぎていた。
早く帰らなぎゃ。お腹も空いたし、テレビも見たいし。
私は帰路を急いで歩いていた。
「――!!ご、ごめんなさい!」
柄の悪い3人組みの男の1人にぶつかってしまった。急いでいたから確認できなかった。完全に私の不注意だ。
「痛ぇな姉ちゃん」
「本当にごめんなさい」
「折れちまったかもなぁ」
「そんな!たかがぶつかっただけで‥」
「たかがだと!!アニキに謝れ!!」
「まぁいい。ぶつかった事は許してやる。」 アニキと呼ばれる男はそう言うと他の2人に不気味な笑みをみせた。
不気味だけど許してくれるならもう行こう。
「そうですか。ありがとうございます」
私は男達を背に歩き出そうした瞬間、私の腕を掴んできた。
「帰っていいとは言ってないぜ。姉ちゃん」
男達は何かを企んでいそうな感じがした。
「許してやるから少し付き合えよ」
ヤバい!!こいつら危険な気がする。
私は男の腕を振り払おうとした時、もう1人の男が私に言ってきた。
「ねえ遊ぼうよ。少しでいいからさぁー」
「すいません。急いでいるので!」
「いいだろ!付き合えよ!」
「痛い!離してッ!!」 私は腕を振り払おうと腕を振った。でも男の力には勝てなかった。
「おい!なにやってんだ!?」
突然、声がした。
見ると私と同い年くらいの男の子が立っていた。
私は何もすることが出来ず、ただ事の一部始終を見ているしかなかった。
ただ、途中で彼が名乗った《倉原リクト》という単語に男達と一緒に驚いた。
倉原リクトってあんなお金持ちのお坊っちゃんがごくごく普通の一般庶民である私を助けてる!!
男達は最初の威勢はどこにいったの?っていうくらいに弱腰になって帰って行った。
男達がいなくなると彼がこっちに歩いてきた。
「大丈夫?」 話しかけられて、なんていっていいかわからない。
「あ、えっと‥その‥大丈夫です」
「そう。ならよかった♪」
すごく優しそうな笑顔で喜んでくれた。
か、可愛い///
ってそうじゃない!お礼しなきゃ!お礼を。
「ほ‥本当にありがとうございました!何かお礼でも‥」
「別にいいって。ただコンビニに行く途中なだけだから」
「え!?コンビニ?」
「うん。コンビニ。何か変かな?」
あの世界でもトップクラスのお金持ちなのにコンビニ?
「い‥いえ!ただ、倉原財閥って言ってたので…」
「ああ、そっか。今、家にオレ一人しかいないんだ。」
「え!?」
「メイドのみんなは休みが全然ないからオレが休みをあげたんだ。」
「‥そうなんですか」
「うん。で、ご飯を作ろうと思ったんだけど見事に失敗しちゃったんだ。ヘヘッ」
そうなんだ。家がお金持ちってだけで私とかと大して変わらないんだ。そう思うと身近に感じて自然に笑いがこぼれた。
「フフ♪そんなんですか」
「そうなんだよ!だからお腹空いちゃって。‥あれ、そういえばさっき急いでるとか言ってたよね?」
「あ!!そうでした!‥あの‥さっきは本当にありがとうございました」
「別にいいよ。それより急いでるんでしょ」
「はい。じゃあ失礼します。お礼はいつか必ずしますから!」
私は急いで歩き出した。あ!私まだ名前言ってなかった。そう思い振り向くと彼はまだその場に立っていた。そりゃそうだよね。
「あの!私、エリっていいます!」
私は彼に聞こえる声で名前を名乗った。私の事を忘れてほしくなかったし、それに‥これからも縁がありそうだし♪
私はまた歩きだした。
「‥倉原‥リクト」
私は無意識にも彼の名前をつぶやいていた。
あれ、なんだろ?この気持ち…。
◇
「ただいま〜」
「あら、遅かったじゃない?」
「ちょっとね〜」
私は家に着くとお母さんと軽く会話をして部屋に行った。
「はぁ。疲れた」 彼の事を考えたかったけど眠気には勝てなくてその日は寝てしまった。
◇
「行って来まーす」
「行ってらっしゃい」
私は家を出て学校を目指す。今日は金曜日だから1日頑張れば休みだ。
しばらく歩いていると見慣れた顔があった。
「エリ、おはよー」
「おはよう。シホ」
シホとは小さい頃からの幼なじみで親友。特徴といえばカールのかかった髪の毛と…立派に膨らんだ体の一部な気がする。ホントうらやましい!
「エリ、早くしないと遅刻したゃうよ」
「ごめんごめん。行こ」
2人で学校を目指して歩き出した。
◇
「えぇぇ!!!!!!倉原家のお坊っちゃんに助けてもらった!?」
ところ変わって今は昼休み。シホとお弁当を食べていた。
「ちょ、ちょっと!声が大きい!」
「ご、ごめん。でも倉原家のお坊っちゃんがエリを助けたって聞いたらつい…」
私は昨日の事をシホに話した。
「ちゃんとお礼した?」
「まだなの。だから明日行こうと思って」
「相手はすごいお金持ちなんだから生半可なお礼じゃダメよ!」
「そんな事言ったって私はごくごく普通の庶民だよ」
「関係ないわ!モノがダメならエリの裸――」
「バカぁー!!そんな事できるかぁ!」
「冗談だよ冗談」
シホはエヘヘと笑ってごまかしているけどたぶん本気でしょ。‥ったく本当に変態なんだから!
「シホに言ったのが間違いだったよ」
「ごめん〜エリ。お願い!許して」
「‥もう。別に怒ってなんかないよ」
「ホント!ありがとうー」
シホはそう言うと再びお弁当を食べ出した。
「‥もう」
帰ってから考えるかな。お礼については。
◇
「よし!材料は揃った!」
私は帰る途中にひとつの結論に導いた。
[手作りクッキーを渡す]
そうと決めたらすぐ行動。明日渡すためにおいしいクッキーを作っちゃうんだから!
クッキーを形を使ってくり抜いて焼き始めたと同時にお母さんが帰ってきた。
「ただいま〜。あら、クッキー?」
「おかえりー。まぁちょっとね」
お母さんはにやけてんいたけど特にツッコンではこなかった。
チン
「できたー♪」
ん〜いい匂い!これなら大成功だね。
「お父さん達に食べられないようにしなきゃ」
私は冷めるのを待ち、クッキーをプレゼント用に袋に詰めた。
「喜んでくれるかなぁ。」
そんな事を考えつつその日は寝た。
◇
「―――はッ!!」
寝過ぎた!今何時!?
時計をみると針は10時を指していた。
「よかった。まだ大丈夫ね」
私は用意を済ませていつでも出かけられる状態でいた。
「やっぱ事前に電話しといた方がいいよね。あー緊張する!!」
でもやるしかない!私は電話帳で調べ電話をかけた。
相手がでたら
「お忙しいなか申し訳ありません。先日、そちらの―――」
といった具合で好印象を与えて、
『はい。倉原ですが?』
わぁ!お、女の人がでた!え、えっと‥さっき私なんて言おうとしてたっけ!?とりあえず何か言わなくちゃ!これから会いに行くんだから!こんなとこでつまづいてなんかいられない!
待ってて下さい。
私の初恋の人♪
「あ、あのリクトさんいますか?」
番外編という事でエリの話を少し書きました。
いかがだったでしょうか?