第八話:大切な絆
前回からだいぶ時間があいてしまいました。久しぶりの駄文みてください(^-^)v
「まぁとりあえず座ってよ」
オレはエリちゃんを玄関まで向かいに行き、客間に通した。
「は、はい!」
エリちゃんはやけに緊張しているように見えた。
「緊張なんかしなくていいよ」
「‥はい。‥でもさっきから視線というかその…」
口をおぼつかせてエリちゃんは言った。たしかにこの状況で緊張するなと言う方が無理かもしれない。
だって―――
「お茶でもどうぞ〜」
ミラが怖い笑顔でお茶を持ってきた。ミラだけじゃない。ほかのみんなも広すぎる客間に立ってオレたちを見ていた。客間に入らない人たちは廊下からのぞき込むように見ていた。
エリちゃんは下を向いていた。この大人数の前で話とかできるわけない。
「みんな、ちょっといいかな?」
みんなは「はい」と言いながらオレに目を向ける。
「少しの間2人にしてくれないかな?」
「そんなぁ!」
「リクト様!」
ミラとルリが声を合わせて言ってきた。
「こんなに人がいるとさ、エリちゃんも話したい事話せないでしょ」
『うッ!』
みんなはなぜか胸を押さえた。
どうしたんだろう?ただ、上目づかいしただけなのに…。
「…ズルいですよ。リクト様は…」
「反則ッスよ」
「え!な、なにが!?」
『ハァ…』
「なに!?そのため息!」
(この鈍感坊ちゃまは…)
(こうやって人を虜にしていくんだ…)
みんなはため息をつくしエリちゃんは苦笑いだし…。なんで?
「…わかりました。出ていきますよ」
サナが言ってきた。さすがサナ!
「ありがとう。サナ」
「見返りはデカいですよ♪」
「ハハ…わかったよ」
サナに続きみんなが客間から出て行く。
気のせいだろうか?みんなの顔がやけに笑顔なのは…。
「ごめんね。騒がしくて」
「い、いえ!皆さんとても優しそうで!」
「そうだね。みんなすごく優しいだ。それですごく面白い♪」
「皆さんとは…長いんですか?」
「うん。オレが小さい時からだから」
「そんなに長いんですか!」
「すごいでしょ?みんなオレより少し年上なだけなのに子どもの頃からオレの世話してさぁ♪」
みんなの事を話していると自然と笑顔になってくる。
「ところで今日はどうしたの?」
「あ!そうだ!あの…この前のお礼を…」
「そつか。わざわざいいのに」
「いえ!本当にたすかったので。それで‥クッキーを焼いてきたんですけど‥」
「ホント!ありがとう」
「お口に合うかわかりませんけど‥」
オレはエリちゃんから上手に包装された物を受け取り、開けてみた。
「わぁ!美味そー!」
オレはクッキーを一枚とって食べる。
「スッゴい美味いよ♪」
「ホントですか!?」
「うん。ほら、エリちゃんも食べなよ」
オレはクッキーを一枚とってエリちゃんの口元に近づけた。
「////‥は、はい!」
「美味いでしょ?」
「はい♪」
エリちゃんのクッキーを食べながらオレたちは会話を盛り上げていった。
◇
今、私たちは広間にいる。
私は誰かって?
サナよ。
「それにしてもリクト様も女殺しだよなー」
「たしかに。しかも自覚がないんだから」
「そこがリっちゃんのいいとこだよー」
「それにしてもサナちゃん。案外早く引き下がったね」
「甘いわソラ。私はあの場で2つ仕掛けをした!」
「仕掛けってなんですか?サナ姉」
「いい事を聞いてくれたわミラ。私はあの客間に事前に盗聴器を設置しておいたの。それともう一つは見返り」
「なるほど!リクト様たちの会話も聞けて、しかもリクト様からの見返りもある!」
「鋭いわねユカ。ユカの言った通りよ」
「うわぁ!すっげえサナ姉!」
「さすがサナ姉ですね♪」
みんなが私を褒めている間に盗聴用スピーカーを取り出しスイッチを押す。音量を最大にして全員に聴こえるようにする。
スピーカーからはリクト様とエリと名乗る女の子の笑い声が聞こえてきた。
『あはは♪そうなんですか!』
『そうなんだよ!それでさぁ―――』
「あー!リっちゃんがわらってる(怒)」
「いい子そうに見えてリっくんをねらってるなぁ(怒)」
「あんた達は嫉妬しすぎよ」
それにしても本当に楽しそうに笑ってるわね。やっぱり私たちメイドより同年代の女の子の方がいいのかしら…。
◇
「はー☆クッキーおいしかった」
「褒めて頂いてありがとうございます♪」
「こっちこそありがとう!」
「はい!‥あの、リクトさんのご両親は?」
「海外だよ。オレがまだ6歳くらいの時から」
「そんなに!?」
「うん。だからもう10年くらい会ってないんだ。まぁたまに電話くれるけどね」
「そうなんですか。‥すみません」
「いいよいいよ。小さい頃は寂しかったけどだいぶ前から平気なんだ」
「どうしてですか?」
「みんながいるから」
「みんなってメイドの皆さんですか?」
「そうだよ。オレが寂しい時はずっと一緒にいてくれたし、一緒に笑ってくれたし」
オレは紅茶を一口飲み、話を続けた。
「みんながいたからここまでこれたんだよね。でも、みんなオレにツラい顔を見せないけど本当はツラい時だってたくさんあったはずなんだ」
また紅茶を飲む。ミラが入れてくれた紅茶はすごく美味い。
◇
『……』
私たちは無言でリクト様の話を聴いていた。
『なのにオレはワガママばっか言うから大変だったはずだよ』
『ワガママって例えば?』『料理の好き嫌いとかさ、せっかく遊んでくれてるのにつまんない!とかね』
『やんちゃな子どもですね』
『終いには母さんと父さんき会わせろって泣いたりしてたんだ』
『そうなんですか。でもそれって仕方ないですよ!小さい時に両親がいないのは寂しいですし』
『そうだね。でもそれが毎日だと大変だよね』
『毎日‥ですか』
『そう。ホント迷惑かけたよ。はは』
『じゃあいつから泣かなくなったんですか?』
『オレが夜中に突然泣き出してんだ。母さんたちに会いたくて。そしたら夜中なのにみんな慌ててきてさぁ――』
―――――◇
「お母さーん。お父さーん」
「リクト様大丈夫ですか!?」
「サナぁお母さんたちに会いたいょ」
「リクト様。あなたのご両親はアメリカです。だから会う事はできません」
「うっうっ」
サナは小さい体でリクトを抱きしめた。
「私たちはリクト様のそばにずっといます。なにがあっても」
◇―――――
『――その後から自然と泣かなくなったんだ』
『そうなんですか』
『それからはみんなの困り顔じゃなくて笑顔が見たくてさワガママもあんま言わないようにしてるんだ』
『リクトさんは皆さんに感謝してるんですね』
『うん。感謝してもしきれないけどね』
「‥リっちゃん〜」
「リクト様〜」
私たちはリクト様の会話で涙していた。リクト様がこんなに私たちの事を思ってくれてたなんて。
『リクト様と皆さんはすごい絆で繋がっているんですね』
『そ、そうかな?』
『そうですよ。だって皆さんの事すごく大切にしてるし、それに‥大好きなんでしょ?』
『大好き♪♪』
私たちはリクト様の言葉を聴いて走り出していた。誰が言ったわけじゃない。ただ、リクト様に会いたくて仕方がない。
ガチャ
「リクト様〜」
「リっちゃん〜」
「リっくん〜」
「リク様〜」
私たちはリクト様に泣きながら駆け寄った。
『私たちも大好きですー☆』