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ー第2節 おつまみ、田中の「晩酌を邪魔された怨念」を捕食し巨大化。世界規模の洗濯という、とんでもない発想に至る

第2節 おつまみ、田中の「晩酌を邪魔された怨念」を捕食し巨大化。世界規模の洗濯という、とんでもない発想に至る


『すごいよ勤ちゃん! 外は「恐怖」と「絶望」の食べ放題バイキングだ! でも、一番濃厚なのは……やっぱり君の「楽しみを奪われた怨み」だね!』


 おつまみは田中の顔の周りをぐるぐると旋回し、彼から漏れ出る黒いオーラを吸い込んだ。


「当たり前だろ! 一週間、この瞬間のために働いてきたんだぞ! それを、どこのどいつだか知らないが、薄汚いガス漏れ騒ぎで台無しにしやがって!」


 田中の認識では、外の惨状は「大規模なガス漏れ事故」か「工場の排煙トラブル」程度のものである。

 しかし、その怒りのエネルギーは本物だった。


『いただきまーす!』


 バキュームのような音と共に、田中の不満がおつまみに吸い尽くされる。


『うっぷ……こいつは強烈だ! デザートにしては重すぎる! でも、エネルギー充填完了フルチャージだ!』


 おつまみの体が眩い金色に発光し、避難所の薄暗い照明を凌駕する輝きを放った。

 玲奈や社員たちが眩しさに目を覆う中、おつまみは田中の耳元で囁いた。


『さあ、対価交換トレードだ! 勤ちゃん、部屋が汚いなら掃除すればいい。でも、街全体が汚いなら?』


「……街ごと、掃除するしかないな」


 田中は真顔で答えた。

 あまりにも飛躍した論理だが、酔いが回り始めた彼の脳内では、それが唯一の正解として成立していた。


『その通り! ちまちま拭いてる場合じゃない! ここは一発、でっかいのを打ち上げようぜ! 「空間丸ごとクリーニング(ワールド・ウォッシュ)」だ!』


 おつまみから、光の粒子で構成された巨大な「スプレーボトル」のような幻影が、田中の手に重なった。

 現実には、田中が持っているのは、いつも腰に下げている業務用消臭スプレー(森林の香り)だ。

 だが、今の彼にはそれが「世界を洗浄するための神具」に見えていた。


「よし、屋上へ行くぞ」


 田中はリュックを背負い直し、出口へと歩き出した。


「た、田中顧問!? 外は危険です! 即死レベルの瘴気が!」


 玲奈が止めようとするが、田中は振り返りもせずに言った。


「白石さん、換気扇のスイッチ、どこにあるか知ってます? ちょっと空気入れ替えてくるんで」


「か、換気扇……?」


 玲奈が呆然とする間に、田中は非常階段を駆け上がっていった。

 彼の周囲には、おつまみが展開した「絶対清潔領域アンチ・ウイルス・フィールド」が張り巡らされ、紫色の埃すら寄せ付けない状態になっていた。

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