第三話:秘密基地
今回は過去話があります。
メイドたちは次々にチームを組んでいく。普段リクトを狙い敵同士でも今回は別。
ミラ、ルリ、アミ、ユカ、ソラもチームを組んだ。
「今回はイヤイヤ組むんだからな!」
「わたしだってあんたと組むは今回が最初で最後よ!」
「二人ともやめなって!」
「「うるさいッ!!ムッツリ女!!!」」
「ム、ムッツリじゃないし!!」
ユカはムッツリなのだ。
「仲いいのか悪いのかわかんないね〜」
「確かにそうだね」
アミもソラも呆れたようにつぶやいた。
ミラとルリが火花を散らし続けているとソラが口を開いた。
「みんなちょっと聞いて。」
ミラとルリはにらみ合いを止めソラの言葉に耳を傾けた。
「いい見つけたらすぐに知らせて。サナちゃんには負けない!」
『う、うん』
ソラはリクトには優しいがメイドには冷たかったりする。キレるとスゴく恐ろしいという噂もある。
ミラたちはきっと何か感じたのだろう。
「もうすぐ二十分たつわ。準備はいい!?」
ソラはメイドたち全員に問いかけた。
『イェーイ』
「かくれんぼ開始!!」
◇
サナはリクトを引っ張りながら広間に出るとモクモクと進み続ける。
「サ、サナどこに隠れるつもりなの?」
「ここにいるメイドたちは屋敷内の構造を完全に把握しているでしょう。一カ所を抜かして。リクト様もご存知でしょう?」
「そっか!!あそこならみんなはしらないはず。隠れ通す事ができるね」
サナは勝利が見えたのか顔には笑みが見えた。
「リクト様…その‥勝ったらデートの事覚えておいて下さいね」
そうだ。勝っても負けてもデートはしなくてはいけない。
「う、うん。ちゃんと覚えておくよ」
「はいッ♪」
サナは先ほどの笑みとはどこか違う心から出た笑顔だった。
しかしリクトはその事には気がつかなかった。
「二十分たつ前に早めに行きましょう」
「そうだね」
リクトとサナはメイドたちが知らないであろう場所に向かった。
◇
メイドたちは次々に広間から出て行った。ミラたちも手分けして探しに向かった。
(そうだ!リクト様の部屋に行こうっと♪別にやましい気持ちじゃないもん。部屋に隠れてるかもしれないし〜)
ミラはやましい気持ちでいっぱいだ。早足でリクトの部屋に向かう。
(リクト様の部屋を独り占めしてやる)
不気味な笑みをこぼしながら部屋を開けると―
「リクト様のヘッドだ〜」
「リ、リクト様のパジャマ…☆」
――――――どてッ!!
「ん、なにしてんだ?ミラ」
「そ、それはこっちのセリフよ…」
転んだ拍子に鼻でもぶったのか鼻をさすりながら答える。
(迂闊だった…。リクト様の部屋は完全防音でコイツらの声が聞こえなかった)
リクトの部屋にはルリ、ユカがいた。
「あんた達そんな事してるとリクト様に言っちゃうからね」
ミラの言葉にルリとユカは目を合わせ口元が少し動いた。
「…そうか。それは残念だ。なぁルリ?」
「そうだね。スゴく残念だよ‥」
「残念残念てなにが残念なのよ」
「いや、ミラには関係ねーから」
「そう。ミラには関係ないよ」
「さっきから何なの!?気になるじゃない。教えてよ!」
((食いついた☆))
ルリとユカは以心伝心した。
「いや、もしかしたらミラもリクト様の部屋に来ると思ってなぁ」
「あらかじめリクト様の所持品を用意しといたの」
「ふん!!何かと思えば物でわたしを釣ろうなんて甘く見ないでよね!」
「‥そうか。じゃあユカこれ二人で分けような」
「そうだね」
ミラは興味ないフリをしながら横目でルリの手元を見た。ルリの手元にはリクトが毎日つけてる日記帳があった。
「ユカ行こ――ビシッ!!
ルリは気がつくと日記帳が手元からなくなっていた。
「あーこれずっと見たかったのよね〜♪」
ミラはルリとユカを気にせず浮かれている。少したつと現実世界に戻って来たのかルリたちの前ではずかしい所を見られたのがショックなのか顔を赤くしたまま固まってしまった。
「お前も共犯だな♪」
ルリの言葉にミラは言い返す事が出来なかったがルリたちにはめられたとわかると文句を言おうと振り返ってみると‥
“パチンッ”
ルリとユカがハイタッチしていた。ハイタッチが終わるとルリはミラの手から日記帳を奪った。
「これは没収な♪」
「な、なんでよ!!」
「プライバシーだよ。それともミラがリクト様の日記帳を盗んだってリクト様に言っちゃうぞ〜」
完全におちょくってるルリに腹立つもののそんな事をされたらリクト様に嫌われてしまう。
「…わかったわよ」
ルリとユカの勝利。
(覚えてなさいよ〜)
ミラは顔に出さないように仕返しを決意した。
「あ!!!」
ミラは思い出したように言った。
「こんな事してる場合じゃないわよ!リクト様を見つけなきゃ!」
「そうだった!ユカ今どれくらい時間たった!?」
「約二十分ぐらい」
「クッソー!早く見つけなきゃ!手分けして探すぞ」
ルリの言葉にミラとユカは頷きリクトの部屋を出て行った。
◇
ここ倉原家の屋敷はカラクリがいくつかある。オレが小さい時、家の中にあるカラクリを喜んだ事が嬉しかったのか父さんはカラクリをいくつか作った。まぁほとんどのカラクリはメイドたちにバレているけど…。
今オレとサナがいる所は唯一メイドたちが知らないであろう場所だ。
なぜメイドたちがこの場所を知らないかと言うと…。
「…久しぶりですね。この場所に来るのは‥。」
「‥そうだね。懐かしいなぁ」
オレは小さい時、自分の部屋とは別に無駄に広い遊び部屋によく行っていた。ここにはおもちゃもゲームもあるし走り回れる広さがある。疲れたら寝れるようにベッドもあった。
ある時、父さんはやけに笑顔でオレと一緒に遊び部屋へ行った。
「お父さんどうしてそんなに笑ってるの?」
「はは♪知りたいかぁ?」
「うん。知りたい知りたい!」
「よーし。じゃあそこのベッドを動かしてごらん。動かしやすいようにキャスターを付けておいたから」
「うん。‥よいしょっ!!」
小さい自分にはキャスターがあっても少し重かった。
「‥ん‥。お父さん‥何もないよ」
「まぁ見つけるのは難しいからね。ここを見てごらん。」
父さんが指を指した所を見ると一枚めくれる床があった。床をめくるとボタンがあった。
「このボタンを押すんだ。ほらリクト押してごらん」
「うん!」
“ポチッ”
ボタンを押すと床が動き出し地下につながる階段があった。
「わぁ♪スゴいね、お父さん。」
「そうだろ♪この事はお父さんとリクトだけの秘密だぞ」
「うん!秘密だね♪」
カラクリ好きな父さんが何日もかけて作ったのだろう。階段を降りると部屋があった。特別、部屋に何かあったわけじゃないが今までのカラクリとは比べ物にならないくらいすごかった。
「僕ここ秘密基地にするよ♪ありがとうお父さん」
「喜んでくれたかリクト。よかったよかった♪」
父さんはスゴく喜んでいた。
「そうだリクト。階段を降りたら右側にボタンがあるからそれを押すんだ。そしたら床が元に戻るからバレないぞ」
「わかった。ありがとうお父さん」
オレはそれからよく秘密基地へ行くようになった。
オレはいつものように秘密基地へ向かった。向かう途中にサナに会った。
「リクト様どこに行くのですか?」
当時のサナはまだ子供なのにすでに優秀だった。
「ちょっと遊でくる」
「遊びもいいですけどお勉強もしないと」
「あ!!そうだ。サナもついてきなよ」
「え!」
「ほら早く早く♪」
オレはサナの腕をとり遊び部屋へ向かった。
「秘密基地ってここですか?」
「ううん。ほらこの床見て。」 オレは父さんのカラクリをサナに教えた。
「この階段を降りると秘密基地があるんだ♪」
サナと階段を降り部屋に入る。
「ねぇスゴいでしょ!?」
「はい!‥でもよかったのですか?私に教えて‥」
「うん♪サナいつも優しくしてくれるからお返しだよ!」
「ありがとうございます」
その日は秘密基地でサナと遊んだ。秘密基地から自分の部屋に帰る途中ソラに会った。
「あ!リっくんどこにいたの!?遊ぼーと思ったのに」
「秘密基地だよ♪」
「秘密‥基地?」
「うん」
ソラは秘密基地について聞こうとしたがリクトは自分の部屋の方に走って行った。
「あ!ちょっとリっくん!もう‥」
(秘密基地って言ってたけど今、遊び部屋から出て来たよね)
「まぁいいや。待って〜リっくん♪」
この時オレはソラにヒントを与えてしまっていた。その事がかくれんぼにどう響くか予想もつかなかった。
かくれんぼ残り時間40分