第五話:君達に休日を
前回の投稿からだいぶ時間がたってしまいました。
昨日のかくれんぼが終わり、また普通の一日が始まる。
メイドのみんなが朝、オレを起こしに来るのは具体的な解決策が見つからなかった為、とりあえず今は自分で起きている。
「ふわぁ‥起きるかぁ」
体を伸ばしベッドから起きる。服を着替え広間に向かう。無駄に長い廊下を歩き広間に着き、扉を開ける。
「みんな、おはよう」
【おはようございます。リクト様】
オレが入るとメイドのみんなは声を合わして挨拶をしてきた。
「うん、ご苦労様。さ、食べよ食べよ♪」
【いただきます♪】
アミ、ユカ達が作る料理はいつ食べてもおいしい。
「リっちゃんどう?今日もおいしい!?」
「うん、スゲーおいしいよ」
「もうヤダ〜リっちゃんたらッ♪」
「静かに食えないのかよ!お前は?」
「ルリこそ口悪いんだから静かにしてなよ〜」
【うんうん】
「お前らうるせーよ!リクト様、たしかに私は口が悪いですけど‥」
「悪くないよ。ルリは優しいし、よく気が利くしね」
「リクト様‥ありがとうございます」
「リクト様の前だとすぐそうなるんだから」
「何か言ったか?ミラ」
「別になにも」
オレは両親がアメリカに行ってからメイドのみんなに頼ってばかりだ。しかも、みんなは休みなんてほとんど無いし。
…そうだッ♪
「みんな、ちょっといいかな?」
メイドのみんなは一斉にオレの方に顔を向ける。
「何でしょうか?リクト様」
サナが聞いてきた。
「思ったんだけどさ、みんなって休みが殆どないじゃん?」
「まぁ‥でも私たちメイドは好きで働いているわけで」
「スゴくありがたいんだけど、みんなが休み無しで働いてるのは大変だろうし、可哀想だよ。だから、みんなには一週間休みを与えます!!」
オレの一言にみんな一瞬固まっていた。最初に口を開いたのはサナだ。
「リクト様、私たちは別に休みなんていりませんよ!」
「そうです!私はリクト様の為に働きたいです!」
「休みなんて必要ありません!」
「リク様、気をつかわないで下さい」
「そうだよ、リっくん。私達は好きで働いてるんだから♪」
「リっちゃん、あたし達が休んだらご飯とかどうするの?」
サナに続いてミラ達も言ってきた。ほかのみんなも何か言っていた。そんな中オレは静かに口を開く。
「みんながそう思ってくれてるのは嬉しいよ。でも、休む事が大事なのはわかるよね?」
みんなは静かに頷く。オレは続けて喋り出す。
「料理だって自分で何とかする!たかが一週間だしね。だから大丈夫だよ!みんなは一週間しっかり自分の好きな事をしていいよ。実家に帰ってもいいし」
実家に帰っていいと言葉にみんなは反応した。みんなはこの倉原家に来てから一度も家に帰っていない。帰る時間が無いからだ。みんな小さい時からここに来てるから家に帰りたい気持ちは絶対にあるだろう。
「いいかい、みんな?休む事はオレからみんなへのお願いだ!みんなはオレのお願い聞いてくれるよね?」
メイド達は全員、顔を赤くしているだろう。リクトは気づいていないがメイド達はリクトの甘え口調に弱いのだ。
「…わかりました」
「ありがとう、みんな。一週間は自由にしていいからね♪」
「いえ、お礼を私たちの方です。ありがとうございます」
【ありがとうございます】
「家に帰る人は二時間後に玄関に来て。見送りするから」
こうして朝食を食べ終わり、リクトは部屋に戻る。メイド達は朝食の片付けをして各々の部屋に行った。
◇
朝食からもうすぐ二時間。オレは玄関にいた。
しばらくするとみんなが集まって来た。玄関にはみんなが余裕で集まる広さがある。見た感じ数百人はいる。
「みんな、準備はいいの?」
【はい】
「わかった。一人ずつ車を用意してあるはずだからそれに乗ってね」
庭には前もって用意してあった車が並んでいる。みんなは荷物を持ち始める。
「リクト様ありがとうございます」
「このような機会を与えてくださりありがとうございます」
「うん。たった一週間しかないけどね」
「そんな!本名にありがとうございます」
「ううん。楽しんで来てね♪行ってらっしゃい」
【行ってまいります】
みんなはオレに一言ずつ話しかけ、お辞儀をして車に乗り込んだ。
今、玄関にはミラ、ルリ、サナ、アミ、ユカ、ソラがいる。
「リクト様、寂しいですが少しの間、家にいってまいります」
「リクト様、寂しくなったらいつでも呼んで下さい。すぐ駆けつけます!」
「リクト様、体調には気をつけて下さいね」
「リっちゃん、変なモノ食べちゃダメだよー」
「リク様、一人でへ、変な事しないで下さいね」
「そうだよ、リっくん。一人で変な遊びしちゃダメだからね!そういう時は私が―――
「わ、わかった!みんな心配してくれてありがとう。しっかり休んで来て♪」
【はい。いってまいります♪】
「行ってらっしゃい」
ミラ達も車に乗り込んだ。今、家にはオレしかいない。まぁたまにはいいのかもね。
「とりあえず部屋行こ」
部屋に着きベッドに寝転がる。気がつくとオレは眠っていた。
「ん‥寝ちゃったのか…。もうこんな時間か。ご飯でも作るか」
時刻は午後八時を過ぎていた。
調理場に行くといつもにぎやかなアミとかユカを含め調理スタッフがいないとここまで静かで広いとは思わなかった。
オレは一番近くの調理台を使う事にした。
「つーかオレ料理した事ないんだよな‥。とりあえず食材で決めよう!」
食材を見に行くとスゴい量の食材があった。逆に選べない‥。
「ま、まぁチャーハンくらいならきっと!」
たまごと適当に野菜を持ってくる。
「野菜は細かく切ればいいよな」
野菜を適当に切り、フライパンに油を入れ、たまごを入れた。
「早く入れすぎたかな。まぁいいや。野菜入れてっと!」
野菜を少し炒めご飯を入れようとする。
「あれ、ご飯てどこだっけ!?えーと…」
強火のまま炊飯器を探す。
「あ!これだ!さすがにデカいな。…ん!?この匂い…あ!!」
急いでフライパンの所に戻ると中の具材を見ると真っ黒になっていた。
「はぁこれじゃあ食べれないな‥」
しばらく落ち込んでいるとお腹が鳴り出した。
「‥コンビニでも行くか」
オレの家はセキュリティーが万全で人がいなくなっても大丈夫なのだ!
家を出ると少し歩く事になるがコンビニがある。一度も行った事はないが、出かける時などよく見かける。
「ブラックカードで買えるよな…」
リクトは金銭感覚が常人ではない。
しばらく歩いていると柄の悪い男達が一人の女の子を取り囲んでいた。
「ねぇ遊ぼうよ。少しでいいからさぁ」
「すみません。急いでいるので!」
「いいだろ!付き合えよ!」
「痛い!離してッ!!」
「おい、何やってんだよ!?」
「あ?なんだてめぇは!?」
「バカに名乗る名前はないんでね。ところでその娘の手離してやれよ」
「ふん!ガキのクセに格好づけやがって。お前らやっちまえ!!」
男達が一斉にオレに向かって来る。
「死ねぇクソガキー!」
「はぁ止めときゃいいのに‥」
オレは全員の攻撃を避け、一人一人に一発ずつ腹にパンチを入れた。一瞬で片付いた。小さい頃からメイドのみんなに武術習っといてよかった。
「ぐわぁ」
「だから止めときゃいいって言ったのに」
「‥この‥ヤロ」
オレはリーダーであろう男の胸ぐらを掴み、耳元で静かに言う。
「まだやる気か?それなら次はオレ一人が相手じゃないぞ。この世から消されたいか」
「お‥おめぇは‥」
「倉原リクト。倉原財閥の一人息子だ。まだやる気か?」
「く、倉原!も、申し訳ありませんでした!せめて命だけは‥」
女の子を含め男達は唖然としている。
「謝るのはオレじゃないだろ」
オレの言葉に男は手下どもを集め女の子に謝りに行った。
「‥はい。謝って頂ければ」
「アニキ!どうしたんですか!?急に!」
「そうですよ。あんな奴もう一回やれば‥――
「バカ!!あの人はあの倉原財閥の一人息子だ!」
【え〜〜!!】
女の子を含めその場にいた男達も驚いた。
「そ、そうだったんですか。数々の無礼申し訳ありませんでした」
「別に気にしてないから。これで何か買って帰れよ」
財布の中に一万円だけありそれを男達に渡した。
「え!い、いいのですか?」
「いいから早く帰れって」
「は、はい!どうもすみませんでしたー」
男達は走ってどっかに行った。オレは女の子に近づいた。
「大丈夫?」
「あ、えっと‥その‥大丈夫です」
「そう。ならよかった♪」
「ほ‥本当にありがとうございました!何かお礼でも‥」
「別にいいって。ただコンビニに行く途中なだけだから」
「え!?コンビニ?」
「うん。コンビニ。何か変かな?」
「い‥いえ!ただ、倉原財閥って言ってたので…」
「ああ、そっか。今、家にオレ一人しかいないんだ。」
「え!?」
「メイドのみんなは休みが全然ないからオレが休みをあげたんだ。」
「‥そうなんですか」
「うん。で、ご飯を作ろうと思ったんだけど見事に失敗しちゃったんだ。ヘヘッ」
「フフ♪そんなんですか」
「そうなんだよ!だからお腹空いちゃって。‥あれ、そういえばさっき急いでるとか言ってたよね?」
「あ!!そうでした!‥あの‥さっきは本当にありがとうございました」
「別にいいよ。それより急いでるんでしょ」「はい。じゃあ失礼します。お礼はいつか必ずしますから!」
彼女はそう言うと走って行ったかと思ったら少し行った所で振り返った。
「あの!私、エリっていいます!」
彼女はそう言うとまた走って行った。少しおてんばかと思わせる彼女は笑顔がとても可愛らしかった。
「‥送って行こうと思ったのにな。‥コンビニ行こ」
彼女を送ろうかと思ったが彼女の姿はもう見えなくなったからコンビニに行く事にした。
「え!コンビニ弁当ってこんな安いの!?」
コンビニに着くとコンビニ弁当の安さに驚た。驚きつつもレジに向かった。
「430円になります」
「あの‥コレで」
オレはブラックカードを出した。
「!!!!!!!‥か‥かしこまりました」 店員はとても驚いていた。
「あ‥ありがとうございました」
オレは家に帰り、弁当を食べて、風呂に入って眠りについた。
みんながいないだけでこんなに寂しいなんてな。
「一週間はちょっと長いな〜」